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認知症介護基礎研修は誰が対象か|義務化の中身と免除の線引き・eラーニングの受け方
内容確認: 2026年7月27日 ・ 次回確認期限: 2027年4月30日 ・ 編集部確認済み
入職して数週間、あるいは数か月。「1年以内に認知症介護基礎研修を受けておいてね」と、シフト表の脇で軽く言われたきりになっていないでしょうか。受けないとどうなるのか、費用は誰が出すのか、休みの日に自分でやるものなのか。聞けば済む話なのに、忙しそうな先輩をつかまえて確認するタイミングが見つからないまま、頭の隅に置きっぱなしになる。よくあることだと思います。
先に、いちばん誤解されやすいところを書きます。この研修の受講について、法令が義務を課している相手は、職員個人ではなく事業者のほうです。 「無資格の自分が、自分の責任で、自分のお金と休日を使って何とかしなければならないもの」という前提で悩んでいるなら、その前提はいったん置いて大丈夫です。制度の建て付けが、そもそもそうなっていません。
この記事では、省令改正の資料と厚生労働省のQ&Aに実際に書かれている中身を確認したうえで、自分が対象かどうかを判断する手順、免除の線引きで取り違えが起きやすい点、eラーニングの中身と受講料、そして費用や勤務時間の扱いを職場にどう確認するかまでを整理します。読み終わったときに、「誰に何を聞けばいいか」が決まっている状態を目指します。
まず結論:義務を負っているのは、あなたではなく事業者です

- 義務の主体は事業者です。 省令改正の趣旨は「事業者が、対象の職員に受講させるために必要な措置を講じる」こと。職員個人に受講を命じる資格制度ではありません。
- 期限は「採用から1年」で数えます。 制度全体の3年の経過措置は令和6年3月末で終わりました。いま対象になる人は、採用後1年を経過するまでが目安です。
- 名前の似た講座では免除になりません。 認知症サポーター養成講座の修了では対象外になりません。一方で実践者研修の修了者や、福祉系高校の卒業者は対象外になり得ます。
数字や制度名はこのあと出典付きで確認していきますが、この3点だけ持ち帰れば、職場での確認はかなり進めやすくなります。
何が義務づけられたのか——資料に書かれている実際の中身

出発点は令和3年度の介護報酬改定です。厚生労働省の「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」には、この項目がはっきりと書かれています。
原文はこうです。「認知症についての理解の下、本人主体の介護を行い、認知症の人の尊厳の保障を実現していく観点から、介護に関わる全ての者の認知症対応力を向上させていくため、介護サービス事業者に、介護に直接携わる職員のうち、医療・福祉関係の資格を有さない者について、認知症介護基礎研修を受講させるために必要な措置を講じることを義務づける。【省令改正】」
主語をたどると、義務づけられているのは「介護サービス事業者」です。そして義務の中身は「受講させるために必要な措置を講じること」。ここが、現場で語られる「受けないと働けなくなる」という言い方とのいちばん大きなずれです。事業所は運営基準を満たす必要があるので、結果として職員に受講を求めることになりますが、それは職員個人が法令違反を問われる構造とは別のものです。受講しないことを勧める話ではありません。「自分ひとりで抱える課題ではない」という前提を持っておくと、費用や勤務時間の相談を切り出しやすくなる、という実務上の意味があります。
同じ資料には、期間の扱いも続けて書かれています。「その際、3年の経過措置期間を設けることとするとともに、新入職員の受講についても1年の猶予期間を設けることとする」。3年の経過措置は令和6年(2024年)3月31日で終了しました。そのため現在は、新たに採用された対象者について「採用後1年を経過するまで」という猶予だけが残っている状態です。新卒か中途かは問いません。
もうひとつ見落とされがちなのが、目的の一文に「認知症の人の尊厳の保障」が明記されている点です。この研修は、無資格者をふるいにかけるための関門として設計されたものではなく、認知症のある利用者への関わり方の土台を全員が持っている状態をつくるためのものだ、という位置づけが資料上は明確になっています。
自分は対象か——3つの質問で確認する

対象かどうかは、次の3つを順に確認すると判断できます。上から順に見て、どこかで「いいえ」になれば、その時点で対象外の可能性が高くなります。
質問1:医療・福祉関係の資格を持っていますか。 対象は「介護に直接携わる職員のうち、医療・福祉関係の資格を有さない者」です。介護福祉士、看護師、准看護師、社会福祉士、精神保健福祉士などの資格があれば対象になりません。介護職員初任者研修や実務者研修の修了者も、実務上は対象外として扱われます。無資格で入職して、まだ何も持っていない段階の人が中心の対象だと考えてください。
質問2:介護に直接携わる可能性がありますか。 Q&A(Vol.3)問6では、人員配置基準上、従業者の員数として算定される従業者以外の者や、直接介護に携わる可能性がない者は義務づけの対象外である、とされています。事務職、調理職、送迎のみの担当などがここに当たり得ます。ただし同じ回答のなかで、対象外の人が受講することを妨げるものではなく、各施設で積極的に判断してほしいとも書かれています。
質問3:勤務先のサービス種別は何ですか。 義務づけの対象は「全サービス」ですが、括弧書きで除外が示されています。除外されるのは、無資格者がいない訪問系サービス(訪問入浴介護を除く)、福祉用具貸与、居宅介護支援です。つまり居宅のケアマネジャー事業所や福祉用具の事業所は、この義務づけの枠外です。特別養護老人ホーム、老健、グループホーム、有料老人ホーム、デイサービス、訪問入浴などで無資格の介護職として働いているなら、まず対象と考えて確認を進めるのが早道です。
この3つを自分の状況に当てはめてメモしておくと、職場で確認するときに「自分は対象だと思うのですが」と具体的に切り出せます。曖昧なまま「あれって受けなきゃダメですか」と聞くより、話が早く進みます。
免除の線引きで、取り違えが起きやすい3つのこと

厚生労働省のQ&A(Vol.3)は、免除の範囲について具体的な問答の形で答えています。現場で誤解が起きやすいのは、次の3か所です。
取り違えその1:認知症サポーター養成講座では免除になりません。 問5がこの点を正面から扱っています。認知症サポーター等養成講座は「認知症について正しく理解し、認知症の人や家族を温かく見守り、支援する応援者を養成するもの」であるのに対し、認知症介護基礎研修は「認知症介護に携わる者が認知症の人や家族の視点を重視しながら、本人主体の介護を実施する上での、基礎的な知識・技術及び理念を身につけるための研修」であり、目的・内容が異なるため対象外にはならない、と明記されています。地域のサポーター講座を受けた記憶があると「あれで足りているのでは」と思いがちですが、別物として扱われます。
取り違えその2:学校で学んでいれば、証明書で対象外になり得ます。 問3では、介護福祉士の養成施設について、卒業証明書と履修科目証明書によって認知症に係る科目を受講していることを事業所と自治体が確認できることを条件に対象外とする、とされています。さらに福祉系高校の卒業者については、認知症に係る教育内容が必修となっているため、卒業証明書によって卒業が証明できれば対象外として差し支えない、と書かれています。資格は取っていないけれど学校では学んだ、という人は、ここで救われる可能性があります。 心当たりがあるなら、卒業した学校に証明書の発行方法を問い合わせる価値があります。
取り違えその3:上位の研修を修了していれば対象外です。 問4では、認知症介護実践者研修、認知症介護実践リーダー研修、認知症介護指導者研修等の認知症の介護等に係る研修を修了した者について、義務づけの対象外として差し支えないとされています。基礎研修は入口の研修なので、その先の研修をすでに修了しているなら重ねて受ける必要はない、という整理です。
なお外国籍の職員についても、問7でEPA介護福祉士や在留資格「介護」等の医療・福祉関係の有資格者を除き、在留資格にかかわらず義務づけの対象になるとされています。国籍によって扱いが変わるものではありません。
eラーニングで実際に何をするのか。時間・費用・修了証

受け方の原則は、令和6年4月1日から適用された「認知症介護実践者等養成事業実施要綱」に書かれています。研修は原則としてeラーニングにより行うものとされ、実施主体が準備等の事情でeラーニングによる実施が困難である間は、集合型の講義・演習または同時双方向のやり取りができるオンラインでの講義・演習とすることができる、とされています。つまり基本形は自宅や職場のパソコン・スマートフォンで進める形式です。
学ぶ科目は「認知症の人の理解と対応の基本」です。認知症介護研究・研修仙台センターが運営するeラーニングシステムを通じて受講し、修了者にはこの科目の修了証書が発行されます。実施要綱の側でも、実施主体の長が修了者に修了証書を交付し、修了証書番号(受講者ID)・修了年月日・氏名・生年月日等を記載した名簿を作成して管理する、と定められています。
費用は全国一律ではありません。実施主体が都道府県・指定都市、またはそれらが指定する法人であるため、受講料・受講方法・受講枠は地域によって異なります。ひとつの目安として、東京都福祉局の案内ではeラーニングの受講料が3,000円(税込)とされています。
手続きで知っておくと戸惑わないのが、申込みに「事業所コード」が必要だという点です。事業所責任者がシステム上で事業所登録を行い、発行された事業所コードを受講希望者に配布する流れになっています。個人が思い立って単独で申し込み、完結させられる設計にはなっていません。「自分で申し込もうとしたのに進めなかった」という詰まり方をした人は、手順を間違えたのではなく、職場に確認する段階が先に来ているだけです。
費用と勤務時間を、職場にどう切り出すか

ここが、この研修でいちばん相談しにくいところだと思います。金額としては大きくないぶん、「これくらい自分で出すべきなのか」と迷って、聞かないまま放置されやすい。
前提として、費用負担や勤務時間としての扱いをどうするかは、事業所の規程や運用によって決まります。全国共通のルールがあるわけではないので、「必ず事業所が負担する」とは言えません。ただし、この研修が事業者に課された義務にもとづくものであり、申込みに事業所コードが要る以上、職場を通さずには進まない手続きだという事実は動きません。確認すること自体は、遠慮のいる特別なお願いではなく、手続きを進めるうえで必要な段取りです。
確認するときは、次の4点をまとめて聞くと一度で済みます。
- 事業所コードは取得済みか。誰が受講者へ配布しているか。
- 受講料の扱いはどうなっているか(立替か、事業所払いか)。
- 受講時間は勤務時間として扱われるか、時間外か。
- 自分の受講期限は、いつを起点に何月までか。
聞き方としては、「認知症介護基礎研修の件なのですが、申込みに事業所コードが必要だと分かったので、どなたに確認すればよいでしょうか」から入ると、費用の話を先頭に置かずに済み、切り出しやすくなります。そのうえで、続けて受講料と勤務時間の扱いを尋ねる。順番を変えるだけで、聞きにくさはかなり減ります。
もし、確認しても話が進まない、あるいは自己負担と時間外を当然のように求められて納得できない場合は、その扱いが事業所の規程に沿ったものかを就業規則で確かめてみてください。それでも解消しないときは、都道府県の介護保険担当課や、労働条件そのものに関わる話であれば各都道府県労働局の総合労働相談コーナーが相談先になります。ひとりで判断を抱え込まなくて大丈夫です。
受けたあとに、この研修を「消化した手続き」で終わらせない

正直に言えば、この研修だけで明日からのケアが劇的に変わるわけではありません。数時間の内容で現場のすべてに答えが出るなら、誰も苦労していない。そこは等身大に見ておいていいと思います。
それでも、手元に残るものが2つあります。ひとつは修了証書と受講者IDです。転職したときに「受講済みである」ことを示せる資料になるので、原本は自分で保管し、事業所が保管する運用なら控えをもらっておく。これは事務的ですが、あとで効いてきます。
もうひとつは、次の一段を選ぶときの位置情報です。基礎研修は入口であって、その先には介護職員初任者研修という資格の道と、認知症介護実践者研修という認知症ケアを深める道が、それぞれ別方向に伸びています。初任者研修を修了すれば訪問介護で身体介護を担えるようになり、そもそもこの基礎研修の対象からも外れます。実践者研修は一定の実務経験が必要になる代わりに、認知症ケアの中核を担う立場につながっていきます。
どちらを選ぶかを、いま決める必要はありません。介護の仕事を続けるかどうかも含めて、迷っている時期に無理に方向を固めなくていい。ただ、基礎研修を受けたタイミングは、「自分がどのあたりに立っているか」を確認するにはちょうどいい区切りです。受講の期限を職場に確認するついでに、資格取得の支援制度があるかどうかも一緒に聞いておく。それくらいの軽さで十分だと思います。
よくある質問
認知症介護基礎研修を受けないと、介護の仕事を続けられなくなりますか?
法令が義務を課している相手は、職員本人ではなく事業者です。令和3年度介護報酬改定の資料には「介護サービス事業者に、介護に直接携わる職員のうち、医療・福祉関係の資格を有さない者について、認知症介護基礎研修を受講させるために必要な措置を講じることを義務づける」と書かれています。つまり「受けさせる体制をつくる」責任が事業所側にあり、未受講そのもので個人の資格が取り消されたり、法令上ただちに働けなくなったりする仕組みではありません。ただし事業所は運営基準を満たす必要があるため、実務上は受講を求められます。受けない選択を勧める趣旨ではなく、「自分で探して自分で払うのが当たり前」と思い込まなくてよい、という意味です。
認知症サポーター養成講座を修了していれば、免除されますか?
免除されません。厚生労働省の「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.3)」問5では、認知症サポーター等養成講座は認知症の人や家族を見守り支援する応援者を養成するものであるのに対し、認知症介護基礎研修は認知症介護に携わる者が本人主体の介護を実施するうえでの基礎的な知識・技術と理念を身につける研修であり、目的・内容が異なるため対象外にはならないと明記されています。名前が似ているため現場で取り違えられやすい点です。一方、認知症介護実践者研修・実践リーダー研修・指導者研修などの修了者は、同Q&A問4で対象外として差し支えないとされています。
入職したばかりですが、いつまでに受ければよいですか?
新たに採用された職員には、採用後1年間の猶予期間が設けられています。令和3年度介護報酬改定の資料に「新入職員の受講についても1年の猶予期間を設けることとする」と記載されており、新卒・中途を問いません。制度全体としては3年の経過措置期間があり、令和6年(2024年)3月31日をもって終了しています。したがって現在は、対象者であれば採用から1年を経過するまでに受講する、という運用になります。実際の申込時期や受講枠は実施主体である都道府県・指定都市ごとに異なるため、勤務先を通じて確認してください。
受講料は自己負担ですか。勤務時間として扱われますか?
受講料は実施主体によって異なります。たとえば東京都福祉局の案内では、eラーニングの受講料は3,000円(税込)とされています。金額そのものより重要なのは、この研修が事業者に課された義務にもとづくものだという点です。費用負担や勤務時間としての扱いは事業所の規程によって決まるため、一律の正解はありませんが、負担のあり方は職場に確認してよい事柄です。申込みには事業所コードが必要で、事業所責任者が登録して受講者へ配布する仕組みになっているため、そもそも個人が完全に単独で手続きを完結させる建て付けにはなっていません。
eラーニングでは何を学びますか。修了するとどうなりますか?
学ぶのは「認知症の人の理解と対応の基本」という科目です。認知症介護実践者等養成事業実施要綱では、この研修は原則としてeラーニングにより行うものとされ、実施主体の準備等の事情でeラーニングが難しい間は、集合型またはオンラインでの講義・演習とすることができるとされています。修了すると実施主体の長から修了証書が交付され、修了証書番号(受講者ID)や修了年月日を記載した名簿で管理されます。修了証書は転職時に受講済みであることを示す資料になるため、手元に保管し、勤務先が保管する場合は控えをもらっておくと安心です。
出典
- 厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」(認知症介護基礎研修の受講の義務づけ) (2021年(令和3年))
- 厚生労働省「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.3)」介護保険最新情報Vol.952 (2021年(令和3年))
- 厚生労働省「『認知症介護実践者等養成事業の実施について』の一部改正について」介護保険最新情報Vol.1224 (2024年(令和6年))
- 東京都福祉局「認知症介護基礎研修eラーニングについて」 (2024年度(令和6年度))
- 認知症介護研究・研修仙台センター「認知症介護基礎研修eラーニングシステム」 (2026年(令和8年))
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