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負担限度額認定とは|介護施設の食費・部屋代が安くなる制度をやさしく解説
親を特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)に入れることを考え始めると、多くのご家族が同じ壁にぶつかります。「毎月いくらかかるのか、想像がつかない」という不安です。パンフレットには介護保険の自己負担のことは書いてあっても、食費や部屋代がいくらになるのか、そこがはっきりしない。しかも調べれば調べるほど、「段階」「非課税」「補足給付」といった見慣れない言葉が出てきて、読む気が失せてしまう。そんな経験をされた方も少なくないと思います。
でも、ここで一つだけ、先にお伝えしたいことがあります。所得が高くないご家庭には、施設の食費と部屋代を国の制度で軽くしてもらえるしくみがある、ということです。それが「負担限度額認定(ふたんげんどがくにんてい)」です。当てはまるかどうかで、施設に払う金額が月に数万円変わることもあります。年間にすれば数十万円の差になり得ます。知らないまま満額を払い続けるのは、あまりにもったいない話です。
この記事では、負担限度額認定とはどんな制度なのか、誰が対象になるのか、どの施設で使えるのか、そしてどう申請すればよいのかを、介護の知識がまったくない方にも分かるように、一つずつ順を追って説明していきます。むずかしい用語はそのつど、かみくだいてお伝えします。
「負担限度額認定」は、食費と部屋代を軽くする制度

まず、この制度の正体をはっきりさせておきましょう。
「負担限度額認定」は通称で、正式には「特定入所者介護サービス費(とくていにゅうしょしゃかいごサービスひ)」という名前です。長くて覚えにくい名前ですが、意味はシンプルです。「特定の施設に入所している人の、介護サービスにかかる費用を補助しますよ」という制度です。現場では「補足給付(ほそくきゅうふ)」と呼ばれることもあります。同じものを指す言葉が3つあると思ってください。
では何を軽くしてくれるのか。ポイントは2つに絞られます。
- 食費(施設で出る食事の費用)
- 居住費(部屋代。ここでは「部屋代」と同じ意味です)
介護施設に入ると、毎月の支払いはおおまかに「介護保険の自己負担(1〜3割)+食費+居住費+日用品などの生活費」という組み立てになります。このうち食費と居住費は、本来は全額を自分で払うものです。ところが所得の低い方については、この2つに「これ以上は払わなくてよい」という上限(限度額)を設けてくれる。それが負担限度額認定です。
上限を超えた分は、介護保険のほうから施設に支払われます。だから利用する私たち自身の負担が下がる、というしくみです。
数字でイメージをつかんでもらうと、たとえば食費と部屋代を合わせて本来なら月に10万円ほどかかる部屋でも、この認定を受けていれば、その方の段階に応じて数万円台にまで抑えられることがあります。差額はけっして小さくありません。だからこそ、対象になりそうな方は必ず確認してほしいのです。
なお、実際の限度額(いくらまでか)は、後で説明する「段階」ごとに国が金額を決めています。ただしその金額は制度の見直しで変わりますし、部屋のタイプ(相部屋か個室か)によっても変わります。ここで具体的な「◯円」と断言してしまうと、あなたが手続きするときには古い情報になっているかもしれません。ですので、この記事では「段階に応じて上限が決まる」という説明にとどめ、実際の金額はお住まいの市区町村や施設で確認していただくようお願いします。制度の金額は厚生労働省が示していますが、最新のものを窓口で確かめるのが確実です。
どんな人が対象になるのか

ここが一番気になるところだと思います。「うちは対象になるの?」という問いに答えていきます。
対象になるかどうかは、大きく2つの条件で決まります。
条件その1:住民税が非課税の世帯であること
1つ目は「住民税非課税世帯」であることです。
「住民税」は、お住まいの市区町村と都道府県に納める税金のことです。収入が一定より少ない方は、この住民税がかからない「非課税」になります。年金だけで暮らしている高齢者の世帯では、非課税になっているケースが少なくありません。
ここで大事なのは、「本人だけ」ではなく「世帯全員」が非課税かどうかを見る、という点です。たとえば同じ家に住民税を納めている家族がいると、条件から外れることがあります。ご自身の世帯がどうなっているかは、市区町村から届く住民税の通知や、窓口での確認で分かります。
条件その2:預貯金などの資産が一定額以下であること
2つ目は「資産(預貯金など)が一定額以下であること」です。
以前はこの制度、所得だけで判断していました。しかし2015年の見直しで「預貯金などの資産」も見るようになり、その後2021年の見直しでさらに条件が細かく整理されました。つまり、収入は少なくても、まとまった預貯金をお持ちの方は対象から外れる場合がある、ということです。
ここで見られる「資産」には、預貯金のほか、いつでも引き出せる形のお金や有価証券などが含まれます。そして、配偶者がいる場合は、配偶者の分の資産も合わせて判断されます。ご夫婦のどちらか一方が施設に入る場合でも、二人分の預貯金で見る、ということです。
いくらまでなら対象か、という基準の金額は、後で説明する段階によって異なり、また制度の見直しで変わります。ここでも具体的な金額の断定は避けますが、「収入が低くても、預貯金の額しだいで対象外になることがある」という点だけは、ぜひ覚えておいてください。
「第1段階〜第4段階」という考え方
この2つの条件をもとに、対象になる方はさらに細かく「段階」に分けられます。所得と資産の状況に応じて、第1段階・第2段階・第3段階の3つに区分され、段階ごとに食費と居住費の上限(限度額)が決められています。所得や資産が少ない方ほど段階の数字が小さくなり、負担の上限も低く(=より安く)なる、という考え方です。
そして、条件に当てはまらない方は第4段階、つまり「対象外」となります。第4段階の方には、この制度による食費・居住費の軽減はありません。施設の定める金額をそのまま払うことになります。
段階の呼び名だけ見ると難しく感じますが、要は「あなたの所得と預貯金がどのくらいかによって、いくらまで払えばよいかのラインが変わる」という話です。自分がどの段階になるかは、申請したときに市区町村が判定してくれます。自分で計算して決めるものではないので、ご安心ください。
どの施設・サービスで使えるのか(ここが重要)

次に、「どこで使える制度なのか」を整理します。ここは費用の見通しに直結するので、とくに丁寧に読んでください。
負担限度額認定の対象になるのは、主に次の施設・サービスです。
- 特別養護老人ホーム(特養) … 常時介護が必要な方が長く暮らす公的な施設
- 介護老人保健施設(老健) … 在宅復帰を目指してリハビリを受ける施設
- 介護医療院 … 長期の医療と介護を一体で受ける施設
- ショートステイ(短期入所) … 数日〜数週間、一時的に施設に泊まって介護を受けるサービス
これらは地域密着型(規模の小さい同じ種類の施設)も含まれます。特養・老健・介護医療院という、いわゆる「介護保険の施設」に入る場合や、ショートステイを使う場合の食費・居住費が軽くなる、と考えておけば大きく外れません。
対象にならない住まいに注意
一方で、次の住まいは対象外です。ここを勘違いすると費用の計算が大きくずれるので、しっかり押さえてください。
- 有料老人ホーム(介護付き・住宅型を問わず)の家賃・食費
- **サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)**の家賃・食費
これらの住まいは、制度の分類が「介護保険の施設」とは異なります。そのため、いくら所得が低くても、家賃や食費に負担限度額認定は使えません。「所得が低ければどんな施設でも食費・部屋代が安くなる」わけではない、という点は、費用を比べるうえでとても大切です。
つまり、費用を抑えたいという観点で見ると、対象になる特養・老健・介護医療院と、対象外の有料老人ホーム・サ高住とでは、負担の軽くなり方が根本的に違ってきます。「同じくらいの月額に見えても、認定が使えるかどうかで実際の支払いが変わる」ということです。施設を比較するときは、この点を必ず頭に入れておいてください。
申請の流れ ― 自動では適用されません

ここでもっとも大事なことをお伝えします。負担限度額認定は、自分で申請しないと使えません。
条件を満たしていても、市区町村が勝手に見つけて自動で安くしてくれる、ということはありません。これを「申請主義(しんせいしゅぎ)」といいます。制度があることを知って、自分から手を挙げた人だけが使える、というしくみです。だから「知らずに満額を払い続けていた」という取りこぼしが起きてしまうのです。
手続きの流れは、大きく次のステップになります。
- 市区町村の窓口に申請する。 お住まいの市区町村の役所・役場にある、介護保険の担当窓口で申請します。申請書は窓口でもらえるほか、多くの自治体ではホームページからダウンロードもできます。
- 必要な書類を添える。 預貯金などの額が分かる通帳のコピーなどを求められるのが一般的です。配偶者がいる場合は配偶者の分も必要になります。必要書類は自治体によって少し違うので、事前に窓口へ確認しておくとスムーズです。
- 市区町村が段階を判定する。 提出された内容をもとに、対象になるか、なる場合は第1〜第3段階のどれかを市区町村が決めます。
- 「介護保険負担限度額認定証」が交付される。 認定されると、この認定証が発行されます。これがいわば「あなたは食費・居住費が軽くなる対象です」という証明書です。
- 施設に認定証を提示する。 入所している施設(またはこれから入る施設)にこの認定証を見せると、そこから食費と居住費が軽くなった金額で請求されるようになります。
申請そのものは、それほど複雑な手続きではありません。分からないことがあれば、窓口の職員さんや、担当のケアマネジャー(介護の相談にのってくれる専門職)に聞けば、必要な書類や書き方を教えてもらえます。一人で完璧に準備しようと気負わなくて大丈夫です。
毎年の更新を忘れずに
もう一つ、大切な注意点があります。この認定は一度取れば一生続くものではありません。有効期間があり、原則として毎年の更新が必要です。
多くの市区町村では、8月から翌年7月までを1年の区切りとして運用しています。期間が近づくと更新の案内が届くことが多いですが、案内を見落として更新を忘れると、せっかくの軽減が止まってしまいます。所得や資産の状況が前の年と変わっていれば、段階が変わったり、対象から外れたりすることもあります。「去年は通ったから今年も大丈夫」と思い込まず、毎年の手続きを忘れないようにしてください。
「高額介護サービス費」との違いを整理する

費用の軽減について調べていると、負担限度額認定とよく一緒に出てくるのが「高額介護サービス費(こうがくかいごサービスひ)」という制度です。名前が似ていて混同しやすいので、ここで違いをはっきりさせておきましょう。
2つは「軽くする対象」がまったく別です。
- 負担限度額認定 … 施設での「食費」と「居住費(部屋代)」を軽くする
- 高額介護サービス費 … 「介護サービスそのものの自己負担(1〜3割)」が月ごとの上限を超えたとき、超えた分があとから戻ってくる
たとえて言うなら、負担限度額認定は「食事と宿泊のほうの割引」、高額介護サービス費は「介護そのものの支払いの上限」です。守ってくれる部分がちがうのです。
高額介護サービス費は、所得に応じて「1か月にこれ以上は介護費を払わなくてよい」という上限が決まっていて、その上限を超えて払った分が払い戻される制度です。こちらは介護保険を使うすべての人が対象になり得ます(施設に入っている人だけでなく、自宅で介護サービスを使っている人も含まれます)。
大事なのは、この2つは別々の制度なので、条件に当てはまれば両方使える場合があるという点です。「片方を使ったからもう片方は使えない」ということはありません。施設に入って、食費・居住費は負担限度額認定で軽くしつつ、介護費の自己負担は高額介護サービス費で上限を超えた分が戻ってくる、という形で、両方の恩恵を受けられる方もいます。
このほか、医療費と介護費を1年単位で合算して負担を軽くする「高額医療・高額介護合算制度」というしくみもあります。ここでは詳しく踏み込みませんが、「医療と介護、両方でお金がかかっている家庭を支える制度が別にある」ということだけ、頭の片隅に置いておくとよいでしょう。
制度は少しずつ変わってきた ― 最新は窓口で

最後に、この制度が過去に見直されてきたことにも触れておきます。数字にとらわれる必要はありませんが、「なぜ条件が細かいのか」を知っておくと理解が深まります。
もともと負担限度額認定は、所得の低さだけを見る制度でした。ところが2015年の見直しで「預貯金などの資産」も判断材料に加わりました。収入は少なくても資産に余裕のある方は、対象を見直そう、という考え方です。さらに2021年の見直しでは、段階の区分や資産の基準がより細かく整理され、負担能力に応じたきめ細かいしくみへと変わりました。
こうした経緯があるため、「昔は通ったのに今回は違う」「知り合いから聞いた話と条件が合わない」ということが起こり得ます。制度は時代に合わせて更新され続けているのです。
だからこそ、この記事を含めてネット上の情報は「大まかな地図」として使い、実際の判断は必ず最新の情報で行ってください。具体的な限度額や資産の基準、あなたの世帯がどの段階になるかは、制度の見直しで変わりますし、細かな運用は市区町村ごとに案内されます。もっとも確実なのは、お住まいの市区町村の介護保険の窓口に直接たずねることです。担当のケアマネジャーがいれば、その方に相談するのも心強い方法です。
介護にかかるお金の不安は、正体が分からないうちが一番つらいものです。「食費と部屋代は、所得が低ければ制度で軽くできる」「ただし特養・老健・介護医療院・ショートステイが対象で、有料老人ホームやサ高住の家賃・食費は対象外」「使うには自分で申請し、毎年更新する」――この3つが分かっていれば、窓口での相談も、施設との費用の話も、ずっと落ち着いて進められるはずです。まずは対象になりそうかどうか、市区町村の窓口に一本、問い合わせてみることから始めてみてください。
よくある質問
負担限度額認定は誰が対象ですか?
大きく2つの条件があります。1つは世帯全員が住民税非課税であること、もう1つは預貯金などの資産が一定額以下であること(配偶者がいる場合は配偶者の分も合わせて見ます)です。この2つを満たすと、所得と資産に応じて第1〜第3段階に区分され、食費・居住費の負担に上限がつきます。どちらかを満たさない場合は第4段階(対象外)で軽減はありません。
負担限度額認定はどの施設で使えますか?
特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、それにショートステイ(短期入所)が主な対象です。地域密着型の同じ種類の施設も含まれます。一方で、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の家賃・食費は対象外です。ご検討中の施設が対象かどうかは、施設や市区町村の窓口で確認すると確実です。
負担限度額認定はどうやって申請しますか?
お住まいの市区町村の介護保険の窓口に申請します。預貯金の額がわかる通帳のコピーなどを添えて申請し、認められると「介護保険負担限度額認定証」が交付されます。この認定証を施設に提示することで、食費と居住費が軽くなります。自動では適用されないため、申請が必要です。
負担限度額認定と高額介護サービス費は何が違いますか?
負担限度額認定は「施設での食費と居住費(部屋代)」を軽くする制度です。一方、高額介護サービス費は「介護サービスそのものの自己負担(1〜3割)」が月ごとの上限を超えたとき、超えた分が戻ってくる制度です。軽くする対象がちがうため、条件に当てはまれば両方を利用できる場合があります。
負担限度額認定に有効期限はありますか?
あります。認定には有効期間があり、原則として毎年更新の手続きが必要です。多くの市区町村では8月から翌年7月までを1年の区切りとしており、更新の案内が届くことが一般的です。所得や資産の状況が変わると段階が変わったり、対象から外れたりすることもあります。
申請すれば、さかのぼって安くしてもらえますか?
さかのぼっての適用は、原則としてできません。負担限度額認定は、申請した月の初日(1日)から有効になるのが基本で、申請が遅れた月の食費・部屋代は軽くならず満額のままになってしまいます。「そのうち申請しよう」と後回しにすると、その間の軽減を取りこぼすことになります。施設への入所が決まったとき、または対象になりそうだと分かったときは、できるだけ早めに市区町村の窓口へ申請するのが、余分な負担を防ぐいちばんのコツです。手続きに迷うときは、担当のケアマネジャー(介護支援専門員)に相談すると進めやすくなります。
出典
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、正確性・最新性を保証するものではありません。 制度や施設の状況は変わることがあります。実際のご判断の前には、各施設・公式情報や公的機関でご確認ください。
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