悩み・退職
介護の職場になじめない|原因の切り分け方と居場所ができるまでの目安
新しい職場に移って、もう何週間か経つのに、自分だけがそこに溶け込めていない気がする。休憩室の会話に入れず、なんとなく壁ぎわでお茶を飲んでいる。分からないことを聞きたくても、忙しそうな先輩に声をかけるタイミングがつかめない。前の職場では正しかったやり方が、ここでは通用しない——そんな日が続くと、「ここに向いていないのかも」「そもそも介護に向いていないのかも」と、気持ちがどんどん内側にしぼんでいきます。
まず、いちばん先にお伝えします。なじめないのは、あなたの適応力が足りないからではありません。 「職場になじめるか」は、介護職にとって入職前から最大の不安として挙がるほど、誰にとっても筆頭の心配事です。その数字は、すぐこの後でお見せします。
この記事では、「なじめない」の正体を**「時間の問題」「特定の人の問題」「職場文化の問題」の3つに切り分ける方法**と、それぞれの見極めの目安・打ち手をお伝えします。いじめに近いケースで自分を守る「記録と相談の手順」まで、読み終えたら手元に残る形で整理しました。
まず結論:なじめないのは、あなたの適応力不足ではない

この記事の要点は3つです。
1. 「なじめるか」は、介護職の入職前の不安の1位。あなた一人の悩みではありません。 株式会社マイナビが介護職976人に実施した調査「マイナビ介護職『介護職白書 2024年度版』」(調査時期:2024年11月7日〜12月3日。以下「白書2024」)では、入職前に不安だったことの1位が「職場の上司やメンバーとなじめるか」で55.6%。2位の「給与・福利厚生が想定どおりか」41.4%を大きく引き離しました。お金の心配よりも、なじめるかどうかの心配のほうが大きい——半数以上が、働き始める前から同じ不安を抱えているのです。なお白書2024は転職サービスの登録会員への調査のため、転職を意識する層寄りのサンプルです。それでも、この不安が介護職に広く共有されていることは十分に読み取れます。
2. 「なじめない」の正体は、3つに切り分けられます。 単に日が浅いだけの「時間の問題」か、特定の一人との関係で起きている「特定の人の問題」か、職場ぐるみの「職場文化の問題」か。どれに当てはまるかで、待てばいいのか、相談すべきなのか、離れることを考えるべきなのか——打ち手がまったく変わります。この切り分け方を、この記事の真ん中でお渡しします。
3. どうしても合わない職場から離れるのは、正当な選択です。 ただしその場合も、辞めるのは「職場」であって「介護」ではありません。この切り分けだけは、最後まで手放さないでください。
「なじめない」が生まれる、場の側の事情

なじめないとき、人は原因を自分の内側に探しがちです。「性格がいけないのかな」「コミュニケーションが下手だからだ」と。まじめで、周りに気をつかえる人ほど、そうやって自分を責めます。けれど、データはむしろ逆のことを示しています。
白書2024では、仕事でストレスを感じている人は89.3%にのぼり、そのストレスの対象の1位は「上司や同僚との人間関係」59.1%——「利用者との関係」22.7%を大きく上回りました。さらに、介護職を長く続けるために必要なものとして「良好な人間関係」を挙げた人は72.5%で、「待遇の充実」78.9%に次ぐ2位です。つまり人間関係は、個人の適応力でどうにかするものではなく、給与と並ぶ「職場の条件」として意識されている——そう読み取れる数字です。
そのうえで、新しく入った人がなじみにくいのには、場の側のはっきりした事情があります。
できあがった関係に、後から一人で入っている
あなたが入る前から、その職場には目に見えない関係の網の目があります。誰と誰が仲がいいか、誰に聞けば早いか、休憩室で何を話すか。先に居た人にとっては「いつもの日常」でも、あなたには「初めての場所」。スタートラインが違うのですから、最初から輪の中にいられないのは当たり前です。時間が経てば、その網の目に、あなたという新しい糸が少しずつ編み込まれていきます。今はまだ、その途中なだけです。
その職場だけの「やり方」がある
記録の書き方、申し送りの順番、利用者への声のかけ方、物の置き場所。マニュアルに書かれていない「その職場だけのルール」には、むしろ経験者ほどつまずきます。前の職場では正しかったやり方が、ここでは違う。それは能力の問題ではなく、まだ知らないだけの問題です。知らないことは、これから覚えればいいだけです。
新人を気にかける余裕が、現場にない
白書2024では、休憩が取れていない人が27.7%おり、その要因の1位は「介護職員の不足」72.2%でした。自分の休憩すら取れない現場で、新しい人にゆっくり声をかける余裕は生まれにくいものです。先輩たちが冷たいのではなく、単に手が回っていない——そういう職場は少なくありません。「歓迎されていないのかな」と感じたら、まずこの可能性を思い出してください。相手を許すためではなく、あなたが必要以上に傷つかないためにです。
相性がある
どんなに歩み寄っても、波長の合わない人はいますし、集団の雰囲気が自分にしっくりこないこともあります。合う・合わないは、あなたと場のあいだで起きることであって、あなた一人の価値を決めるものではありません。
ここまでは、どの職場でも多かれ少なかれ起きることです。そしてもう一つ、なじみにくさの感じ方を大きく左右するのが、あなたがその職場に「どう入ったか」です。
中途・異動・ブランク明け——入り方で「なじみにくさ」は変わる

ひとくちに「新しい職場」と言っても、あなたがどんな入り方をしたかで、なじみにくさの中身は変わります。同じ「輪に入れない」でも、つまずいている場所は人によって違うのです。まずは、自分がどの入り方に近いかを思い浮かべてみてください。
経験者として中途で入った人がつまずきやすいのは、前の職場のやり方が体に染みついていることです。記録の様式も、申し送りの順番も、利用者への声のかけ方も、ここでは少しずつ違います。経験があるぶん「経験者なのに、今さら聞けない」という遠慮が生まれ、分からないことを一人で抱えがちになります。けれど、その職場だけのやり方は、経験の長さと関係なく、入った人がゼロから覚え直す部分です。ここでとまどうのは、あなたの実力が落ちたからではありません。
同じ法人の中で異動してきた人は、仕事のやり方は分かっているのに、人間関係だけがふりだしに戻る、という独特の心細さを抱えます。「異動なんだから、すぐ慣れるでしょう」と周りに思われやすいぶん、弱音を吐きにくいものです。顔見知りがゼロの場所に一人で立つ心細さは、外から入職した新人と、そう変わりません。慣れるのに時間がかかって、当たり前です。
未経験や新卒で入った人は、仕事の手順も、人間関係も、職場の空気も、すべてを一度に覚えることになります。周りが全員先輩という状況では、質問一つにも勇気がいります。覚えることの多さと孤立感が同時に押し寄せるので、いちばん「自分だけができない」と感じやすい立場です。それは能力ではなく、背負っているものの量の問題です。
派遣やスポットで入っている人は、短期間で入れ替わる前提のため、構造的に「輪の外」に置かれやすい働き方です。無理に腰を据えた関係を築こうとしなくていい立場でもあります。「なじめない」と自分を責めるより、必要な引き継ぎと情報を確実に受け取ることに集中して大丈夫です。
こうして並べてみると、なじみにくさの多くは「あなたがどう入ったか」という場面の事情から来ていることが見えてきます。介護歴18年で7回の転職を重ねてきた、あるグループホームの介護福祉士は、noteにこう書いています。
「スキルよりも『どこで働くか』で働きやすさが変わると感じました。」
「健康、人間関係、働き方、責任。全部を含めて考えないと、長く続けるのが難しい仕事でもあります。」
——40歳で介護職2回目の転職|グループホームを選んだ理由(note・2026年3月)より
7回の転職を経たベテランでも、なじみやすさは「どこで働くか」で変わると言い切っています。裏を返せば、いまなじめないのは、あなたの適応力そのものの問題である前に、場所と入り方の問題である可能性が高い、ということです。だとすれば切り分けたいのは、「自分の側の事情(まだ知らない・慣れていない)」と「場の側の事情(そもそも人を受け入れる体制がない)」の、どちらが大きいか。その見分け方を、次の章でお渡しします。
なじめなさの正体を切り分ける——時間か、特定の人か、職場文化か

「なじめない」とひとことで言っても、中身は大きく3種類に分かれます。自分がどれに当てはまるのかを、まず落ち着いて見分けてください。それだけで、取るべき打ち手が見えてきます。
| タイプ | こんなサインなら | 見極めの目安 | 打ち手 |
|---|---|---|---|
| 時間の問題 | 誰かに何かをされているわけではない。ただ自分だけ輪の外にいる感じがする | 3か月〜半年(個人差が大きい) | 小さな行動を続けながら待つ(次の章) |
| 特定の人の問題 | 特定の一人からだけ当たりが強い。叱責が仕事の中身でなく人格に向く | 1〜2か月続くなら記録と相談へ | 距離を取る・記録する・上司やサ責に相談 |
| 職場文化の問題 | 誰に挨拶しても返らない。新人が次々辞めている。陰口や無視が放置されている | 長く待つ必要はない | 環境を変えることを検討(後半の章) |
時間の問題——職場は普通に回っていて、自分がまだ新しいだけ
特定の誰かに意地悪をされているわけではない。質問すれば教えてもらえる。ただ、輪の中に入れている実感がない——それなら、多くの場合は時間の問題です。目安は3か月から半年。ただしこれは「そこまで我慢しろ」という期限ではなく、「それより早い段階で結論を出さなくていい」という意味の目安です。慣れの速さは人にも職場にもよるので、他の新人と比べる必要はありません。
特定の人の問題——あなたの介護が悪いのではない
他の職員とは関係を築けているのに、特定の一人からだけ、繰り返し厳しく当たられる。この場合、「なじむ努力」をいくら重ねても解決しにくいのです。問題の起点が、あなたの側にないからです。
2014年から介護の仕事を始め、グループホームでアルバイトとして働いた方は、仕事に慣れてきた頃から始まった出来事を、ブログにこうつづっています。
「どういうわけか、私の介護の仕方が悪いと、特定の正規職員の方から、たびたび注意を受けるようになりました。」
「その正規職員の方は、入所者さんや他の職員のいるところで、私一人を厳しく注意し、足早に帰宅していかれました。」
——ホームヘルパーの経験その2:辛かったグループホームでの仕事(はてなブログ・2024年2月)より
この方は、度重なる注意を受けるうちに続けていく自信を失い、結局その職場を辞めています。注目してほしいのは、「人前で」「特定の一人からだけ」「繰り返し」という形です。こうした叱責が続くと、人は「自分の介護が悪いのか」と自分を疑い始めます。けれど、指導が目的なら、人前でさらす必要はないはずです。特定の人からだけの叱責が1〜2か月続くようなら、自分を疑うより先に、記録を始めてよいサインです。 記録の具体的な手順は、後半の章でお伝えします。
職場文化の問題——待っても変わらないものがある
誰に挨拶しても返ってこない。質問できる空気が、誰に対してもない。あなたの前に入った新人も、そのまた前の新人も、短期間で辞めている。陰口や無視が日常の風景として放置されている——それは、あなたがなじめていないのではなく、誰もなじめない職場です。職場の文化は、新人一人の努力では変わりません。この場合、3か月も半年も様子を見る必要はありません。後半の章でお伝えする「環境を変える」選択を、早めに検討に入れてください。
なお、どのタイプに当てはまる場合でも、眠れない・食欲がない・出勤前に涙が出るといった心身のサインが出ているときは、見極めの期間を待たずに、休むこと・誰かに相談すること・受診することを優先してください。
「時間の問題」なら、居場所は小さな行動で作れる

切り分けてみて「時間の問題」らしいと見えたら、焦らないことがいちばんの土台です。そのうえで、ただ待つのではなく、待ち方には少しだけコツがあります。全員に好かれる必要も、輪の中心になる必要もありません。目指すのは「自分が無理なくそこに居られる状態」です。
- 挨拶を自分から。 相手の顔を見て「おはようございます」。返事がそっけなくても気にしない
- 1日1つ、質問する。 質問は会話のきっかけになり、相手に「頼られた」という記憶を残す
- お礼を言葉にする。 「ありがとうございます、助かりました」を省略しない
- 味方を一人見つける。 全員でなくていい。「この人となら話せる」一人が職場の景色を変える
そして、いちばん時間はかかるけれど、いちばん確かな道が、丁寧な仕事の積み重ねです。介護はチームで利用者の生活を支える仕事だからこそ、任された仕事をこつこつこなす人は、言葉を交わす前から少しずつ認められていきます。口下手でも大丈夫です。仕事ぶりは、あなたに代わってあなたの誠実さを伝えてくれます。
訪問介護の現場で15年働き続けている方は、新人時代に厳しい先輩に毎日のように泣かされた日々を、noteに書いています。訪問時間を間違えてしまった日、事務所で泣きながらこう謝ったそうです。
「ごめんなさい、ごめんなさい……。時間を間違えてしまって、私、向いてないんです」
——「お局ヘルパー」に毎日泣かされた私が、退職の日に初めて知った愛の形(note・2025年12月)より
返ってきたのは、「あんたがここで泣くほど、うちの事業所は暇やない!」「向いてへんなら、向くまでやればええやろ」という言葉。その夜、退職願を用意するところまで追い詰められました。けれど翌日、先輩と申し送りノートを確認するなかで、利用者が「部屋が明るくなった」と話していたことを初めて知らされ、思いとどまります。それから15年、この方はいまも訪問介護の現場に立っています。
「毎日泣かされた」と「続けてこられた」は、別々の人の話ではありません。同じ一人の中に、その両方があります。今のあなたが感じている「なじめない」と、半年後のあなたが感じていることは、同じとは限らない——「時間の問題」とは、そういう意味です。
ただし、一つだけ線を引かせてください。この先輩は「ミスした原因を分析せえ」と、仕事の中身を叱る人でした。だからこそ、あとから意味が変わったのです。人格を否定する言葉や、人前でのさらし者が繰り返されるなら、それは時間が解決する話ではなく「特定の人の問題」です。そもそも、この方のように毎日泣くほどの状態は、この記事の基準に当てはめれば「時間の問題」ではなく、記録・相談・受診を始めてよい段階です。結果として良い出会いになったのは、あくまで結果論です。この話を「厳しさは我慢すれば報われる」とは、どうか読まないでください。
それでも心がしんどい夜は、職場の外に頼ってください。厚生労働省の「こころの健康相談統一ダイヤル」(電話0570-064-556)は、かけた地域の公的な相談機関につながる全国共通の窓口です(受付の曜日・時間は地域によって異なります)。24時間対応の「よりそいホットライン」(電話0120-279-338・無料)もあります。「こんなことで」とためらう必要はありません。
いじめに近いなら、記録と相談。環境を変えるのも正当な選択

無視される。仲間外しにされる。仕事をわざと教えてもらえない。人前での叱責が執拗に繰り返される——ここまで来ると、それはもう「なじめない」ではなく、いじめ・嫌がらせの領域です。あなたの適応の問題として抱え込むものではありません。
最初の介護現場で職員間のいじめを受けた介護福祉士は、そのときの職場のことを、noteにこう書き残しています。
「挨拶をしても返ってこない、質問をしても教えても貰えない、わざと聞こえるように陰口を言われる。」
「努力しても評価されず、理不尽な空気の中で消耗していく人たちを、私は何人も見送った。」
——心が折れた。最初の介護現場でのいじめの記録。(note・2025年4月)より
挨拶を返さない、教えない、陰口が放置されている——これは「なじむ努力」で埋められる溝ではありません。職場ぐるみで起きているなら、あなたの適応の問題ではなく、その職場のあり方の問題です。自分を守るための手順を、順番にお伝えします。
手順1:その日のうちに記録する。 日時・場所・相手・言われたこと/されたこと・その場にいた人・そのときの自分の心身の状態を、スマホのメモでいいので書き残します。大事なのは、日付が入っていることです。記録は、相談するときに「いつ、何があったか」を具体的に伝える土台になるだけでなく、「自分が大げさなだけかも」という揺らぎから、あなたの記憶と感覚を守ってくれます。
手順2:職場の中で相談する。 相談先は、直属の上司かリーダー(訪問系ならサ責)、その人自身が相手なら施設長・管理者、法人にハラスメント相談窓口があればそこへ。記録をもとに、感情や評価ではなく「日付と事実」で伝えるのがコツです。特定の人の問題であれば、シフトや担当の調整という現実的な打ち手を職場側が取れる場合もあります。
手順3:職場で変わらなければ、外の窓口へ。 厚生労働省の総合労働相談コーナーは、いじめ・嫌がらせを含むあらゆる労働問題を対象にした窓口で、無料・予約不要。全国の労働局や労働基準監督署の中などに設置されています。「いじめと言い切れるか自信がない」という段階で相談してかまいません。
記録して、相談して、それでも変わらないなら、離れることは逃げではありません。そしてそのときも、辞めるのは「職場」であって「介護」ではない、という切り分けを思い出してください。利用者と関わる時間そのものは嫌いじゃない——そう感じているなら、あなたに合わないのは介護ではなく、今の場所です。介護は、施設種別や事業所によって、人間関係のつくられ方が大きく違う仕事です。
「なじめない」の悩みが特定の相手とのこじれに近いなら介護の人間関係に疲れたときを、辞めるかどうかで心が揺れているなら介護職を辞めたいと思ったらを、そもそも介護という仕事に合っているのか迷っているなら介護に向いている人・向いていない人を読んでみてください。いずれも、二択を迫らずに考えを整理するためのページです。
次の職場を考えるなら——「なじみやすさ」は見学で確かめられる

切り分けてみて「職場文化の問題」だと見えたなら、次に選びたいのは「なじみやすい職場」です。ここで一つ、心強い事実があります。なじみやすさは、入る前の見学や面接で、ある程度まで見抜けます。
給与やシフト、休日は、求人票を見れば分かります。実際、事業者が求人で開示を重視するのも、給与条件76.4%、勤務時間や夜勤回数などの勤務条件73.8%、休日・休暇52.9%の順で、いずれも「紙に書けること」でした(白書2024)。けれど、あなたが本当に不安なのは、求人票には書かれていない「人間関係」や「職場の空気」のはずです。だからこそ、そこは自分の目で確かめにいく価値があります。
見学や面接では、次の6つを見てください。
- 職員どうしが、自然に声をかけ合っているか
- すれ違う職員が、来客のあなたに会釈や挨拶をするか
- 新人の指導担当(プリセプターなど)が決まっているか
- 「分からないとき、誰に聞けますか」への答えが具体的か
- この1年、新しく入った人が続いているか
- 見学や現場の見せてもらいを、歓迎してくれるか
これらは、「困ったとき、どなたに相談できますか」「新人の方は、どなたが教えていますか」と一言たずねるだけでも確かめられます。答えがすらすら返ってくる職場は、人を受け入れる仕組みが実際に動いている証拠です。逆に、見学を渋ったり現場を見せたがらなかったりする職場は、少し慎重に見てよいサインです。
先ほど触れたとおり、辞めるのは「職場」であって「介護」ではありません。介護は人手不足が続く分野で、あなたには職場を選び直す側に立つ力があります。介護労働安定センターの令和6年度「介護労働実態調査」でも、介護職員と訪問介護員を合わせた離職率は12.4%で、前年から低下する傾向にあります(調査ごとに定義が異なるため、他産業の数字と単純に比べるものではありません)。「介護は誰も続かない」のではなく、自分に合う場所を見つけて働き続けている人が、たくさんいるということです。
居場所は、あなたの手で作っていける

最後に、この記事の持ち帰りをまとめます。
- 「なじめるか」は入職前の不安の1位。あなたの適応力不足ではない
- なじめなさの正体は「時間・特定の人・職場文化」の3つに切り分けられる
- 時間の問題なら、挨拶・質問・味方一人・仕事の積み重ねで居場所は作れる
- 特定の人・職場文化の問題なら、記録と相談。我慢で乗り切らない
- どうしても合わなければ離れていい。辞めるのは職場であって、介護ではない
- 次を探すなら、なじみやすさは見学・面接で見抜ける。人間関係は求人票に出ない
明日からできる一歩は、タイプによって違います。時間の問題らしいなら、朝、少しだけ顔を上げて、自分から「おはようございます」と言ってみる。特定の人の問題かもしれないなら、今夜、スマホのメモに今日あったことを日付つきで書いてみる。職場文化の問題に見えるなら、ほかにどんな職場があるのかを、そっとのぞいてみるだけでもいい。選べる場所があると知ることは、それだけで心の余裕になります。
どの一歩を選んでも、間違いではありません。居場所は、最初から用意されているものではないけれど、我慢だけで手に入るものでもありません。あなたのペースで、あなたを守りながら、いきましょう。
よくある質問
新しい介護の職場になじめないのは、普通のことですか?
はい、とても多い悩みです。株式会社マイナビの調査「マイナビ介護職『介護職白書 2024年度版』」(調査時期:2024年11月7日〜12月3日)では、入職前に不安だったことの1位が「職場の上司やメンバーとなじめるか」で55.6%と、2位の「給与・福利厚生が想定どおりか」41.4%を大きく上回りました。転職サービスの登録会員への調査のため転職を意識する層寄りのサンプルですが、半数以上が働き始める前から同じ不安を抱えています。なじめない時期があるのは、あなたの適応力の欠陥ではありません。
新しい職場に慣れるまで、どれくらいかかりますか?
目安は3か月から半年ですが、人と職場によって大きく違い、「いつまでに慣れるべき」という決まりはありません。仕事の手順を覚え、顔と名前が一致し、二言三言かわせる相手が増えていく——その積み重ねのなかで、慣れは少しずつやってきます。他の新人と比べて焦る必要はありません。ただし、眠れない・食欲がない・出勤前に涙が出るといったサインが出ているときは、期間を待たずに、休むこと・相談すること・受診することを優先してください。
なじめないのは、自分のコミュニケーションが下手だからでしょうか?
多くの場合、原因はあなた一人にはありません。できあがった人間関係に後から一人で入ること、その職場だけのやり方をまだ知らないこと、人手不足で周りに新人を気にかける余裕がないこと——なじみにくさは、こうした場の側の事情が重なって生まれます。「時間の問題か」「特定の人の問題か」「職場文化の問題か」を切り分けて考えると、自分を責めずに、待つ・相談する・離れるといった打ち手を選べるようになります。
特定の先輩からだけ、人前で繰り返し叱責されます。いじめでしょうか?
すぐに断定する必要はありませんが、特定の人からだけの人前での叱責・無視・仲間外しが繰り返されているなら、指導の範囲を超えている可能性があります。まず、日時・場所・言われたこと・その場にいた人を、その日のうちにスマホのメモなどに記録してください。そのうえで、直属の上司や施設長、法人の相談窓口に、記録をもとに事実ベースで相談します。職場で変わらなければ、厚生労働省の総合労働相談コーナー(無料・予約不要)で、いじめ・嫌がらせを含む労働問題の相談ができます。
どうしてもなじめない職場は、辞めてもいいのでしょうか?
はい、原因を切り分けたうえで職場文化の問題だと見えたなら、環境を変えるのは逃げではなく正当な選択です。そのときは、「介護の仕事そのもの」がつらいのか、「今の職場」が合わないだけなのかを分けて考えてください。後者なら、辞めるのは職場であって介護ではありません。介護は施設種別や事業所によって人間関係のつくられ方が大きく変わる仕事なので、自分に合う場所を探し直すことができます。
経験者として中途入職したのに、前の職場より仕事ができない気がして落ち込みます。
中途入職の「できない感」の多くは、実力が落ちたからではなく、「その職場だけのやり方をまだ知らないこと」から来ています。記録の様式、申し送りの順番、物の置き場所、利用者ごとの対応——これらは経験の長さと関係なく、新しい職場ごとに覚え直す部分です。経験者ほど「今さら聞けない」と抱え込みがちですが、最初の1〜2か月は「新しい職場の新人」と割り切り、分からないことをその場で聞くほうが、結果的に早くなじめます。前の職場と比べて落ち込む必要はありません。比べるなら、先週の自分とにしてください。
出典
- 株式会社マイナビ「マイナビ介護職『介護職白書 2024年度版』」 (2025年発行(調査時期:2024年11月7日〜12月3日))
- 公益財団法人 介護労働安定センター「介護労働実態調査」 (令和6年度(2024年度))
- 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」 (2026年閲覧)
- 厚生労働省「こころの健康相談統一ダイヤル」 (2026年閲覧)
- 厚生労働省「まもろうよ こころ(電話相談窓口)」 (2026年閲覧)
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、正確性・最新性を保証するものではありません。 制度や施設の状況は変わることがあります。実際のご判断の前には、各施設・公式情報や公的機関でご確認ください。
運営: 株式会社街中文学