悩み・退職
介護のハラスメント対処|パワハラ・セクハラ・カスハラを我慢しないための行動リストと相談先
利用者に体を触られても、罵声を浴びせられても、その場は笑ってやり過ごすしかない。フロアに戻れば戻ったで、先輩の機嫌をうかがい、上司の怒鳴り声に身をすくめる——今、そんな毎日に心をすり減らしていないでしょうか。「これくらい我慢しなきゃ」「相手は認知症だから仕方ない」と、つらさをのみ込んできた人ほど、この仕事をまじめにやってきた人です。
先に、いちばん大事なことをお伝えします。それは、あなたが我慢して耐えるべき問題ではありません。 あなたの受け止め方が悪いのでも、スキルが足りないのでもありません。株式会社マイナビが介護職976人に実施した調査「マイナビ介護職『介護職白書 2024年度版』」(調査時期:2024年11月7日〜12月3日。以下「白書2024」)では、勤務先でハラスメントを経験した(自ら受けた・見た)人は67.7%にのぼりました。これほど多いのは、介護の現場に、ハラスメントを生みやすく「我慢させやすい」構造があるからです。
この記事では、パワハラ・セクハラ・カスハラの整理と「なぜ介護で起きやすいか」に加えて、「我慢する」以外の行動リスト——記録の付け方→社内での相談→外部の公的窓口という順路を渡します。事業主に義務づけられた防止措置や、2026年10月から始まるカスハラ対策の義務化も紹介します。読み終えたとき、今夜からできる最初の一歩が手元に残るはずです。
まず結論:「我慢する」以外の道は、すでに用意されています

最初に、この記事で伝えたいことを3つに絞ってお伝えします。
1つめ。ハラスメントは「介護の仕事に含まれるもの」ではありません。 白書2024では、ハラスメントを自ら受けた人が53.9%、受けている人を見たことがある人が13.8%——合わせて67.7%が経験していました。おおよそ3人に2人です。これだけ多いのは「それが普通のことだから」ではなく、長く放置されてきた構造の問題だからです。あなた一人の落ち度で起きたことではありません。
2つめ。「我慢する」以外の行動リストは、記録→社内→外部の3段の順路です。 完璧な証拠も、退職の覚悟もいりません。今日できる最初の一歩は、スマホのメモに「日時・言われたこと・誰が見ていたか」を一行書くことです。この順路の具体的な進め方を、この記事の中ほどでまとめています。
3つめ。ハラスメントを防ぐのは、あなたではなく事業主の義務です。 パワハラ・セクハラの防止措置(相談窓口の設置など)は法律で事業主に義務づけられており、利用者・家族からのカスハラへの対策も、2026年10月1日から事業主の義務になります。相談することは、わがままではなく、当然の環境を求めているだけのことです。
なお、白書2024は転職サービスの登録会員への調査のため、転職を意識している人寄りのサンプルです。数字は「介護職全体の正確な割合」ではなく、「同じ経験をした人がこれだけいる」という目安として読んでください。
介護で起きやすいハラスメントの3つのかたち——パワハラ・セクハラ・カスハラ

ひとくちにハラスメントと言っても、介護の現場で起きるものは大きく3つに分けられます。相手が「職場の人」なのか「利用者・家族」なのかで対応の入り口が変わるので、まず、あなたが今つらいと感じているものがどれに近いのかを整理しましょう。分けて見るだけでも、「これはおかしいことなんだ」と輪郭がはっきりします。
職場のパワハラ——「指導」の顔をしてやってくる
パワハラは、職場で優位な立場にある人が、業務に必要な範囲を超えて相手を傷つける言動です。厚生労働省がパワハラの代表的な型として整理しているのは、次の6つです(厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」)。
- 精神的な攻撃……大声で怒鳴る、人格を否定する、みんなの前で長時間責める
- 身体的な攻撃……たたく、物を投げつける
- 人間関係からの切り離し……無視する、一人だけ仲間はずれにする
- 過大な要求……到底終わらない量の仕事や、できないと分かっている業務の強要
- 過小な要求……わざと仕事を与えない、簡単すぎる仕事しかさせない
- 個の侵害……プライベートへの過度な立ち入り、しつこい詮索
大切なのは「指導」との線引きです。業務に必要なことを常識の範囲で注意されるのは指導です。けれど、人格を否定したり、繰り返し大声で責めたりするのは、指導ではありません。「自分のためを思って言ってくれている」と無理に納得しようとしなくていいのです。
職場のセクハラ——「そのつもりはなかった」は理由にならない
同僚や上司からの性的な言動——体を不必要に触る、性的な冗談や質問を繰り返す、交際をしつこく迫る——はセクハラです。覚えておいてほしいのは、相手に悪気があったかどうかは関係ないということ。あなたが不快だと感じたなら、それはセクハラになりえます。
「笑って受け流していたから、いいと思った」という言い訳も通りません。笑ってやり過ごすのは、その場をおさめるためのあなたなりの防御であって、受け入れたということではないからです。
利用者・家族からのカスハラ——介護に特有の重さ
そして、介護ならではの悩みが、利用者やその家族からの行き過ぎた言動——カスタマーハラスメント(カスハラ)です。具体的には次のようなものが挙げられます。
- 暴言・威圧……「役立たず」「金を払っているんだ」と怒鳴る、大声でおびえさせる
- 暴力……たたく、つねる、かみつく、物を投げる
- 性的な言動……体を触る、卑わいな言葉をかける、性的な話を繰り返す
- 過剰な要求……契約外のサービスの強要、長時間の理不尽なクレーム
訪問入浴・訪問介護・デイを経て、現在はケアマネジャーとして働く介護歴約30年の方は、訪問先で受けた経験をブログでこう振り返っています。
布団を敷く位置が数センチ違うだけで、1時間近く怒鳴られたこともあります
セクハラ発言や体を触られたこともありました
——他人事じゃなかった…介護歴30年の私がゾッとしたニュース(アメーバブログ・2026年閲覧)より
30年のベテランでも、こうした経験を「他人事じゃない」と抱えています。この方が同じ記事に書いた「介護職も一人の人間です。利用者さんを支えることは大切ですが、自分の身の安全まで犠牲にする必要はありません」という言葉が、この問題のすべてだと思います。
ここでデリケートな点にもふれておきます。利用者のなかには、認知症など病気の影響でこうした行動が出る方もいます。その場合、本人を責めることはできません。けれど「本人に悪気がないから、職員が我慢すればいい」という話でもありません。原因が病気であっても、受け止め続ける側の心と体は傷つくからです。本人を責めないことと、職員を守ることは、両立させるべき別の問題——だからこそ、あなた個人ではなく、事業所がチームで対応を決めるべきことなのです。
なぜ「我慢して当たり前」になりやすいのか——数字と構造

「どうして介護の職場で、こんなことが」と感じているかもしれません。理由を知る目的はひとつ、あなたに落ち度があったのではないと、はっきりさせることです。
経験67.7%。しかも相手の最多は、利用者ではなく上司
白書2024では、ハラスメントを経験した人は67.7%(自ら受けた53.9%・見たことがある13.8%)でした。巻末の自由記述にも、暴言や無視、性的な言動など、具体的な体験が数多く寄せられています。
注目してほしいのは、相手の内訳です。経験者が挙げた相手は、上司が63.2%で最も多く、先輩・同僚が36.8%、利用者が28.1%(複数回答)。カスハラが世間で注目されがちですが、数のうえでは職場の中——それも立場が上の人からのハラスメントが最多なのです。「利用者相手の仕事だから多少は仕方ない」という説明では、この数字はまったく説明がつきません。
ハラスメントが生まれやすい、3つの構造
1つめは、ケアの密接さです。 食事・入浴・排せつの介助は、利用者との距離が近く、密室で一対一になる場面も多い仕事です。周りの目が届きにくいぶん、暴言・暴力・性的な言動が起きやすく、表にも出づらい。これは仕事の性質からくる構造的な難しさで、あなたの隙のせいではありません。
2つめは、閉じた人間関係です。 少人数の固定メンバーで密に働く職場では、とくに上司からのパワハラに声を上げにくい。「波風を立てたら明日から働きづらくなる」とためらうのは、臆病だからではなく、閉じた環境で誰もが感じる自然な不安です。だからこそ、後で紹介する「外部の窓口」が効いてきます。
3つめは、人手不足です。 欠員のしわ寄せで余裕を失った現場では、職員どうしの言葉がきつくなりやすく、カスハラへの組織対応も後回しにされがちです。「みんな忙しいから」と、被害の訴えがうやむやにされやすい土壌にもなります。
「報告しても笑われる」——我慢させる文化
構造に加えて、介護の現場には「利用者からの被害は我慢するもの」という古い文化が残っています。2017年、利用者からのセクハラ被害を訴えた介護職の投稿をきっかけに、同様の証言がX(旧Twitter)で相次ぎました。
23歳で介護業界入ってきて男性利用者に乳首摘まれた話したら笑い話になったのにびっくりしたし、正直家帰って号泣したしそれに耐えろって散々言いながら人手不足ですぴぇえええってどの面下げて言うとんねんって思います。
——Togetterまとめ(2017年11月・当時の投稿)より
同じまとめでは、施設で働く別の投稿者が「問題なのは、上司やSNSに報告した際に『我慢しろ』『分かってて介護士になったんだろ』と言ってくる現状」だと指摘しています(同・2017年投稿)。いずれも9年前の投稿で、SNSで拡散した声は極端な例に偏りやすい点は差し引いて読んでください。それでも、「被害そのものと同じくらい、報告したあとの扱いに傷つく」という構図は、白書2024の自由記述に今も同種の声が寄せられていることと重なります。
あなたが弱いから傷つくのではありません。受け止めさせる構造と、我慢させる文化の問題です。だからこそ次の章では、「我慢する」の代わりにできることを、順路として渡します。
「我慢する」以外の行動リスト——記録→社内→外部の順路

順路はシンプルです。①その日のうちに記録する→②社内(上司・相談窓口)に共有する→③動かなければ外部の公的窓口へ。この順で進むと、感情ではなく事実で話せるようになり、途中でどこかが機能しなくても次の行き先があります。
手順1:その日のうちに、4点セットで記録する
いちばん大切なのが記録です。特別なノートはいりません。スマホのメモで十分です。次の4点を、記憶が新しいうちに書き残しましょう。
- 日時と場所……「◯月◯日◯時ごろ、◯階の浴室で」のように具体的に
- 相手……誰から受けたか。上司・同僚・利用者・家族、どの相手でも同じです
- 内容……言われた言葉・されたことを、できるだけそのままの形で
- 目撃者……その場に誰がいたか。名前まで書ければ心強い
あわせて、関係するメールやメッセージ、連絡帳、業務日誌、ヒヤリハット報告など、状況を裏づけるものが残っていれば保存しておきます。この日々のメモと資料が、そのまま相談時の資料になり、「証拠になりうるもの」になります。完璧をめざして動けなくなるより、今日、一行書き始めることがいちばん大切です。
手順2:一人で抱えず、社内に共有する
記録と並行して、一人で抱えるのをやめましょう。まず信頼できる同僚や家族に「実は、こんなことがあって」と話すだけでも、自分の感覚を確かめられます。ハラスメントを受け続けると「自分が我慢すればいいのかも」と感覚がまひしていくので、第三者の「それはおかしいよ」に我にかえる意味があります。
そのうえで、正式に相談する先を選びます。職場のハラスメント相談窓口か、直属でない上司が基本の入り口です。直属の上司が相手なら、さらに上の立場の人や別の窓口へ。利用者・家族からのカスハラなら、「一人で対応しない」体制づくりを職場に求めます。複数人での対応、担当の変更、対応方針の明文化など、組織で打てる手はたくさんあります。
一人で利用者宅に入る訪問ヘルパーには、この「抱え込まない」が特に切実です。還暦を過ぎてヘルパー歴6年になる方は、口うるさい利用者家族のいる家への訪問を、ブログでこう書いています。
あの家に行かなあかん思うたら、下痢するし。吐き気する。ごはん食べれんし。寝れんし。
——訪問介護で家族がうるさい時の対処法5選(アメーバブログ・2023年2月)より
体が先に悲鳴を上げる。それほどの負荷を、一人現場のヘルパーは日常的に背負っています。同じ記事でこの方は「文句があるなら、ケアマネにいうて! のオーラを出しなさい!」「一円にもならんことで病むな!」と、抱え込まずに線を引く自衛の知恵も書き残しています。現場への要望や苦情をヘルパー個人がその場で受け止めきらず、サ責やケアマネに戻すのは、本来の正しい流れでもあります。あなたが盾になる必要はありません。
手順3:社内で動かないときは、外部の窓口へ
「相談したのに動いてくれない」「そもそも相談できる空気ではない」。そのときは、ためらわずに職場の外へ出ましょう。最初の行き先は、次の章で紹介する総合労働相談コーナーが使いやすいはずです。手順1の記録があれば、「◯月◯日にこういうことがありました」と落ち着いて伝えられます。繰り返しますが、記録がそろっていなくても相談はできます。あきらめる理由にしないでください。
ハラスメント対策は、あなたではなく事業主の義務です

ここで、ぜひ知っておいてほしい前提があります。ハラスメントを防ぐ体制をつくるのは、働く人の「自衛努力」ではなく、事業主の法律上の義務だということです。
パワハラ・セクハラの防止措置は、すでに義務
労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)により、事業主にはパワハラ防止のための措置が義務づけられています。2022年4月からは中小企業も対象で、介護の事業所も例外ではありません。具体的には、「ハラスメントを許さない」方針の明確化と周知、相談窓口の整備、相談後の事実確認と被害者への配慮、そして相談したことを理由とする解雇・降格などの不利益な取り扱いの禁止などです。セクハラについても、男女雇用機会均等法で同様の措置が義務づけられています(厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」)。
カスハラ対策も、2026年10月1日から義務になります
さらに、2025年6月に公布された改正労働施策総合推進法により、顧客などからのハラスメント——介護なら利用者・家族からのカスハラが典型です——から働く人を守る措置も、2026年10月1日から事業主の義務になります(厚生労働省「令和7年 労働施策総合推進法等の一部改正について」)。従業員を一人でも雇う事業主すべてが対象で、経過措置はありません。厚生労働省は、事業主が講ずべき措置の内容を定めた指針もすでに示しています。この記事の時点ではまだ施行前ですが、「利用者からの迷惑行為は職員が我慢するもの」という考え方が、法律のうえでも通用しなくなることは、もう決まっているのです。
介護の分野では、これに先立って厚生労働省が「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」や研修の手引きを公表しており、2021年度(令和3年度)の介護報酬改定では、すべての介護サービス事業者に、ハラスメント対策として必要な措置を講じることが義務づけられました(厚生労働省「介護現場におけるハラスメント対策」)。
つまり、あなたが相談することは、わがままでも大げさでもありません。事業主が本来整えるべき「安全に働ける環境」を求めているだけです。自分の職場の体制が義務を満たしているのか判断がつかないときも、その判断ごと、次の外部窓口に相談できます。
職場の外にある、無料の公的相談窓口

「職場の中では相談しづらい」「相談したけれど動いてくれない」——そんなときのための窓口です。どれも無料で使えます。
**都道府県労働局の「総合労働相談コーナー」**が、最初の行き先としていちばん使いやすい窓口です。各都道府県の労働局や労働基準監督署の中など全国378か所にあり、無料・予約不要。パワハラ・セクハラ・カスハラを含む働き方のあらゆる悩みを、専門の相談員に面談または電話で相談できます(厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」)。「これはハラスメントと言えるのか」の段階から相談してかまいません。
労働基準監督署は、残業代の不払いや休憩が取れないなど、賃金・労働時間の問題が絡むときの相談先です。ハラスメントにこうした問題が重なっている職場は少なくありません。
「これはハラスメントなのか」を整理したいときは、厚生労働省のハラスメント対策の総合ページ(「職場におけるハラスメントの防止のために」)で、パワハラ・セクハラの定義や、事業主に義務づけられた措置を確認できます。自分の状況がどの型にあたるのかを、落ち着いて照らし合わせられます。
心と体に出ているなら、心のケアを先に。 眠れない・食べられない・出勤前に涙が出るといった状態が続くなら、まず気持ちを支える窓口を頼ってください。厚生労働省の相談窓口案内「まもろうよこころ」には、電話・SNS・チャットの相談先がまとまっています。働く人向けの相談窓口「こころの耳」(電話・SNS・メール)や、自治体の「こころの健康相談」もあります。ハラスメントの解決より先に、あなたの回復です。
窓口の連絡先は地域によって異なるため、上の名称で検索するか、お住まいの自治体・都道府県労働局の公式サイトで確認してください。「こんなことで相談していいのかな」とためらう必要はありません。相談員は、そういう迷いごと聞くための専門家です。
「離れる」という選択肢も、あなたを守る正当な手段

記録し、共有し、外部にも相談した。それでも状況が変わらない。毎朝、職場に向かう足がすくむ——そんな状態が続いているなら、その職場から離れることも、あなたを守る立派な手段です。逃げでも、あきらめでもありません。ハラスメントを止めようとしない職場に、無理をしてまでとどまり続ける義務は、あなたにはありません。
大事なのは、「介護を辞める」ことと「今の職場を辞める」ことは別だ、ということです。介護そのものが嫌になったのでないなら、経験も資格も次の場所でそのまま活きます。介護は人手不足が続く業界で、働き手が職場を選びやすい側でもあります。もっとも、辞める・続けるを今すぐ決める必要はありません。心と体の危険信号が出ているなら、判断より先に休むこと。逆に、次を探す余力があるなら、選択肢を知っておくだけでも「いつでも移れる」という余裕が生まれます。
次の職場を見極めるときは、ハラスメントへの向き合い方を具体的に確かめましょう。面接や見学で「困ったときの相談体制はどうなっていますか」「利用者からのハラスメントには、どう対応していますか」と聞いてみてください。カスハラ対策が事業主の義務になっていく流れのなかで、対応方針を明文化している職場かどうかは、職員を守る気があるかどうかの分かりやすい物差しになります。あわせて、職員が長く続いているか、見学時の職員どうしの表情や声のかけ方も見ておくと、求人票では分からない空気がつかめます。
施設タイプごとの働き方の違いは施設タイプ別の「働き方」を比べるで、地域の施設の基本情報は施設・職場の基本情報を地域から調べる(求人ではありません)で確認できます。ハラスメントとまでは言えないけれど人間関係がつらい、という段階なら介護の人間関係に疲れたときも、あわせて読んでみてください。
まとめ:あなたの尊厳を、いちばんに

最後に、この記事の要点をまとめます。
- 介護のハラスメントはパワハラ・セクハラ・カスハラの3つ。どれも我慢の対象ではない
- 白書2024ではハラスメント経験67.7%。相手の最多は利用者ではなく上司だった
- 順路は「記録→社内→外部」。今日の一歩は、スマホのメモに一行書くことでいい
- 防止措置は事業主の義務。カスハラ対策も2026年10月1日から義務になる
- 総合労働相談コーナーは無料・予約不要。改善しないなら「離れる」も正当な選択
あなたは、暴言や暴力、性的な言動を受け入れるためにこの仕事を選んだのではありません。誰かの生活を支えたいという気持ちで、ここまで続けてきたはずです。その気持ちは、傷つけられていい理由にはなりません。
いちばんに守られるべきなのは、利用者でも職場でもなく、あなた自身の尊厳です。もし今つらいなら——今日あったことを、メモに一行だけ書き残すことから始めてください。それが、「我慢する」以外の道の、最初の一歩になります。
よくある質問
利用者やその家族からの暴言・セクハラも、ハラスメントとして相談していいのですか?
はい、相談してかまいません。利用者・家族からの暴言・暴力・性的な言動は「カスタマーハラスメント(カスハラ)」にあたり、職員が我慢すべきものではありません。2025年6月に公布された改正労働施策総合推進法により、2026年10月1日からはカスハラから働く人を守る措置が事業主の義務になります。認知症など病気が背景にある場合も、本人を責めないことと職員を守ることは別の問題で、複数人対応や担当替えなど組織で決めるべきことです。日時・言動・目撃者を記録し、上司や相談窓口に共有してください。
介護現場でハラスメントを経験した人は、どれくらいいますか?
株式会社マイナビの調査「マイナビ介護職『介護職白書 2024年度版』」(調査時期:2024年11月7日〜12月3日)では、勤務先でハラスメントを自ら受けた人が53.9%、受けている人を見たことがある人が13.8%で、合わせて67.7%が経験していました。相手として挙がったのは上司63.2%・先輩や同僚36.8%・利用者28.1%の順です。転職サービスの登録会員への調査のため転職を意識する層寄りのサンプルですが、決して珍しい悩みではないことがわかります。
職場にハラスメントの相談窓口がありません。どこに相談すればいいですか?
職場の外に、無料で使える公的窓口があります。各都道府県労働局などに設置された「総合労働相談コーナー」(全国378か所)は、無料・予約不要で、パワハラやカスハラを含む働き方の悩みを専門の相談員に面談または電話で相談できます。なお、相談窓口の整備はパワハラ防止措置として事業主に義務づけられた項目の一つなので、「窓口がない・機能していない」という状況そのものも含めて外部で相談できます。残業代の不払いなど賃金・労働時間の問題が絡む場合は、労働基準監督署も相談先になります。
証拠がないと、ハラスメントは相談しても意味がないですか?
証拠がなくても、相談すること自体に意味があります。そのうえで、記録があると事実を伝えやすくなります。特別なものでなくて構いません。「いつ・どこで・誰に・何を言われた(された)か・誰が見ていたか」を、その日のうちにスマホのメモや手帳に書くだけで立派な記録になります。関係するメールや連絡帳、業務日誌などが残っていれば保存しておきましょう。完璧な証拠をそろえてからと考えて動けなくなるより、今日から一行書き始めることが大切です。
ハラスメントを相談したら、職場に居づらくなりませんか?
不安になるのは自然なことですが、ハラスメントの相談をしたことを理由とする解雇や降格などの不利益な取り扱いは、法律で禁止されています。それでも社内に相談しづらいときは、先に総合労働相談コーナーなどの外部窓口で「どう進めるか」から相談する方法もあります。手を尽くしても状況が変わらず心身がつらいままなら、その職場から離れることも、あなたを守るための正当な選択です。
これはハラスメントなのか、指導の範囲なのか、自分でも分かりません。
迷った時点で、相談してかまいません。業務に必要な注意や指導と違い、人格を否定する、大声で繰り返し怒鳴る、みんなの前で長時間責め続けるといった言動は、業務上必要な範囲を超えたパワハラの可能性があります。判断がつかないまま一人で抱えると感覚がまひしていくので、記録を付けながら、信頼できる人や総合労働相談コーナーなどの窓口に「こういうことが続いている」と話してみてください。第三者に話すことで、おかしさの整理がしやすくなります。
出典
- 厚生労働省「令和7年 労働施策総合推進法等の一部改正について(カスタマーハラスメント対策等)」 (2026年閲覧)
- 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」 (2026年閲覧)
- 厚生労働省「介護現場におけるハラスメント対策」 (2026年閲覧)
- 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」 (2026年閲覧)
- 厚生労働省「まもろうよこころ(相談窓口の総合案内)」 (2026年閲覧)
- 株式会社マイナビ「マイナビ介護職『介護職白書 2024年度版』」 (2025年発表(調査時期:2024年11月7日〜12月3日))
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