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介護の新人がつらいと感じたら|つらさを3つに仕分ける「いつまで様子を見るか」の目安

公開: 2026年7月25日 / 編集: 介護のしるべ編集部

今日も、うまくできなかった。申し送りの内容が頭に入りきらないまま現場に出て、先輩に注意された言葉が、家に帰ってからも頭の中で繰り返される。まわりはてきぱき動いているのに、自分だけ立ち止まっている気がする——。介護の仕事を始めて1年目のあなたは、今、そんな夜を過ごしているのかもしれません。

まず、これだけ先にお伝えさせてください。**新人期がつらいのは、あなたの我慢や根性が足りないからではありません。**覚えることが一度に押し寄せ、気を張り続け、注意される回数だけが増えていく——新人期は、誰にとっても構造的にしんどくできています。「新人のうちは我慢して当然」という言葉に、この記事は同意しません。

そのうえで、この記事が渡したいのは「つらさの仕分け方」です。新人期の「全部しんどい」は、「技術」「人間関係」「心身のSOS」の3つに仕分けると、それぞれ対処がまったく違うことが見えてきます。慣れと工夫で軽くなるもの。時間の問題か職場の構造かを見極めるもの。そして、様子を見てはいけないもの。それぞれに「いつまで様子を見るか」の目安を、1年目の当事者の声と調査データと一緒にお伝えします。読み終わるころには、「全部しんどい」が「これはあと数か月やってみる、これはすぐ動く」に変わっているはずです。

まず結論:つらさは「技術・人間関係・心身のSOS」に仕分ける

細かい話に入る前に、この記事の結論を先にお伝えします。新人期のつらさは、次の3つに仕分けられます。

  • **技術のつらさ(覚えられない・失敗する)は、慣れと工夫で軽くなります。**様子を見る目安は半年〜1年。
  • **人間関係のつらさは「時間の問題」か「職場の構造」かを見分けます。**2〜3か月で兆しがなければ構造を疑う。
  • **心身のSOS(眠れない・食べられない)は様子見禁止。**2週間続いたら、慣れを待たずに休む・受診する。

「新人のうちは我慢が当然」という精神論は、この3つをごちゃ混ぜにしたときに生まれます。技術の話なら、必要なのは我慢ではなく工夫と回数です。人間関係の話なら、我慢ではなく見極めです。そして心身のSOSに我慢を当てはめるのは、むしろ危険です。この記事では、3つを順番にほどいていきます。

なぜ、介護の新人期はこんなにつらいのか

つらさは、正体の分からないうちがいちばんこたえます。「なんだか全部しんどい」を分解してみると、その多くが「あなたのせいではない理由」から来ていることが分かります。

覚えることが、一度に押し寄せてくる

新人期にまず直面するのが、量の暴力です。利用者さん一人ひとりの名前と体の状態、食形態やトロミの濃さ、移乗のやり方と注意点。食介・入浴介助・排泄介助の手順。記録の書き方、コール対応、申し送りの聞き方と伝え方。職場ごとのローカルルール。これらが、働き始めてすぐの数週間にいっぺんに降ってきます。

しかも介護は、相手が「人」です。マニュアルどおりにいかないことが日常的に起こります。「Aさんにはこの声かけでいいが、Bさんには別の言い方がいい」——こうした個別対応は、一朝一夕には身につきません。だから、「覚えられない」と感じるのは記憶力の問題ではなく、単純に量が多すぎるからです。一度に全部を覚えられる人のほうがめずらしいのです。ここは後の章の「メモの工夫」で大きく楽にできます。

気を張り続けるうえに、「初めてのイレギュラー」が突然来る

介護は、体を使う仕事であると同時に、心をとても使う仕事です。転倒や急変が起きないよう常に神経を張り、新人のうちはそこに「間違えないように」「迷惑をかけないように」という緊張が上乗せされます。さらに、教わった手順どおりでは済まないイレギュラーが、ある日突然やってきます。

当事者の声を一つ紹介します。前職が製鉄業と接客業だった25歳の男性は、2025年3月に介護の仕事を始めた1年目の記録で、一番きつかったこととして、排泄介助のイレギュラー対応——「排泄物がおむつパッドに収まりきらず、衣類やシーツまで汚染している場合」の対応を挙げています。

「なんとか対応を終えた後には、緊張が解けて一気に疲れが押し寄せてくることも多くありました」

(出典: note「介護士一年目が一番きついと感じたことと、その乗り越え方」・2026年1月)

この「緊張が解けたあとに、どっとくる疲れ」は、多くの新人が身に覚えのある感覚ではないでしょうか。家に帰っても仕事のことが頭から離れない、休みの日なのに気持ちが休まらない——それは心がずっと働き続けているサインです。疲れているのは、あなたが弱いからではなく、まだ気の抜きどころが分からないから。これは慣れとともに少しずつ楽になっていきます。

注意される機会が増え、自信をなくしやすい

新人のうちは、どうしても注意される機会が増えます。手順が違う、確認が足りない、報告が遅い——一つひとつはもっともな指摘でも、毎日となると心はすり減ります。「また怒られた」「迷惑ばかりかけている」と自信をなくす人は本当に多いのです。

でも、注意が増えるのは、あなたがまだ確認してもらう段階にいる、育てられる立場だからです。裏を返せば、伸びていく途中にいるということでもあります。指摘の「言い方」がきつくて傷つくときは、「何を直せばいいか(内容)」と「どんな言い方をされたか(言い方)」を頭の中で切り離すのがコツです。直すべき中身だけを受け取って、きつい言い方のほうはそっと横に置く。全部をまるごと受け止めると、心がもちません。

ただし、内容のない人格否定や無視は「注意」ではありません。その線引きは、次の章と仕分け表で扱います。

人間関係を、一から築かなければならない

新しい職場では、仕事を覚えるのと同時に人間関係も一から築くことになります。誰に何を聞けばいいか、この職場の空気はどんな感じか——それが分からないうちは、質問一つにも気をつかいます。介護の職場は少人数のチームで長い時間を過ごすだけに、なじむまでの居心地の悪さを感じやすい場所です。

これは、あなたの社交性の問題ではなく、働く側みんなが抱える不安です。株式会社マイナビが実施した調査、マイナビ介護職『介護職白書 2024年度版』(調査時期は2024年11月7日〜12月3日。以下「白書2024」)によると、入職前の不安の1位は「職場の上司やメンバーとなじめるか」で55.6%。給与や福利厚生(41.4%)を上回って、人間関係が最大の不安でした。なお白書2024は転職サービスの登録会員への調査のため、転職を意識している介護職寄りのサンプルです。その前提で読んでも、「なじめるか不安なのは自分だけ」ではないことは、この数字から言えます。

職場側にも変えられることがあります。介護労働安定センターの令和6年度「介護労働実態調査」では、72.0%の事業所が「人間関係が良好な職場づくり」に取り組んでいると回答しています。ただし、取り組みがあることと、実際に新人が相談しやすいことは別です。指導担当が決まっているか、困ったときに別の人へ相談できるかを確かめてください。無視や侮辱が続くなら、「時間が解決する」と我慢し続ける必要はありません。

「最初がつらい」のは、あなただけではない——数字と当事者の声

ここまで読んで、「理由は分かった。でも、みんなはもっとうまくやっているのでは」と感じているかもしれません。だから、少しだけ数字の話をさせてください。

白書2024では、**仕事でストレスを感じている人が89.3%(「ほぼ毎日感じる」だけで48.1%)**にのぼりました。ストレスの対象の1位は「上司や同僚との人間関係」で59.1%。「利用者との関係」(22.7%)を大きく上回ります。これは新人に限った数字ではありません。だからこそ、「慣れれば自然に消える」とは限らない種類のストレスが、この業界に広くあることが分かります。少なくとも、「ストレスを感じるのは自分の適応力が低いからだ」と自分を責める理由は、この数字のどこにもありません。

もう一つ、目をそらさずに書いておきたい数字があります。同じ白書2024で、ハラスメントを経験した(自ら受けた53.9%+見聞きした13.8%)人は67.7%。相手の1位は上司(63.2%)、次いで先輩・同僚(36.8%)でした。この数字も新人に限った集計ではありませんが、経験の浅い側ほど「これは指導なのか、ハラスメントなのか」の線引きに自信が持てず、我慢を選びやすいものです。だからこそ、内容のある指摘は受け取り、人格否定・無視・見せしめは「指導ではない」と切り分ける物差しを、新人のうちから持っておいてほしいのです。

人間関係のしんどさは、職員同士だけではありません。利用者さんとの間で削られる新人もいます。うつ病による休職と復職を経験した筆者(執筆時28歳)が、新人時代に利用者さんから軽くあしらわれた体験を振り返ったnoteには、こうあります。

「何を言っても軽くあしらわれる。ベテランには従うのに、自分の言葉は聞いてもらえない。」

「でも、心のどこかで確実に削られていく。」

筆者はこの記事を、「舐められて当たり前の世界なんて、どこにもありません。」という言葉で結んでいます(出典: note「新人介護士、利用者になめられて心が折れかけた話」・2026年2月)。

「新人だから仕方ない」と飲み込み続けた消耗は、目に見えないまま積もります。頭で「相手は認知症の症状かもしれない」「新人を試しているだけかもしれない」と理解できても、削られるものは削られる。だからせめて、その削られを口に出せる相手を、職場の中か外に一人決めておいてください。

離職のデータも添えておきます。介護労働安定センターの令和6年度調査では、訪問介護員と介護職員を合わせた**29歳以下の離職率は18.7%で、年齢階層別で最も高い結果でした。ただしこれは年齢による集計であり、「新人」や「勤続1年未満」だけの割合ではなく、理由までこの数字から決めつけることはできません。一方で、同調査の2職種を合わせた離職率全体は12.4%**と2年連続で低下しています(調査の定義による数字で、対象の異なる全産業の数字と直接の優劣比較はしません)。この2つの数字が示すのは、「介護は誰も続かない」でも「辞めるのは根性なし」でもなく、若い世代・入職まもない時期にこそ支えが必要だという、それだけのことです。あなた一人の進退を決める数字ではありません。

技術のつらさは工夫で軽くなる——今日からできる5つのこと

ここからは、3分類のうち「技術のつらさ」への対処です。大きなことをしなくて大丈夫。今日から試せる5つの工夫を紹介します。全部を一度にやろうとせず、できそうなものから一つ始めてみてください。

1. 自分だけの「メモ」を作る

技術のつらさの多くは「覚えられない」ことから来ています。ならば、覚える負担そのものを外に出してしまいましょう。ポケットに入る自分専用のメモ帳を一冊用意して、次の3つを書きためてみてください。

  • 教わった手順は、その場で書きとめる。あとで自分の言葉に直す。
  • 利用者さんごとの注意点(食形態・トロミの濃さ・移乗のやり方・コールの傾向)を一人ずつまとめる。
  • 注意されたことは、「次はこうする」という形に置きかえて書く。

人の記憶はあいまいで、抜け落ちるのが当たり前です。書いておけば申し送りの前に見返せますし、「同じことを何度も聞いてしまう」後ろめたさも減ります。ベテランの職員でも自分用のメモを持っている人はたくさんいます。メモは「できない人」の道具ではなく、「できる人」がやっていることです。

2. 「今日、これだけは」と的をしぼる

覚えることが多すぎると、「全部やらなきゃ」と焦って、かえって何も手につかなくなります。そんなときは、「今日はこれだけ覚えられれば十分」と一つか二つに的をしぼるのがおすすめです。

たとえば「今日は、この方の移乗を最初から最後まで一人でやりきる」。それができたらその日は合格。ほかのことは明日以降でかまいません。一度に十のことを覚えようとすると記憶はあふれますが、一日一つずつなら確実に積み上がります。焦りはミスと自己嫌悪を呼びこみます。小さなゴールを毎日一つずつ——遠回りに見えて、これがいちばんの近道です。

3. 「完璧」を、少しだけあきらめる

新人のうちは「ちゃんとやらなきゃ」「間違えちゃいけない」と自分に高いハードルを課しがちです。その責任感は大切なものです。でも、ハードルが高すぎると、少しのミスで必要以上に落ち込みます。

覚えておいてほしいのは、新人に完璧を求めている人は、あなた以外にはほとんどいないということです。まわりの職員も上司も、「新人はできなくて当たり前。少しずつ覚えてくれればいい」と考えている人が大半です。あなたが自分に課しているハードルは、たいてい、まわりが求めているものよりずっと高い。「100点でなくていい。今日は60点でも、昨日より一つできることが増えたなら十分」——完璧主義を少しゆるめることは手抜きではなく、長く続けるための技術です。

4. 分からないことは、その場で聞く

「こんなこと聞いていいのかな」「忙しそうで話しかけづらい」——新人のうちは、質問すること自体に勇気がいります。でも、分からないまま自己流で介助を進めると、事故やヒヤリハットにつながりかねません。介護は利用者さんの安全に直結する仕事です。だからこそ、その場で聞くのは恥ではなく、責任ある行動です。

聞き方のコツは、「〇〇さんの移乗の手順を、もう一度確認させてください」と具体的にたずねること。教わったらメモに書き、同じ質問を三度しなくて済むようにすること。それだけで聞くハードルはぐっと下がります。先ほど紹介した1年目の男性も、同じnoteの中で、乗り越え方として経験を重ねて慣れることに加え、事前の準備と、先輩のやり方を見て相談することを挙げています。聞くことと真似ることは、新人にだけ許された最強の学び方です。

もし、質問しづらい空気があったり、聞いても冷たくあしらわれたりが続くなら、それはあなたの聞き方の問題ではなく、教える体制の問題です。その場合は、この後の仕分け表の「人間関係」の行を見てください。

5. 人と比べず、「先週の自分」と比べる

同期はもう夜勤に入っているのに、後輩のほうが物覚えがいいのに、自分だけ遅れている——そんなふうに感じて落ち込む人は本当に多いのです。でも、覚える速さは前職の経験・任される業務・教わる環境で変わります。あなたの価値とは関係ありません。

比べる相手を変えてみてください。同期でも後輩でもなく、**「先週の自分」「一か月前の自分」**です。先週はできなかった食介の見守りポイントが今週は分かるようになった、それは立派な成長です。介護は正解を早く出す競争ではなく、目の前の人に合わせて長く続けていく仕事。半年後、1年後に落ち着いて働けていれば、スタートの速さはほとんど意味を持たなくなります。

「いつ慣れる?」——めやすと個人差、そして慣れで解決しないもの

新人のあなたがいちばん知りたいのは、きっとここでしょう。「このつらさは、いつまで続くの?」——正直にお伝えすると、「何か月です」と言い切れる答えはありません。でも、めやすはあります。

多くの人が、次のように感じているようです。**業務の基本的な流れに慣れて、指示されたことを一人でこなせるようになるまでが数か月ほど。落ち着いて、自分のペースで周りも見ながら動けるようになるまでが、半年から1年ほど。**ある日を境に急に慣れるのではなく、気づいたら「あれ、前より楽になっている」と感じる、ゆるやかな変化です。

先ほどの1年目の男性も、排泄介助のイレギュラー対応について「何度も失敗を繰り返してきました」と書いたうえで、経験を重ねて少しずつ慣れていく過程を記録しています。**慣れは根性ではなく、回数です。**失敗の回数は、あなたが場数を踏んでいる証拠でもあります。

そして、この期間には大きな個人差があります。慣れるまでの時間を左右するのは、主に次の3つです。

  • 施設のタイプ:特養や老健は介助量や医療的ケアが多く、覚えることも多い。GHは認知症ケア、デイはレクや送迎と、職場で中身が違う。
  • 教える体制:指導担当が決まっているか、独り立ちの条件が明確かで、慣れる速さは大きく変わる。
  • 一度に任される量:人手不足で早々に夜勤やフロア任せが始まる職場では、負担が跳ね上がる。

つまり、「半年たっても慣れない」としても、あなたが遅いのではなく、職場の環境や仕事の性質によるところが大きいのです。進み具合は「できることが増えているか」で測ってください。増えているなら、あなたはちゃんと前へ進んでいます。

ただし、一つだけ注意があります。慣れが解決してくれるのは、主に技術のつらさだけです。人間関係の削られや、心身の不調まで「慣れるまで我慢」でくくらないでください。その仕分けを、次の章で渡します。介護の適性そのものが気になる方は、介護に向いている人・向いていない人も参考にしてください。

持ち帰ってほしい仕分け表——「いつまで様子を見るか」の目安

この記事でいちばん持ち帰ってほしいのが、この仕分け表です。「全部しんどい」をこの3つに振り分けて、それぞれの「様子を見る期限」と「期限を超えたときの動き方」を決めてしまいましょう。

つらさの種類中身の例様子を見る目安目安を超えたら
技術覚えられない・介助が遅い・失敗する半年〜1年(できることが増えていれば継続)教え方・任され方を指導担当や上司に相談。教わる機会がないまま放置されているなら、職場の体制を疑う
人間関係きつい言い方・質問しづらい・利用者さんにあしらわれる2〜3か月(メモ・質問・あいさつを続けて変化を見る)無視・人格否定・見せしめが続くなら構造の問題。上司の上や法人の窓口、労働局の総合労働相談コーナーへ。異動・転職も選択肢
心身のSOS眠れない・食べられない・涙が出る・動悸2週間まで様子見をやめる。休む・受診する・職場の外に相談する

大原則はこうです。**「新人のうちは我慢が当然」ではありません。**我慢に意味があるように見えるのは技術の行だけで、それも実態は我慢ではなく「回数を重ねている」だけです。人間関係の行に我慢を当てはめると見極めが遅れ、心身のSOSの行に当てはめると危険です。

「介護そのもの」か「今の職場」かを切り分ける

仕分け表を使ってもつらさが消えないとき、辞めることを考えるのは正当な選択です。逃げでも甘えでもありません。ただ、その前に一つだけ切り分けてほしいことがあります。「介護そのもの」がつらいのか、「今の職場や教え方」がつらいのかです。

介護の仕事内容や利用者さんと関わること自体がどうしても合わないなら、別の道を考えるのも一つです。でも、「介護は続けたいけれど、今の職場の空気や教え方、人手不足がつらい」なら、辞めるべきは介護ではなく職場のほうかもしれません。施設のタイプが変われば、覚えることの量も教える体制も負担の質も大きく変わります。新人期のつらさが「この職場がたまたま新人を育てるのが苦手だった」だけ、ということはめずらしくありません。仕事内容そのものへの「つらい」は介護の仕事がきつい・つらいと感じる理由と考え方で、「辞める」まで含めた次の一歩は介護職を辞めたいと思ったら(辞めていい人・次の一歩)で、さらにくわしく整理しています。

心と体にSOSが出たら、慣れを待たない

仕分け表の3行目だけは、期限がきわめて短いことに気づいたでしょうか。工夫や職場のこと以前に、いちばん大切なのはあなたの心と体です。次のような状態が続いたら、それは「がんばりどき」ではなく「休みどき・頼りどき」のサインです。

  • 夜なかなか眠れない。あるいは朝どうしても起きられない
  • 食欲がわかない。または食べすぎてしまう
  • 職場のことを考えると、涙が出る・動悸がする
  • 好きだったことが楽しめなくなった
  • 「消えてしまいたい」という考えがふとよぎる

一つでも当てはまり、それが2週間ほど続いているなら、我慢を続けないでください。特に「消えてしまいたい」がよぎるときは、今すぐ誰かに頼ってほしいサインです。無料で頼れる窓口があります。

  • こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)……お住まいの地域の公的な心の相談窓口につながる、厚生労働省案内の番号です。
  • よりそいホットライン(0120-279-338)……24時間、通話料無料で、どんな悩みでも相談できます。
  • いのちの電話……つらい気持ちをそのまま聞いてくれる電話相談です。「いのちの電話」で検索すると地域の窓口が分かります。
  • 心療内科・精神科などの医療機関……眠れない・食べられない不調が続くときは、医療の力を借りることも大切な選択です。

統一ダイヤルの受付の曜日・時間は地域によって異なります。「こんなことで相談していいのかな」とためらう必要はありません。相談は弱さの証明ではなく、自分を守るための行動です。あなたの心と体は、どんな仕事よりも大切です。

慣れの先にいる、半年後・1年後のあなたへ

長くなりました。最後に、この記事の要点を振り返ります。

新人期がつらいのは、あなたが特別に弱いからでも、我慢が足りないからでもありません。覚えることが押し寄せ、緊張が続き、注意が増える——構造的にしんどい時期です。調査の数字も当事者の声も、「しんどいのは自分だけ」という思い込みのほうが間違いだと教えてくれます。

そのうえで、つらさは仕分けて扱ってください。**技術のつらさは、メモ・的しぼり・完璧をゆるめる・その場で聞く・先週の自分と比べる、の5つの工夫と回数で軽くなっていきます。**目安は半年から1年。人間関係のつらさは、2〜3か月様子を見て兆しがなければ、あなたではなく構造の問題として、相談・異動・転職を検討していい。心身のSOSだけは2週間が期限で、慣れを待たずに休む・受診する。この3行の仕分け表だけでも、覚えて帰ってください。

次の一歩は、小さくて構いません。今日教わったことを一つだけメモに書く。削られを話せる相手を一人決める。仕分け表の自分の行に印をつける。しんどさが2週間続いているなら、窓口に電話をかけてみる。どれか一つで十分です。

1年目のあなたに完璧は求められていません。何度も失敗しながら慣れていった先輩たちと同じ道を、あなたはいま歩いている途中です。どうか、自分を責めることにだけは、慣れないでください。

よくある質問

介護の新人は、いつ慣れますか?

めやすは「業務の基本的な流れに慣れるまで数か月、自分のペースで周りを見ながら動けるようになるまで半年から1年ほど」と感じる人が多いようです。ただし、特養・老健・グループホーム・デイなど施設のタイプ、教える体制、一度に任される仕事の量によって大きく変わります。半年たっても「まだ慣れない」と感じるのは遅いわけではなく、できることが増えているかどうかで測るのが現実的です。なお、慣れで解決するのは主に技術面のつらさです。人間関係のつらさや、眠れない・食べられないといった心身の不調は「慣れるまで待つ」対象ではありません。

覚えられないのは、介護に向いていないからでしょうか?

いいえ、向き不向きではなく「量」の問題です。新人期は、利用者さん一人ひとりの体の状態と注意点、移乗や排泄介助の手順、記録の書き方、申し送りの聞き方、職場ごとのローカルルールが一度に押し寄せます。短期間で全部を覚えられないのは自然なことです。自分専用のメモに利用者さんごとの注意点を書きためる、教わったことはその場で書く、といった工夫で記憶の負担は大きく減らせます。ベテランでも自分用のメモを持っている人は多く、メモは「できない人」の道具ではなく「できる人」の道具です。

先輩に怒られてばかりです。新人のうちは我慢するしかありませんか?

いいえ、「新人だから我慢が当然」ではありません。まず「何を直すか(内容)」と「どんな言い方をされたか」を切り離し、内容だけをメモで受け取るのがコツです。一方で、人格を否定する言葉や無視が続くなら、それは指導ではなく職場の問題です。株式会社マイナビの調査、マイナビ介護職『介護職白書 2024年度版』(調査時期は2024年11月7日〜12月3日)では、ハラスメントを経験した(受けた・見聞きした)人は67.7%にのぼり、相手の1位は上司(63.2%)でした。転職サービス登録者への調査という偏りはありますが、少なくともあなただけの特殊な悩みではありません。上司のさらに上、法人の相談窓口、労働局の総合労働相談コーナーなど、職場の外にも相談先があります。

新人のうちに辞めても、いいのでしょうか?

はい、辞めることは正当な選択で、「まだ新人なのに」と自分を責める必要はありません。ただ、決める前に「介護そのもの」がつらいのか「今の職場」がつらいのかを切り分けてみてください。施設のタイプや教える体制によって新人期の負担は大きく違うため、職場を変えるだけで楽になることも珍しくありません。逆に、眠れない・食べられないなどの心身の不調が2週間以上続いているなら、切り分けよりも先に、休むこと・受診することを優先してください。

同期や後輩と比べて、自分だけ遅い気がします。

覚える速さは、前職の経験・任される業務・教わる環境で変わるもので、あなたの価値とは関係ありません。介護は、正解を早く出す競争ではなく、目の前の人に合わせて長く続けていく仕事です。半年後・1年後に落ち着いて働けていれば、スタートの速さはほとんど意味を持たなくなります。比べる相手は、同期ではなく「先週の自分」で十分です。先週はできなかった移乗が今週は一人でできたなら、それは確かな前進です。

未経験で介護を始めました。周りは経験者ばかりで、ついていけません。

未経験からの入職は、介護ではむしろ多数派です。工場・接客・美容・IT・書店員など、まったく違う世界から入ってくる人が多くを占めます。最初に覚えることが一度に押し寄せるのは、「経験がない=向いていない」からではなく、「まだ知らないだけ」だからです。国も2024年4月から、無資格で介護に入る人に認知症介護基礎研修の受講を求めていますが、新規採用者にはおおむね1年の猶予があり、eラーニングで学べます。つまり制度そのものが「入職した時点では知らない前提」でできています。知らないことを一つずつ知っていけば、経験者との差は必ず縮まります。焦らなくて大丈夫です。

出典


本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、正確性・最新性を保証するものではありません。 制度や施設の状況は変わることがあります。実際のご判断の前には、各施設・公式情報や公的機関でご確認ください。

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