悩み・退職

介護に向いている人・向いてない人の特徴|適性より「続けられる条件」で考える

公開: 2026年7月19日 / 編集: 介護のしるべ編集部

先輩に「もう少し早くできない?」と言われた、その一言が、帰り道になっても胸に刺さったまま抜けない。同期はもう一人で任されているのに、自分はまだ手取り足取り。利用者にきつい言葉を向けられた日には、更衣室で少しだけ、泣きたくなる。——そんな夜に、「自分は介護に向いていないのかもしれない」という思いが、静かに忍び込んでくる。

もし今、その言葉が頭から離れないのだとしたら、先に一つだけお伝えさせてください。「向いていない」という感覚は、あなたの適性を正確に映した鏡ではありません。疲れとプレッシャーで曇った鏡が見せている像です。 実際、公益財団法人介護労働安定センターの令和6年度調査では、介護関係の仕事を辞めた人のうち「自分に向かない仕事だったため」を理由に挙げた人は、わずか6.3%でした。辞めた人たちでさえ、理由の中心は人間関係や職場の運営——つまり環境のほうにあったのです(数字の詳細は本文で示します)。この記事では、「向いている人の特徴」を押し付けにならない形で整理し、「向いていない」と感じる原因の正体をデータでほどき、性格診断の代わりに使える「続けられる条件」のチェック観点と、辞める前に試せる3つの選択肢をお渡しします。読み終わるころには、「向いていない」という言葉に、今より振り回されなくなっているはずです。

まず結論:「向いていない」と悩んだら、先に知っておきたい3つのこと

最初に、この記事の結論を3つにまとめてお伝えします。

第一に、「向いていないという感覚」と「実際の適性」は、別物です。 公益財団法人介護労働安定センターの「令和6年度 介護労働実態調査」(労働者調査・2025年7月公表)では、直前の介護関係の仕事を辞めた6,508人(複数回答)のうち、「自分に向かない仕事だったため」を辞めた理由に挙げた人は6.3%でした。実際に辞めるところまで至った人たちでさえ、この数字です。「向いていない気がする」の正体は、多くの場合、適性ではなく環境にあります。

第二に、向き不向きは、環境で大きく変わります。 同じ人でも、施設のタイプ・職場・働き方が変われば、「向いていない」が「向いている」に変わることは実際にあります。適性は、性格だけで決まるものではありません。

第三に、「向いていない=辞めるべき」という二択にしないでください。 「合わない」と思いながら7年続いている人も、「向いていない」と思っていた仕事に居場所ができた人も、辞めて生き生きしている人も、実在します(本文で、原典リンク付きの実際の声を紹介します)。この記事が渡したいのは白黒の判定ではなく、「続けられる条件」を見きわめる物差しです。

介護に向いている人の特徴(あくまで入り口の目安)

「向いている人ってどんな人だろう」と気になりますよね。よく挙げられる特徴を紹介しますが、読む前に一つだけ前置きを。これらは「全部そなえていないと失格」という試験項目ではなく、多くは働きながら身についていく力です。 「こういう強みが活きやすいんだな」くらいの軽い気持ちで読んでください。

人の小さな変化に気づける。 「今日は少し元気がないな」「歩き方がいつもと違うな」——そんなサインに気づける人は、現場で頼りにされます。ただしこれは、経験を積むほど磨かれていく観察の技術でもあります。

相手のペースを大切にできる。 てきぱき進めることより、利用者一人ひとりのペースに合わせて待てること。せっかちな自覚がある人でも、意識すれば身についていきます。

チームで動ける。 介護は一人で完結する仕事ではありません。困ったときに「助けて」と言えること、仲間の忙しさに気づいて手を貸せることは、介助の技術と同じくらいの価値があります。

気持ちの切り替えができる。 つらい出来事を引きずりすぎずに立て直せること。これは生まれつきの性格というより、自分なりの休み方・切り替え方を持っているかどうかの問題です。

人と関わることが、嫌いではない。 話し上手である必要はありません。聞き上手だったり、そばにいるだけで安心感を与えられたりする人のほうが向いている場面も多くあります。

では、働いている本人たちは、この仕事のどこに手応えを感じているのでしょうか。株式会社マイナビの調査、マイナビ介護職『介護職白書 2024年度版』(調査時期: 2024年11月7日〜12月3日)では、**仕事にやりがいを感じている介護職は63.5%、やりがいを感じる瞬間の1位は「利用者に感謝されたとき」で73.2%**でした。この白書は転職サービスの登録会員976人が回答したもので、「転職を意識する層」寄りのサンプルである点は差し引いて読む必要がありますが、手応えの中心が「人との関わり」にあることは読み取れます。

ただし、ここで一つ、実際にあった例を紹介させてください。上の特徴リストで言えば、真っ先に「向いていない」ことになりそうな——人間嫌いを自認していたケアマネジャーの方が、こう書いています。

「人間嫌いだった自分からすると、まるで『別の人生』のような毎日です。」

(介護からの気づき【第24回】ケアマネに向いていない私が、なぜ?・note・2026年2月)

この方は身体障害の当事者でもあり、人への不信を抱えたままこの仕事に就きました。それでも、利用者からの「あなたがいてくれて助かるよ」という一言に何度も救われ、気づけば「これが自分の居場所だったのかもしれない」と思える瞬間が訪れた、とつづっています。特徴リストは入り口の目安にはなっても、あなたの可能性を判定する装置にはなりません。 リストに当てはまらない人にも、居場所はできるのです。

「向いていない」と感じやすいポイントと、その本当の正体

一方で、「自分はここがダメだから向いていないんだ」と感じやすいポイントもあります。ただ、その原因の多くは、あなたの資質ではなく、環境や思い込みのほうにあります。一つずつ見ていきましょう。

「不器用で、要領が悪い」——それは、慣れの問題

「他の人より仕事が遅い」「手際が悪い」と落ち込んでいませんか。今テキパキ動いている先輩も、最初はみんな不器用でした。介護の技術は、時間をかけて体が覚えていくものです。

そして、現場で本当に大切なのは、スピードよりていねいさです。手が早くても利用者が不安になる関わり方をする人より、少し時間がかかっても相手が安心できる関わりができる人のほうが、長い目で見れば信頼されます。不器用さは、「向いていない」の理由にはなりません。

「人間関係がうまくいかない」——辞めた理由の最多も、適性ではなくここ

「職場になじめない」「先輩とうまくいかない」——これを自分の適性の問題だと思い込んでいませんか。データは逆のことを示しています。

介護労働安定センターの「令和6年度 介護労働実態調査」(労働者調査・2025年7月公表)では、直前の介護関係の仕事を辞めた理由(6,508人・複数回答)の最多が**「職場の人間関係に問題があったため」で24.7%**。しかもその具体的な内容の1位は「上司や先輩からの指導や言動がきつかったり、パワーハラスメントがあった」(49.1%)でした。つまり「なじめない」「うまくいかない」の背景には、あなたの適性以前に、職場の側の問題が横たわっているケースが相当数あるということです。人間関係のつらさと、介護という仕事への適性は、分けて考えてください。この点は、介護の職場の人間関係に悩んだときの考え方でくわしくお伝えしています。

「体力がもたない・夜勤がつらい」——働く場所と形の問題

「体がついていかない」「夜勤明けがしんどい」——これも「向いていない」と感じる大きな原因です。この「体のきつさ」を、当事者は飾らずこう書いています。高卒で介護の現場に入り、7年目を迎えた正社員の方の年始の独白です。

「高卒で働き始めて割とすぐにこの仕事合わないと思ってたけど」

「あと介護って肉体労働なのよね。身体介助が辛い。」

(高卒で介護職に勤めて7年たとうとしている・はてなブログ・2021年1月)

注目してほしいのは、「割とすぐに合わないと思ってた」その人が、それでも7年目を迎えているという事実です。同じ記事には、利用者から直接感謝の言葉をかけられて自分の存在意義を確かめられる、という趣旨の一節もあります。「合わない気がする」と「続いている」は、一人の人の中に普通に同居するのです。

そして、体力の負担そのものは、根性ではなく働く場所と形で変えられます。身体介助(食事・入浴・排せつなど体に直接ふれる介助)が中心の職場もあれば、見守りや生活支援が中心で負担が軽めの職場もある。夜勤が必須の職場もあれば、日勤中心で働ける職場もある。くわしくは施設タイプ別の働き方の違いと、介護の夜勤がつらいと感じたときの考え方をご覧ください。

「利用者とうまく関われない」——虚しさは、真剣さの裏返し

認知症の人への対応が難しい、良かれと思ってやったことが伝わらない——。この種のつらさは、経験者がはっきり言葉にしています。認知症の父親の介護をきっかけに介護の仕事に就き、特養で4年(介護職として7年)働いた主婦の方の振り返りです。

「こちらが良かれと思ってやったことでも、それを受け止めてもらえない、この人たちのためにやっているのに本当に役に立てているのかわからないという虚しさがありました」

(介護職は精神的に辛い?特別養護老人ホームでの仕事内容について・はてなブログ・2019年10月)

介護職は「とても大変でかつ、精神的な強さが必要なお仕事」だと率直に書くこの方は、同じ記事の中で、利用者がいつもより元気に過ごす姿や笑顔、感謝の言葉にやりがいを感じて「これからも続けよう」という気持ちになれた、とも書いています。虚しさとやりがいが、同じ人の同じ文章の中に並んでいる——これが現場の実感の、実際の形です。

虚しさを感じるのは、あなたが冷たいからでも、向いていないからでもなく、真剣に向き合っている証拠です。そして、認知症ケアの「どう関わればいいか」は、学べば身につく専門技術です。強い言葉や行動の裏にはたいてい理由(不安・混乱・体調の変化など)があり、その背景を知る研修と経験で、関わり方は変わっていきます。最初からうまくできる人は、いません。

「適性診断で向いていないと出た」——真に受けすぎない

「介護 向いてる 診断」のようなチェックで「向いていない」と出て、へこんでいませんか。こうした診断は、一般的な傾向を示すものにすぎず、あなたという一人の人間の価値や、これからの伸びしろまで測れるものではありません。

介護の適性は、性格だけでなく、働く施設のタイプ・職場の雰囲気・経験で大きく変わります。同じ人でも、合わない職場では「向いていない」と出て、合う職場では「向いている」と感じる。それが現実です。診断結果は「今のやり方や場所が合っていないのかもしれない」というヒントくらいに受け止めて、この記事の後半で紹介する「続けられる条件」のチェックに置き換えてみてください。

大事な考え方:順番が、逆になっている

ここまでの共通点に、気づいたでしょうか。「向いていない」と感じる原因の多くは、あなたの性格や能力ではなく、環境——人手不足・夜勤・人間関係・施設タイプとの相性にあります。

現場の人手不足は、データではっきり確認できます。介護労働安定センターの「令和6年度 介護労働実態調査」(事業所調査・2025年7月公表)では、**従業員が不足していると答えた事業所は全体の65.2%。介護職員に限れば69.1%、訪問介護員では83.4%**にのぼります。あなたの職場だけが特別に苦しいのではなく、業界全体が余裕を欠いた状態で回っているのです。

人が足りないと、一人あたりの担当が増え、休憩も取りにくくなります。余裕をなくせば、ミスも増える。すると「やっぱり自分は向いていない」と思い込んでしまう——。でも、ここでよく考えてみてください。あなたは、向いていないから追いつめられているのでしょうか。それとも、追いつめられているから、向いていないと感じているのでしょうか。

順番が、逆なのです。同じ調査で、実際に介護関係の仕事を辞めた人の理由(労働者調査・6,508人・複数回答)は、「職場の人間関係に問題があったため」24.7%、「他に良い仕事・職場があったため」18.5%、「勤務先の事業理念や運営のあり方に不満があったため」17.6%と環境の要因が上位に並び、**「自分に向かない仕事だったため」は6.3%**にとどまりました。辞めるという結論に至った人たちですら、理由の中心は「自分」ではなく「環境」だったということです。だから、「向いていないかも」と感じたら、まず疑うべきはあなたの性格ではなく、環境のほうです。そして環境は——特に施設のタイプと働き方は——変えることができます。

施設タイプによって、求められる資質は違う

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいことの一つです。「介護に向いている人」は、一種類ではありません。 施設のタイプによって、求められる資質も、活きる強みも、まるで違います。ある職場では「向いていない」と感じた人が、別のタイプの職場では水を得た魚のように働き出す——そんなことが、本当に起こります。

代表的な施設タイプごとの傾向を並べてみましょう。この整理は、各施設の制度上の役割(特養は常時介護が必要な人の生活の場、老健は在宅復帰を目指すリハビリの場、など)から導いたもので、くわしい働き方は各リンク先で確認できます。

施設のタイプ合いやすい人(施設の役割から見た傾向)
特別養護老人ホーム(特養)腰を据えて介護の専門性を高めたい人。チームでのケアや看取りに向き合いたい人
介護老人保健施設(老健)リハビリや医療的なケアに関心がある人。多職種のチームの中で介護を学びたい人
介護医療院医療的なケアに関心がある人。看護と連携した専門的な介護を学びたい人
介護付き有料老人ホーム接遇やサービスの質を大切にしたい人。身体介護のスキルを安定した環境で高めたい人
グループホーム認知症ケアを専門にしたい人。少人数でじっくり関わりたい人
サービス付き高齢者向け住宅(介護型)住まいに近い環境で、生活支援と介護の両方に関わりたい人

たとえば、「大人数をさばくのが苦手」な人でも、1ユニット9人以下のグループホームなら一人ひとりとじっくり向き合えます。「もっと技術を極めたい」人なら、身体介護から看取りまで一通り経験できる特養が合うかもしれません。「身体介護で体がきつい」なら見守り・生活支援が中心の職場のほうが負担は軽く、「医療にも興味がある」なら看護職と連携する老健や介護医療院で、その関心が強みに変わります。

つまり、**「あなたが向いていない」のではなく、「今いる施設タイプと、あなたの資質が、たまたま合っていないだけ」**かもしれない、ということです。まずは施設タイプ別の「働き方」を比べるページで、夜勤・身体の負担・向き不向きを並べて見てみてください。「こんなに違うんだ」と、きっと驚くはずです。

「向いていないかも」と感じたときの、3つの選択肢

「向いていないかも」と感じたとき、多くの人が「介護そのものを辞めるしかない」と思いつめてしまいます。その前に、一つ知っておいてほしい数字があります。株式会社マイナビの調査、マイナビ介護職『介護職白書 2024年度版』(調査時期: 2024年11月7日〜12月3日・転職を意識する層寄りのサンプル)では、「介護職として長く働き続けたい」と答えた人は34.8%にとどまり、「介護職に限らず、関心のある仕事をしてみたい」が42.5%で最多でした。迷いながら働いているのは、あなただけではないのです。迷いを抱えたままでかまいません。その上で、辞める前に試せる選択肢が3つあります。

1. 配置換え:同じ職場で、担当を変えてもらう

まず試せるのが、今の職場のなかで、担当するフロアや業務を変えてもらえないか相談することです。同じ施設でも、フロアが違えば、利用者の顔ぶれも一緒に働くメンバーも変わります。

「今のフロアの人間関係がつらい」「特定の業務が体力的にきつい」という悩みなら、配置が変わるだけでぐっと楽になることがあります。上司に「少し相談したいことがあって」と切り出し、何がつらいのかを具体的に伝えてみてください。辞めるより、ずっと小さな一歩です。

2. 施設タイプの変更:合うタイプの職場へ移る

配置換えで解決しないなら、施設タイプそのものを変えることを考えます。前の章で見たとおり、施設のタイプが変われば、求められる資質も負担のかたちも別物です。

身体介護が中心の職場が合わないなら、見守りや生活支援が中心の職場へ。大人数が苦手なら、少人数のグループホームへ。夜勤がつらいなら、日勤中心の職場へ。「今つらい理由」を解消できるタイプを選べば、次の場所で同じつらさを繰り返さずにすみます。これまでの経験も資格も、そのまま次の場所で活きます。

その「活きる」は、給与という形でも表れます。厚生労働省の「令和6年度 介護従事者処遇状況等調査結果」(常勤・月給の人・基本給と手当・一時金を含む定義)では、平均給与額は勤続10年以上と2年未満で月におよそ6万円、介護福祉士と無資格でも月におよそ6万円の差がありました(金額は施設タイプや地域で幅があります)。今の職場が合わなくても、あなたが積み上げてきた時間と資格は、次の場所へそのまま持っていけます。進め方は介護職の転職の進め方でくわしくお伝えしています。

3. 働き方の変更:無理のないかたちに調整する

3つ目は、働き方そのものの見直しです。フルタイムがつらいなら短時間勤務に、夜勤がつらいなら日勤のみに、正職員が重いならパートに——という調整です。

暮らしのステージ(結婚・子育て・家族の介護・自分の体調)が変われば、働き方を見直すのはごく自然なことです。介護には、デイサービス、訪問介護、夜勤専従など、負担のかたちが違う働き方が数多くあります。「せっかく続けてきたのに」と自分を縛らず、今の自分に合うかたちを選んでいいのです。

これら3つを試しても「介護そのものが合わない」と感じるなら、離れることも立派な選択です。福祉の現場で20年働き、独立して一人ケアマネ事業所を営む居宅ケアマネジャーの方は、「続く人・辞める人」を長く見てきた実感をこう書いています。

「福祉って本当に適性の影響が大きい世界だと思います」

「実際に辞めた人たちを見ると、みんな生き生きしてるんですよね」

(ケアマネのひとりごと ~続く人・辞める人・飛び出す人。~・note・2025年11月)

この方は、合わないなら「一度別の世界を見るのは全然アリ」だとも書いています。20年この世界で働き続けている人が、そう言うのです。離れることは「逃げ」ではなく、自分を守るための立て直しです。「辞める」という選択を整理したいときは、介護職を辞めたいと思ったときの考え方も参考にしてください。

「向いているか」ではなく、「続けられる条件」で考える

最後に、この記事から持ち帰ってほしい物差しを渡します。「向いている・向いていない」は、実は答えの出ない問いです。同じあなたが、ある職場では「向いていない」と言われ、別の職場では頼られる。だから、問いを取り替えましょう。性格を診断するのではなく、「続けられる条件」が揃っているかを点検するのです。条件は3つ。どれも「あなたが変わる」話ではなく、「変えられる」ものです。

条件1: 体力——負担が「回復できる範囲」に収まっているか。

  • 夜勤明けや連勤のあと、眠れば体が戻っているか
  • 腰・肩・睡眠に「休んでも戻らない」症状が出ていないか

ここが崩れているなら、それは根性の問題ではなく負荷の設定ミスです。身体介助の少ない施設タイプや、日勤中心の働き方に変える余地があります。

条件2: 職場——人員体制と人間関係に、最低限の安全があるか。

  • 休憩が取れる人員体制か。欠員が出たとき、補充の動きがあるか
  • 職場に、「困った」を言える相手が一人でもいるか

ここが崩れているなら、それは職場の問題です。配置換えか、職場を変えることで動きます。

条件3: 生活との両立——シフトと暮らしが噛み合っているか。

  • 夜勤やシフトが、今の家庭・体調・生活リズムと両立できているか
  • 勤務形態(日勤のみ・短時間など)の変更を相談できる職場か

ここが崩れているなら、働き方の調整で解けることが多い問題です。

この見方は、データとも符合します。前出の「令和6年度 介護労働実態調査」の結果の概要では、働いている人の満足度(満足の割合から不満の割合を引いたD.I.という指標)は、「仕事の内容」や「職場の人間関係」ではプラスなのに、「人員配置体制」「賃金水準」「休憩室などの付帯設備」ではマイナスでした。働く人を消耗させている中心は、介護という仕事そのものより「条件」のほうにある——という構造が、ここにも表れています。

そして、点検の結果がどうであれ、思い出してほしいことがあります。「割とすぐに合わないと思ってた」まま7年目を迎えた人も、人間嫌いを自認しながら居場所ができた人も、20年続けた上で「辞めた人はみんな生き生きしている」と書く人も、この記事で見てきたとおり実在します。今日の「向いていない」は、今日の条件が出した答えであって、あなたの最終判定ではありません。 ただし、3つの条件がすべて崩れていて、眠れない・食べられない・涙が止まらないといった症状が出ているなら、点検より先に休むこと、そして受診や身近な人への相談を優先してください。身近に話せる相手がいないときは、厚生労働省の「こころの耳」(働く人向けに5分でできるストレスセルフチェックやSNS・メール相談がまとまっています)や、「まもろうよ こころ」で案内されている電話窓口(よりそいホットライン 0120-279-338 など・24時間・通話料無料)から始める手もあります。また、「向いていない」の中身が体力・人間関係・夜勤・待遇など何種類ものつらさで絡まっているときは、介護の仕事がきつい・つらいと感じる理由と、抱え込まないための考え方で、しんどさを種類ごとに分けて整理してみてください。

まとめ:曇った鏡を、拭き終えて

最後に、この記事でお伝えしたことをまとめます。

  • 「向いていない」という感覚と実際の適性は別物。辞めた人でも「向かない仕事だから」は6.3%
  • 「向いている人の特徴」の多くは働きながら身につく力。当てはまらない人にも居場所はできる
  • 感覚の正体はたいてい環境。人手不足の現場では、誰でも「向いていない」と感じやすくなる
  • 施設タイプと働き方が変われば、求められる資質も負担も変わる。合う場所は選び直せる
  • 判定は性格でなく「続けられる条件」(体力・職場・生活)で。崩れた条件から打ち手を選ぶ

冒頭で、「向いていない」という感覚は疲れとプレッシャーで曇った鏡が見せている像だ、とお伝えしました。ここまで読んでくださったあなたは、もうその鏡を拭き始めています。曇りが晴れたあとに映るのは、「向いていないダメな自分」ではなく、「続けられる条件を、まだ整えている途中の自分」のはずです。

だから、今日この記事を閉じたら、「向いているかどうか」を決める作業はいったんやめて、代わりに3つの条件のどれが崩れているかを一つだけ確かめてみてください。それから、施設タイプ別の働き方を眺めて、「ここなら今より少し楽に働けそうかも」と思える場所を一つ見つけてみる。その一つが、次にあなたが立つ場所への入り口になります。あなたを映す鏡は、一枚だけではありません。

よくある質問

介護に向いていないと感じます。辞めたほうがいいでしょうか?

「向いていない」と感じることと、実際に介護が合わないことは別問題です。公益財団法人介護労働安定センターの「令和6年度 介護労働実態調査」(2025年7月公表)では、直前の介護関係の仕事を辞めた人(複数回答)のうち「自分に向かない仕事だったため」を理由に挙げたのは6.3%で、最多は「職場の人間関係に問題があったため」の24.7%でした。まず「介護そのものが合わない」のか「今の職場・働き方が合わない」のかを分けて考え、配置換え・施設タイプの変更・働き方の調整という選択肢から検討してみてください。心や体に症状が出ている場合は、判断より先に休むこと・受診を優先してください。

介護に向いている人には、どんな特徴がありますか?

よく挙げられるのは、人の小さな変化に気づける、相手のペースに合わせられる、チームで協力できる、気持ちの切り替えができる、といった点です。ただし、これらの多くは働きながら身につく力であり、「最初から全部そなえていないと失格」というものではありません。実際に、人間嫌いを自認していた人がケアマネジャーとして居場所を見つけた実例もあります。特徴に当てはまらないことは、「向いていない」ことの証明にはなりません。

「介護 向いてる 診断」のようなチェックで向いていないと出ました。真に受けるべきですか?

参考程度にとどめて、真に受けすぎないでください。適性診断は一般的な傾向を示すもので、あなたの伸びしろや、環境との相性までは測れません。介護の「向き不向き」は性格よりも、体力(負担が回復できる範囲か)・職場(人員体制と人間関係)・生活との両立(シフトと暮らしの噛み合い)という「続けられる条件」に左右されます。診断の結果は「今の場所ややり方が合っていないのかもしれない」というヒントくらいに受け止め、どの条件が崩れているかを確かめるほうが実用的です。

不器用で、要領も悪いです。それでも介護を続けられますか?

続けられます。介護の現場で本当に信頼されるのは、手の早さよりも、利用者が安心できるていねいな関わりです。手が早くても相手を不安にさせる介助より、少し時間がかかっても安心して身を任せられる介助のほうが、長い目で見れば評価されます。技術や段取りは経験を重ねれば自然と補われていくものなので、今できないことを責めるより、少しずつ慣れていける環境を選ぶことのほうが大切です。

向いていないと感じたら、まず何をすればいいですか?

まず「続けられる条件」のどれが崩れているかを確かめてください。条件は3つ——体力(負担が眠れば回復する範囲か)、職場(休憩が取れる人員体制か・相談できる相手がいるか)、生活との両立(シフトが家庭や体調と噛み合っているか)です。体力が崩れているなら身体介助の少ない施設タイプや日勤中心への変更、職場が原因なら配置換えや職場の変更、生活との両立が問題なら勤務形態の調整、というように、崩れた条件によって打ち手が変わります。いきなり「介護を辞めるかどうか」の二択にしないことが重要です。

介護職を続けるか迷うのは、普通のことですか?

迷いながら働いている人は少なくありません。株式会社マイナビの調査、マイナビ介護職『介護職白書 2024年度版』(調査時期は2024年11月7日〜12月3日)では、「介護職として長く働き続けたい」と答えた人は34.8%にとどまり、「介護職に限らず関心のある仕事をしてみたい」が42.5%で最多でした。転職サービスの登録会員976人が回答した調査のため、転職を意識する層寄りのサンプルではありますが、続けるか迷うこと自体は特別なことではないと言えます。迷いを前提に、配置・施設タイプ・働き方など「変えられる条件」から見直すのがおすすめです。

出典


本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、正確性・最新性を保証するものではありません。 制度や施設の状況は変わることがあります。実際のご判断の前には、各施設・公式情報や公的機関でご確認ください。

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