施設選び

急いで介護施設を探すには|退院期限が迫ったときの動き方と相談先

公開: 2026年7月28日 / 編集: 介護のしるべ編集部

病院の先生や相談員から「退院の見通しが立ちました。それまでに次の行き先を決めておいてください」と告げられて、頭が真っ白になっていないでしょうか。仕事も家のこともある中で、急に「施設を探せ」と言われても、どこから手をつければいいのか分からない。ネットで調べても種類が多すぎて、どれが親に合うのかも、すぐ入れるのかも見えてこない。退院の日だけが近づいてくる——そんな焦りの中でこのページを開いてくださったのだと思います。

まず、深呼吸を一つ。今の状況は、決してあなただけが陥っているものではありません。病院を退院するタイミングで介護施設を探すご家族はとても多く、病院にも地域にも、そのための仕組みと相談相手がちゃんと用意されています。一人で抱え込んで探し回る必要はないのです。この記事は、限られた時間の中で無駄なく動くための順番を、あなたの代わりに整理したものです。

時間がないときにやることは、たった三つ

細かい話に入る前に、急ぐときの動き方の芯だけを先にお伝えします。焦っているときほど、あれもこれもと手を広げず、効くところに力を集めることが大切だからです。

一つ目は、入院している病院の相談室に、今すぐ相談すること。ここは施設探しの一番の味方で、後でくわしく説明します。

二つ目は、「比較的すぐ入れる種類」に絞って探すこと。介護施設と一口に言っても種類はたくさんありますが、急ぎのときに現実的なのは、介護老人保健施設(老健)・介護付き有料老人ホーム・ショートステイ(短期入所)の三つが中心です。ここも後で一つずつ説明します。

三つ目は、気になった施設に、同時に、並行して問い合わせること。一つの施設の返事を待ってから次、という進め方だと、時間がいくらあっても足りません。複数に同時に声をかけておき、条件が合った所から詰めていく。これが、限られた時間で決めるコツです。

この三つを頭の隅に置きながら、ここからは一つずつ、具体的にどう動けばいいのかを見ていきます。

病院の「相談室」は、探し始める前に必ず立ち寄る場所

急いで施設を探すとき、最初に頼ってほしいのが、入院している病院にある相談室です。病院によって「地域連携室」「患者相談窓口」「医療福祉相談室」など呼び名はさまざまですが、そこにいるのが医療ソーシャルワーカーという専門職です。

医療ソーシャルワーカー(MSW)とは、患者さんやご家族が、治療のあとの生活で困らないように手助けをする、病院の相談員のことです。退院したあとにどこで、どう暮らすかを一緒に考えるのが仕事の中心で、介護施設への橋渡しはまさにその中心的な役割の一つです。

なぜ、まずここなのか。理由は三つあります。

一つは、あなたの親の体の状態を、いちばん正確に把握しているのが病院だからです。今どれくらいの介護が必要で、医療の面でどんな配慮がいるのか。この情報がないと、施設側も受け入れの判断ができません。相談室は、その情報を施設に伝える段取りまで担ってくれます。

二つ目は、地域の施設事情にくわしいからです。相談室は日々、地域の施設と退院のやり取りをしています。「この辺りで、今こういう状態の人を受け入れられそうな所」の肌感覚を持っています。ゼロから自分でネット検索するより、ずっと早く候補にたどり着けます。

三つ目は、退院支援そのものが病院の役割だからです。病院は、行き先が決まらないまま患者さんを放り出すことはできません。だから「退院までに間に合わないかもしれない」という不安は、遠慮なく相談室にぶつけて大丈夫です。それは相談室が受け止めるべき相談であって、あなたが一人で解決しなければならない問題ではありません。

相談室に行くときは、身構えなくて大丈夫です。「退院までに施設を探すよう言われたが、どう動けばいいか分からない」——この一言で十分です。あとは相談員が、必要なことを一つずつ聞きながら、道筋を一緒に立ててくれます。まだ相談室の場所が分からなければ、病棟の看護師さんに「退院後のことを相談したい」と伝えれば、つないでもらえます。

急ぐときに現実的な「入りやすい施設」を、種類ごとに

ここからは、急いでいるときに候補になりやすい施設を、種類ごとに整理します。介護施設は種類によって、入りやすさも、目的も、費用の仕組みも大きく違います。急ぎのときは、その違いを大づかみに知っておくだけで、探す範囲をぐっと絞れます。

介護老人保健施設(老健)——回転が早く、急ぎと相性がいい

**介護老人保健施設(老健/ろうけん)**は、病気やけがの後、家に帰るためのリハビリや療養をする施設です。医師や看護師、リハビリの専門職がいて、医療的なケアも受けやすいのが特徴です。

急ぎのときに老健が候補になりやすいのは、「家に帰ること」を前提とした施設なので、入れ替わりが比較的起きやすいからです。ずっと住み続ける所ではなく、状態が落ち着くまでの数か月を過ごす場所という位置づけなので、空きが出やすい傾向があります。病院を退院してすぐの人の受け皿として、もともと想定されている施設でもあります。

ただし、リハビリや在宅復帰を目的とする施設なので、入所の期間には区切りがあります。「ずっといられる終の住処(すみか)」ではない点は、あらかじめ知っておくと安心です。急ぎの受け皿として入り、そこで暮らしながら次の落ち着き先をゆっくり探す、という使い方ができます。

介護付き有料老人ホーム——空きがあれば、数日〜数週間で

介護付き有料老人ホームは、食事や入浴、排せつの介助といった介護サービスを、その施設のスタッフから受けられる民間の施設です。介護と生活の場が一体になっているので、長く住み続けることを前提にできます。

急ぎのときに候補になるのは、空室さえあれば、比較的短い期間で入居できることがあるからです。施設によっては、問い合わせから数日〜数週間で入居できる場合もあります。ただし、これはあくまで「空きがあれば」の話で、人気の施設や地域によっては空室待ちになることもあります。だからこそ、一か所に賭けず、複数に同時に問い合わせておくことが効いてきます。

費用は施設ごとに幅があり、入居のときにまとまったお金(入居一時金)が必要な所もあれば、月々の支払いだけで入れる所もあります。急いでいるときほど、この費用の仕組みは早めに確認しておきたいところです(費用の確認については後の章でくわしく触れます)。

ショートステイ(短期入所)——「つなぎ」として時間を稼ぐ

**ショートステイ(短期入所生活介護・短期入所療養介護)**は、その名の通り、数日から一定の期間だけ施設に泊まって介護を受けるサービスです。本来は、家で介護している家族が休むためや、一時的に家を空けるときに使うものですが、行き先が決まるまでの「つなぎ」として使えることがあります

たとえば、「退院日には長く入れる施設がまだ決まっていないけれど、家で一人で介護するのは難しい」というとき。まずショートステイでいったん受け止めてもらい、その間に落ち着いて次の施設を探す——という時間の稼ぎ方ができます。使える日数や利用の仕方には決まりがあるので、これも病院の相談室やケアマネジャーに、使えるかどうかを相談してみてください。

住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅——生活の場を先に確保する

住宅型有料老人ホームと**サービス付き高齢者向け住宅(サ高住/さこうじゅう)**は、どちらも「住まい」としての性格が強い施設です。介護が必要になったら、外部の訪問介護などのサービスを組み合わせて使う形が基本です。

これらも、空きがあれば比較的早く入れることがあります。自立に近い状態や、必要な介護がそれほど重くない場合には、まず住まいを確保する選択肢として候補に入ります。ただし、必要な介護の量によっては、追加のサービス費用がかさむこともあるので、どこまでのケアが受けられるかは事前に確認しておくと安心です。

特別養護老人ホーム(特養)は、急ぎには向かない

正直にお伝えしておきます。**特別養護老人ホーム(特養/とくよう)**は、急いでいるときの選択肢としては、あまり現実的ではありません。

特養は、費用が比較的おさえられ、長く住み続けられることから人気が高く、地域によっては入居を待つ人の列(待機)ができています。原則として要介護3以上の方が対象という条件もあります。申し込んでおくこと自体は将来のために意味がありますが、「退院までに間に合わせる急ぎの受け皿」として当てにするのは難しい、というのが実情です。

だからこそ、急ぎのときは、まず老健・介護付き有料・ショートステイに力を集める。そのうえで、特養は「落ち着いてから申し込んでおく候補」として、後回しにしても構いません。この優先順位を知っているだけで、限られた時間の使い方が変わります。

限られた時間で動くための、具体的な手順

ここまでで「誰に相談し、どの種類を狙うか」が見えてきたと思います。ここからは、実際に手を動かすときの進め方を、順番に整理します。

要介護認定がまだでも、動き始められる

介護施設や介護サービスを使うには、ふつう要介護認定——どれくらい介護が必要かを市区町村が判断する手続き——が必要です。ですが、この結果が出るまでには時間がかかることがあり、退院に間に合わないこともあります。

ここで知っておきたいのが、認定を待つあいだも「暫定ケアプラン」で動けるということです。暫定(ざんてい)ケアプランとは、認定の結果が出る前に、「たぶんこれくらいの介護が必要だろう」という見込みで先に立てる、仮の介護計画のことです。この仕組みがあるおかげで、認定の結果を待たずにサービスや受け入れの相談を進められます。

まだ認定を申請していなければ、市区町村の介護保険の窓口で早めに申請してください。そのうえで、病院の相談室やケアマネジャーに「認定待ちだが急いでいる」と伝えれば、暫定の計画で動く段取りを助けてくれます。「認定が出てからでないと何もできない」と思い込んで待つ必要はありません。

一つずつではなく、同時に問い合わせる

急ぎのときに一番やってはいけないのが、「一つの施設の返事を待ってから、ダメなら次」という進め方です。返事に数日かかることもあり、それを一件ずつ繰り返していると、あっという間に退院日が来てしまいます。

気になった施設が三つ、四つあるなら、同じ日に、まとめて問い合わせて構いません。「退院が近く急いでいます。今、空きはありますか」と最初に聞けば、空いていない施設はその時点で候補から外せて、時間を節約できます。空きがありそうな所だけ、その先の見学や条件の相談に進めばよいのです。この「同時並行」が、限られた時間で決めるための、いちばんの近道です。

施設を自分でも探したいときは、厚生労働省が運営する「介護サービス情報公表システム」という、全国の介護事業所を検索できる公的なサイトも使えます。地域や種類でしぼって探せるので、相談室から教わった候補と、自分で見つけた候補を、あわせて検討できます。

見学は最小限でも、押さえる点を決めておく

時間があれば、いくつも見学して比べたいところですが、急ぎのときはそうもいきません。見学が一か所しかできなくても、あるいは電話だけでも、確認する点をあらかじめ決めておけば判断はできます。

急ぎのときに最低限そろえたいのは、次のようなことです。今すぐ入れるか(空き状況)。毎月いくらかかるか、入居のときにまとまったお金が必要か。今の親の状態(医療的なケアの有無を含めて)を受け入れられるか。この三つを電話の段階で確認しておけば、見学に行く前に、候補をかなり絞り込めます。時間は、本当に見るべき一〜二か所に集中させましょう。

お金の「上限」を、先に家族で決めておく

探し始める前に、ぜひ家族で話しておいてほしいのが、「毎月いくらまでなら払い続けられるか」の上限です。この線を先に決めておくと、施設選びの判断がぐっと速く、ぶれなくなります。

急いでいると、目の前の「今なら入れます」に気を取られて、費用の確認が後回しになりがちです。ですが、施設の費用は毎月続く支出です。無理のある金額で契約してしまうと、あとで支払いが立ちゆかなくなり、また探し直すことになりかねません。上限を決めておけば、「この施設は予算を超えるから、ここは候補から外そう」と、迷わず判断できます。所得が高くない場合は、施設の食費や部屋代を軽くする公的な制度が使えることもあるので、費用の相談は病院の相談室や市区町村の窓口にも投げかけてみてください。

焦りの中でも、これだけは踏みとどまる

急いでいるときほど、あとで「なぜあのとき、あんな決め方をしてしまったのか」と悔やむ選択をしがちです。最後の砦として、心にとめておいてほしいブレーキをお伝えします。

一つは、費用の総額と退去の条件だけは、契約の前に必ず確かめることです。毎月の家賃や食費だけでなく、介護サービスの自己負担や、おむつ代・日用品代などがどれくらい上乗せされるのか。そして、どんなときに退去を求められるのか(たとえば、状態が重くなって施設で対応できなくなった場合など)。この二つを知らないまま契約すると、「思っていた金額と違う」「長くいられると思ったのに退去を求められた」といった食い違いが起きます。急いでいても、この二点だけは飛ばさないでください。

もう一つは、「今だけ」「今日決めてくれれば」という言葉で、高額な契約を急がされたときは、いったん立ち止まることです。もちろん、空きが本当に限られていて、急いで返事をする必要がある場面はあります。ですが、まとまった入居一時金が必要な契約を、その場の勢いだけで決めるのは避けたいところです。「一度、病院の相談員に相談してから連絡します」と伝えて、電話一本入れるだけでも、冷静さを取り戻せます。相談員は、あなたが一人で背負い込まないための存在です。使わない手はありません。

焦っているときの判断は、どうしても視野がせまくなります。だからこそ、大きなお金が動く決断は、一呼吸おいて、信頼できる相手の意見を一度はさむ。それだけで、後悔の多くは防げます。

頼れる相談先を、もう一度整理しておく

一人で探し回らないために、あなたが声をかけられる相手を、あらためて並べておきます。動ける相手はすべて使って構いません。

病院の相談室(医療ソーシャルワーカー)。入院中なら、ここが最優先の相談先です。親の状態を正確に把握したうえで、地域の施設情報や受け入れの段取りまで助けてくれます。まずここに、正直に「間に合わないかもしれない」と伝えることから始めてください。

地域包括支援センター。お住まいの地域を担当する、高齢者のための総合相談窓口です。市区町村が設けている公的な窓口で、介護のことなら無料で相談できます。担当のケアマネジャーがまだいない場合や、退院後の地域での暮らし全体を相談したいときに頼りになります。どこが担当かは、市区町村の窓口や役所のホームページで確認できます。

ケアマネジャー(介護支援専門員)。すでに担当のケアマネがいれば、その方も心強い味方です。ケアマネは、介護の計画を立て、施設やサービスとの間をつなぐ専門職です。認定待ちの暫定の計画づくりから、施設への橋渡しまで、実務の面で伴走してくれます。

この三つは、どれか一つを選ぶものではありません。病院の相談室に相談しながら、地域包括支援センターにも電話をしてみる。ケアマネがいればその人にも声をかける。窓口が増えるほど、候補にたどり着く速さは上がります。

退院までの時間が短いと、「自分がしっかりしなければ」と気負ってしまうものです。でも、施設探しは本来、あなた一人で背負うものではありません。病院にも、地域にも、それを助けるための専門家がいます。今日できる最初の一歩は、難しいことではありません。病院の相談室に「退院までに施設を探すよう言われて、困っています」と伝える。たったそれだけで、道は動き始めます。焦る気持ちのまま一人で走り出す前に、まずは、その一言から始めてみてください。

よくある質問

退院までに施設が決まらないときはどうすればいいですか?

まず、入院している病院の相談室(医療ソーシャルワーカー)に「退院までに間に合いそうにない」と正直に伝えてください。退院支援は病院の役割の一つで、地域の施設情報や段取りを助けてくれます。そのうえで、比較的すぐ入れる介護老人保健施設(老健)・介護付き有料老人ホーム・ショートステイ(短期入所)に絞り、一つに決め打ちせず複数へ同時に問い合わせると、決まるまでの時間を短くできます。

すぐに入れる老人ホームはどんな種類ですか?

空きがあれば比較的早く入れるのは、介護老人保健施設(老健)、介護付き有料老人ホーム、ショートステイ(短期入所)、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などです。とくに老健は在宅復帰を前提とした施設で入れ替わりが起きやすく、有料老人ホームは空室があれば数日〜数週間で入れることもあります。一方、特別養護老人ホーム(特養)は待機の列ができていることが多く、急ぎには向きません。

要介護認定がまだ出ていなくても施設を探せますか?

探せます。認定の結果を待つあいだも「暫定(ざんてい)ケアプラン」という仮の計画で介護サービスを使える仕組みがあり、施設側もそれを前提に受け入れを検討してくれます。まずは市区町村の窓口で要介護認定を申請し、あわせて病院の相談室やケアマネジャーに「認定待ちだが急いでいる」と伝えて動き始めてください。

焦って施設を決めて後悔しないために、最低限どこを確認すればいいですか?

少なくとも「毎月かかる総額」と「どんなときに退去を求められるか(退去要件)」の二つは、契約前に必ず確認してください。入居時にまとまったお金(入居一時金)が必要な施設もあります。「今空いているのは今日だけ」といった言葉で高額な契約を急がされたときは、いったん相談室やケアマネに電話してからでも遅くありません。

施設探しはどこに相談すればいいですか?

入院中なら、まず病院の相談室(医療ソーシャルワーカー)です。退院後の生活まで含めて相談できます。地域の窓口としては、お住まいの地域を担当する地域包括支援センター(高齢者の総合相談窓口)があり、無料で相談できます。すでに担当のケアマネジャーがいれば、その方も心強い味方です。一か所に絞らず、動ける相手すべてに声をかけて大丈夫です。

退院日までに間に合いません。入院を延ばしてもらえますか?

医療上、入院を続ける必要がなくなると、原則として退院を求められます。「施設が決まらないから」という理由だけで入院を大きく延ばすことは難しいのが実情です。ただ、あきらめる必要はありません。まず病院の相談室(医療ソーシャルワーカー)に「退院までに行き先が決まりそうにない」と正直に伝えてください。相談室は、退院の日程を現実的な範囲で調整したり、いったんリハビリを続けられる病棟や介護老人保健施設(老健)を経由する道を一緒に考えたり、ショートステイでのつなぎを段取りしたりと、間に合わせるための現実的な選択肢を持っています。一人で「間に合わせなければ」と抱え込まず、早めに相談室に打ち明けることが、いちばんの近道です。

出典


本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、正確性・最新性を保証するものではありません。 制度や施設の状況は変わることがあります。実際のご判断の前には、各施設・公式情報や公的機関でご確認ください。

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