施設選び

介護施設の選び方|後悔しないための進め方と、判断する順番

公開: 2026年7月27日 / 編集: 介護のしるべ編集部

親の介護施設を探し始めたとき、多くのご家族が最初にぶつかるのは「そもそも、何から考えればいいのか分からない」という戸惑いです。ネットで調べれば、特養、老健、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅……と、聞き慣れない名前がずらりと並びます。費用も施設によってバラバラで、口コミを読めば「良かった」「後悔した」の両方が出てくる。調べれば調べるほど、頭の中がこんがらがっていく。そんな感覚をお持ちではないでしょうか。

けれど、安心してください。施設選びで迷ってしまう理由は、たいてい一つです。それは、選ぶ「順番」が分からないからです。順番さえはっきりすれば、山のような情報も、一つずつ片付けられる問題に変わります。

この記事では、介護の知識がまったくない方でも迷わないように、施設選びを「判断する順番」に沿って説明していきます。むずかしい言葉はそのつどかみくだきます。まず結論から言えば、進め方はこの3ステップです。

  1. 要介護度と医療の必要性で、入れる「種類」を絞る
  2. 毎月無理なく払える「金額」を決める
  3. 地域の候補を「見学」で確かめる

上から順にやっていくのがコツです。逆にしてしまう――たとえば、いきなり近所の施設をいくつも見学して回る――と、そもそも親が入れない種類だったり、予算に合わなかったりして、時間だけがかかってしまいます。では、一つずつ見ていきましょう。

ステップ1|「入れる種類」は、体の状態でほぼ決まる

最初にやることは、施設の種類を絞り込むことです。実はここが、選び方でいちばん大切な入り口になります。

なぜなら、介護施設は「お金さえ出せばどこでも入れる」わけではないからです。親の体の状態によって、入れる種類・入れない種類が最初から決まっているのです。ここを知らずに費用や立地から探し始めると、後で「うちの親は条件に合わなかった」と振り出しに戻ることになりかねません。

種類を絞るときに見るのは、主に次の3つです。

  • 要介護度(どれくらい介護が必要か。要支援1〜2、要介護1〜5の段階で表されます)
  • 認知症の有無と程度(もの忘れや徘徊などがどのくらいあるか)
  • 医療的ケアの必要性(たん吸引、点滴、インスリン注射、酸素など、日常的な医療が必要か)

この3つによって、候補になる施設の種類が変わります。おおまかなめやすを一覧にすると、次のようになります(あくまで一般的な傾向で、細かい条件は施設ごとに異なります)。

  • 特別養護老人ホーム(特養) … 原則、要介護3以上が対象。費用を抑えやすく人気が高い。地域によっては入居まで待つことがある。
  • 介護老人保健施設(老健) … 在宅復帰を目指す施設で、リハビリが手厚い。要介護1以上が対象で、医療的なケアにも比較的対応しやすい。
  • 有料老人ホーム(介護付き・住宅型) … 民間が運営。自立〜要介護まで幅広く、施設ごとに受け入れの条件が異なる。選択肢が多い。
  • グループホーム … 認知症の方が少人数で共同生活を送る施設。原則、要支援2以上で認知症の診断がある方が対象。
  • サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) … 見守りや生活相談がついた高齢者向けの賃貸住宅。自立に近い方から利用しやすい。

ここで一つ、覚えておいてほしい言葉があります。要介護3以上という条件です。特養は費用が抑えやすいため希望する方が多いのですが、原則としてこの要介護3以上でないと入れません(要介護1・2でも、在宅で生活を続けるのが難しい特別な事情があれば認められる場合もあります)。もし親がまだ要介護1や2の段階なら、老健や民間の施設も一緒に考える必要がある、というわけです。

医療的ケアの視点も欠かせません。たとえば「たんの吸引が毎日必要」「胃ろう(お腹から直接栄養を入れる管)がある」といった場合、対応できる施設は限られます。看護師さんが24時間いるかどうかで、受け入れの可否が変わることも多いのです。親に持病や医療的なケアがある場合は、この点を早めに確認しておきましょう。

種類ごとの費用や条件のちがいは、それぞれ深く知ろうとするとかなりのボリュームになります。ここでは「体の状態で入れる種類が絞られる」という全体像だけつかんでいただければ十分です。気になる種類が定まったら、その種類の詳しい説明を確かめてから次に進むと、迷いが減ります。

ステップ2|費用は「入居時」より「月額×年数」で考える

入れそうな種類が2〜3つに絞れたら、次はお金の話です。ここでつまずくご家族はとても多いので、考え方のコツをお伝えします。

介護施設のお金には、大きく分けて2種類あります。

  • 入居一時金(入るときにまとめて払うお金。「前払い金」とも呼ばれます)
  • 月額費用(毎月かかるお金。家賃・食費・介護サービスの自己負担・日用品代などの合計)

パンフレットを見ると、つい「入居一時金がいくらか」に目が行きがちです。でも、施設選びで本当に効いてくるのは、入居一時金よりも「月額費用 × 住む年数」の総額のほうです。

なぜなら、施設で暮らす期間は数年、長ければ10年以上にわたることもあるからです。かりに月額の差が3万円あったとして、それが5年続けば180万円、10年なら360万円もの差になります。入居時の一時金がいくら安くても、毎月の負担が重ければ、長い目で見て家計が苦しくなってしまうのです。

そこで、施設を比べるときは「毎月いくらかかるか」を必ずそろえて確認してください。そのうえで、次のように総額でイメージしてみましょう。

月額費用 × 想定する年数(たとえば5年 = 60か月)+ 入居一時金 = ざっくりの総額

この計算を候補ごとにやってみると、パンフレットの印象だけでは見えなかった差が見えてきます。

そして、費用にはもう一つ大事な傾向があります。公的な施設と民間の施設で、費用と選択肢のバランスがちがうという点です。

  • 公的な施設(特養・老健など) … 費用を抑えやすいのが強み。ただし人気で入居まで待つことがあり、部屋のタイプなど選べる幅は限られがち。
  • 民間の施設(有料老人ホーム・サ高住など) … 費用の幅が広く、設備やサービスの選択肢が多いのが強み。ただし全体としては公的施設より費用が高めになりやすい。

どちらが良い・悪いではなく、「費用の安さ」と「選択肢の広さ」は、どちらかを取ればどちらかを我慢する関係(トレードオフ)にある、と知っておくことが大切です。予算に限りがあるなら公的施設を軸に、すぐに入れる場所や設備を重視するなら民間も、というように、家庭の事情で軸を決めていきます。

なお、所得が高くないご家庭には、施設の食費や部屋代を軽くする公的な制度もあります。金額の負担が心配なときは、あとで触れる相談窓口で「使える制度はありますか」と聞いてみてください。知らないまま満額を払い続けるのは、もったいない話です。

費用の具体的な数字は、施設ごと・時期ごとに変わります。ここで挙げた金額の考え方はすべて「めやす」ととらえ、実際の金額は必ずそれぞれの施設に確認してください。

ステップ3|候補は3件ほど、見学で確かめる

種類が絞れて、予算のめやすも決まったら、いよいよ具体的な施設を選ぶ段階です。ここで大事になるのが、立地見学の2つです。

まず立地から。施設を選ぶとき、つい設備やサービスに目が向きますが、見落とされがちなのが「家族が通える距離かどうか」です。

入居して終わり、ではありません。むしろ、入ってからのほうが長い付き合いになります。体調が変わったときの面会、季節の荷物の入れ替え、施設の方との相談――こうした場面で、家族が無理なく通える距離にあるかどうかは、想像以上に大きな意味を持ちます。「安くて設備も良いけれど、車で2時間かかる」施設を選んで、結局ほとんど会いに行けなかった、というのは、後で悔やまれるパターンの一つです。

次に見学です。パンフレットやホームページだけでは、どうしても分からないことがあります。だからこそ、候補は3件ほどにしぼって、実際に足を運んで比べることをおすすめします。

3件というのには理由があります。1件だけだと、それが良いのか悪いのか、比べる基準を持てません。かといって10件も回ると、どこがどうだったか分からなくなり、かえって迷います。同じくらいの種類・費用帯の施設を3件ほど見ると、「あ、ここは職員さんの声かけがやさしい」「こっちは部屋が明るい」といった違いが、肌で感じられるようになります。

見学のときに見ておきたいポイントを挙げておきます。

  • 職員さんの表情や、入居者への声のかけ方(忙しくても、ていねいに接しているか)
  • においや清潔さ(玄関だけでなく、廊下やトイレのあたりまで)
  • 入居者の様子(穏やかに過ごしているか、放っておかれていないか)
  • 食事の内容(可能なら試食させてもらう。毎日のことなので大切です)
  • 医療体制(看護師さんは何時までいるか、急なときの病院との連携はどうか)

可能であれば、親本人も一緒に見学できると理想的です。実際に暮らすのは本人ですから、「ここなら過ごせそう」という本人の感覚は、何より大切な判断材料になります。難しい場合は、家族が写真を撮って、あとで本人に見せながら話すだけでも違います。

何を「決め手」にするか ― 優先順位を家族で決めておく

3ステップを進めると、候補が2〜3件に絞られてきます。ここで最後に立ちはだかるのが、「では、どれに決めるか」という問いです。

判断の材料になるのは、主に次の5つです。

  • 費用(毎月無理なく払えるか)
  • 立地(家族が通えるか)
  • 雰囲気(親が心地よく過ごせそうか)
  • 職員の対応(信頼して任せられそうか)
  • 医療体制(親の持病や急変に対応できるか)

大切なのは、この5つすべてで満点の施設は、まず存在しないということです。費用が安ければ立地が遠かったり、雰囲気が良ければ費用が高かったり。どこかで折り合いをつけることになります。

だからこそ、決める前にご家族で「絶対に外せない条件」を1〜2つ話し合っておくとよいでしょう。「毎月〇万円までなら払える」「車で30分以内には通いたい」といった具合に、優先する軸を先に決めておくのです。軸が定まっていれば、迷ったときに立ち返る場所ができ、「なんとなく」で決めて後悔することが減ります。

参考までに、実際に施設を選んだご家族が「こうしておけばよかった」と口にしがちな後悔を、いくつか挙げておきます。

  • 費用の安さだけで決めてしまった … 入ってみると職員さんが足りず、対応に不安が残った。金額は大事ですが、それ「だけ」で決めると別の後悔につながりやすいものです。
  • 遠くて、結局ほとんど通えなかった … 良い施設でも、会いに行けなければ本人も家族もさびしい思いをします。立地は軽く見ないほうがよい要素です。
  • 要介護が進んで、住み替えになった … 入居時は元気でも、数年で状態が変わることは珍しくありません。「この先、介護が重くなっても住み続けられるか」を、入る前に確認しておくと安心です。

これらに共通するのは、「今だけでなく、数年先まで見て選ぶ」という視点です。入居はゴールではなく、そこから始まる暮らしのスタートです。少し先の変化まで想像しながら選ぶと、後悔がぐっと減ります。

ひとりで抱えない ― 無料で頼れる相談先

ここまで読んで、「やることが多くて大変そう」と感じたかもしれません。でも、これを全部、家族だけで背負う必要はありません。介護には、無料で相談できる公的な窓口がいくつも用意されています。

まず知っておいてほしいのが、地域包括支援センターです。これは市区町村が設けている、高齢者の介護や生活の相談を無料で受けてくれる窓口です。全国のどの地域にも設置されていて、「親の介護施設を探しているのですが」と電話一本で相談を始められます。どんな種類の施設が合いそうか、地域にどんな施設があるか、使える制度は何か――施設選びの入り口として、まず頼りたい存在です。お住まいの地域の担当センターは、市区町村の役所やホームページで確認できます。

すでに介護保険を使っている場合は、担当のケアマネジャー(介護の計画を立ててくれる専門職)が心強い相談相手になります。親の状態をよく知っているぶん、具体的で的確なアドバイスがもらえます。

親が入院中であれば、病院の相談室(医療ソーシャルワーカーがいる部署です)も頼りになります。退院後に施設へ移る場合、医療と介護の橋渡しをしてくれます。

これらはすべて、相談するだけならお金はかかりません。「こんな初歩的なことを聞いていいのだろうか」とためらう必要もありません。むしろ、早めに相談したご家族ほど、落ち着いて選べています。分からないことは、分かる人に聞く。それが、遠回りに見えていちばんの近道です。

迷ったら、この順番に立ち返る

介護施設の選び方には、正解が一つだけあるわけではありません。同じ親でも、家族の状況が変われば、合う施設は変わります。だからこそ、大切なのは「立派な施設を見つけること」ではなく、「わが家にとって納得できる選び方をすること」です。

もし途中で情報の多さに飲み込まれそうになったら、この順番にもう一度立ち返ってみてください。体の状態で種類を絞り、払える金額を決め、通える範囲で見学して比べる。この3つの順番を守るだけで、迷いはずいぶん小さくなります。そして、どこかで詰まったら、地域包括支援センターに電話をかけてみる。

親のための施設選びは、家族にとって大きな決断です。不安になるのは、それだけ真剣に向き合っている証拠でもあります。完璧な施設を探そうとしなくて大丈夫です。順番に沿って一つずつ確かめ、迷ったら相談しながら進めていけば、きっと「ここにしてよかった」と思える選択にたどり着けます。まずは、親の要介護度を手元で確かめるところから、はじめの一歩を踏み出してみてください。

よくある質問

介護施設は何から選び始めればいいですか?

まず「種類を絞る」ことから始めるのがおすすめです。親の要介護度・認知症の有無・医療的なケアが必要かで、入れる施設の種類が決まります。次に毎月払える金額を決め、最後に地域の候補を見学で確かめる、という順番で進めると迷いにくくなります。いきなり施設名を比べるより、この順番のほうが失敗しにくいです。

老人ホームを選ぶとき、何を優先して決めればいいですか?

費用・立地・雰囲気・職員の対応・医療体制の5つが主な判断材料です。すべてで満点の施設はまずないので、ご家族で「絶対に外せない条件」を1〜2つ決めておくと選びやすくなります。多くのご家庭では「毎月無理なく払えること」と「家族が通える距離であること」が優先度の高い条件になります。

施設は何件くらい見学すればいいですか?

3件ほど見て比べるのがひとつのめやすです。1件だけだと良し悪しの基準が持てず、多すぎると迷いが増えます。同じ種類・近い費用帯の施設を複数見ると、部屋の広さや職員さんの雰囲気の違いが分かり、「うちの親に合うのはどこか」の感覚がつかめます。可能なら本人も一緒に見学できると安心です。

特別養護老人ホームには誰でも入れますか?

特別養護老人ホーム(特養)は、原則として要介護3以上の方が対象です(要介護1・2でも特別な事情があれば認められる場合があります)。費用を抑えやすい人気の施設で、地域によっては入居まで待つこともあります。要介護1・2の段階なら、介護老人保健施設や民間の施設など、ほかの選択肢も一緒に検討するとよいでしょう。

施設選びを相談できる無料の窓口はありますか?

あります。お住まいの地域の「地域包括支援センター」は、高齢者の介護や生活の相談を無料で受けてくれる公的な窓口です。すでに介護保険を使っている場合は担当のケアマネジャー、入院中なら病院の相談室(医療ソーシャルワーカー)も頼りになります。ひとりで抱え込まず、まずはこうした窓口に相談するのが近道です。

施設に入居を断られることはありますか?どんな場合ですか?

あります。よくあるのは、(1)その施設で対応できない医療的なケア(たんの吸引や人工呼吸器など)が必要な場合、(2)要介護度が施設の条件に合わない場合(たとえば特養は原則要介護3以上)、(3)感染症などで一時的に受け入れが難しい場合、(4)身元保証人・身元引受人を立てられない場合、(5)そもそも定員に空きがない場合、などです。ただし、断られたからといって行き場がないわけではありません。地域包括支援センターやケアマネジャー、病院の相談室に伝えれば、条件に合う別の施設や、身元保証人がいない場合の対応策を一緒に探してくれます。ひとつの施設で断られても、あきらめずに相談してください。

出典


本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、正確性・最新性を保証するものではありません。 制度や施設の状況は変わることがあります。実際のご判断の前には、各施設・公式情報や公的機関でご確認ください。

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