資格・キャリア

ケアマネジャー(介護支援専門員)になるには|受験資格・試験・仕事と給料の実際

公開: 2026年7月18日 / 編集: 介護のしるべ編集部

現場で何年か介護を続けてきて、ふと「この先、どんな働き方があるだろう」と考える瞬間があるのではないでしょうか。腰や体への負担、夜勤のつらさ、あるいは「もっと一人ひとりの暮らし全体に、じっくり関わりたい」という思い——そんなときに浮かぶ道のひとつが、ケアマネジャーです。

でも、いざ調べてみると、受験資格の説明が難しくて、途中でうんざりしてしまいますよね。「実務経験が原則5年」「対象になる資格・職種が決まっている」「日数の数え方に条件がある」——読んでも、結局、自分は受けられるのかどうかが分からない。**それは、あなたの理解力が足りないからではありません。**制度が何度も改正されて、条件が複雑に積み重なってきたからです。分かりにくいものを分かりにくいと感じるのは、ごく自然なことです。

この記事では、まず「ケアマネとはどんな仕事か」をやさしくお伝えしたうえで、複雑にみえる受験資格を順番にほどきます。さらに、試験のしくみと合格率、合格後の法定研修と更新制の見直し、居宅・施設・地域包括という働く場の違い、給料の実際、そして書類や「制度の下請け」感といった負担のリアルまで、公的なデータと当事者の声をもとにお話しします。途中には、自分が受験資格に届いているかを確かめるセルフ判定チェックも用意しました。読み終えるころには、「自分にとって、この道は目指せそうか」の見当が、きっとついているはずです。

まず結論:道のりと、給料・働き方の要点

受験資格の細かい話は、あとでじっくりほどきます。その前に、ケアマネという仕事と道のりの輪郭を、3点でつかんでおきましょう。

  • ケアマネジャー(正式には「介護支援専門員(かいごしえんせんもんいん)」)は、利用者に合った介護の計画書「ケアプラン」を作る専門職です。 体に触れる身体介護からは離れ、相談・調整が仕事の中心になります。
  • なるまでの道は「実務経験→試験→実務研修→登録」の4ステップです。 受験資格は、介護福祉士などの国家資格や相談援助業務にもとづく実務が、原則5年以上(かつ900日以上)が基本の目安。難しくみえますが、順を追えば整理できます。
  • 給料は、介護職員の平均より高めの傾向があります。 夜勤のない働き方を選びやすいのも特徴です。ただし金額は勤務先や地域で変わり、書類や責任の重さといった負担もあります。光と影の両方を、この記事で等身大にお伝えします。

ケアマネは、介護というオーケストラの「指揮者」にたとえられます。自分で楽器を演奏する(=直接の身体介護をする)のとは少し違う役割で、演奏者一人ひとりの音(=それぞれのサービス)を、その人にふさわしい一曲にまとめ上げます。まずは、その指揮者がどんな仕事をしているのかから、一緒に見ていきましょう。

ケアマネジャー(介護支援専門員)とは:ケアプランを作る「司令塔」

中心の仕事は「ケアプラン」を作ること

ケアマネジャーの、いちばん中心にある仕事は、「ケアプラン」を作ることです。ケアプランとは、利用者一人ひとりに合わせた介護サービスの計画書のことで、正式には「居宅サービス計画」や「施設サービス計画」と呼ばれます。

たとえば、こういうことを考えて、計画にまとめます。

  • この方は、週に何回、デイサービス(日帰りで通う介護)に通うのがよいか
  • 訪問介護(家に来てもらう介護)は、週に何回、1回あたり何時間が必要か
  • 家族の負担を減らすために、ショートステイ(短期間の宿泊)をどう組み込むか

こうした支援の組み立てを、利用者の体の状態、暮らし方、本人・家族の希望を聞きながら考えていきます。「その人らしい暮らしを、どう支えるか」を設計するのが、ケアマネの仕事の核心です。

利用者とサービスを「つなぐ」役割

ケアマネのもうひとつの大きな役割が、利用者と、いろいろなサービス事業者の間を「つなぐ」ことです。

ケアプランができたら、その計画にそって、デイサービス、訪問介護、福祉用具(介護用ベッドや車いすなど)の事業者に連絡をとり、サービスが実際に始まるように手配します。そして、関係者が集まる「サービス担当者会議」を開いて、みんなで方針をすり合わせます。

さらに、月に1回程度、利用者の自宅などを訪問して、「困っていることはないか」「サービスは合っているか」を確認し、必要ならケアプランを見直します。この見守りと調整を続ける役割から、ケアマネは介護の**「司令塔」や「まとめ役」**とも呼ばれます。

なぜケアマネという仕事があるのか

「なぜ、わざわざケアプランを作る専門職が必要なの?」と思うかもしれません。理由は、介護保険のサービスは種類が多く、組み合わせが複雑だからです。

利用者や家族が、自分たちだけで「どのサービスを、どれだけ使えばいいか」を判断するのは、とても大変です。使いすぎれば費用がかさみ、足りなければ暮らしが立ちゆかなくなります。そこで、制度にくわしい専門家が間に入り、その人に合った「ちょうどよい組み合わせ」を考える——それがケアマネという仕事が生まれた理由です。介護保険という仕組みを、利用者が安心して使うための、大切な水先案内人なのです。

ケアマネの一日と、現場の身体介護との違い

「ケアマネになったら、どんな毎日を送るのか」を、具体的にイメージしてみましょう。ここでは、自宅で暮らす利用者を担当する居宅ケアマネのある1日を、モデルケースで見てみます(一般的な業務をもとにした架空の例です)。

午前は、事業所でパソコンに向かい、担当する利用者のケアプランや記録を作成・更新します。事業者からの電話に対応し、その日の訪問の準備をします。

午後は、担当する利用者の自宅を2〜3件、訪問します。体調や暮らしの変化をうかがい、「デイサービスは楽しく通えているか」「困りごとはないか」を確認します。ときには、サービス担当者会議を開き、家族やサービス事業者と一緒に方針を話し合います。

夕方は事業所に戻り、その日のやりとりを記録にまとめ、翌日の段取りを整えます。

このように、「書類を作る時間」と「人に会って話を聞く時間」の組み合わせが、ケアマネの一日です。現場の介護職とケアマネの、いちばん大きな違いを表にまとめました。

くらべる点現場の介護職ケアマネジャー
仕事の中心身体介護・生活援助(体を使うケア)ケアプラン作成・相談・調整(頭を使う仕事)
利用者との関わり方毎日、直接お世話をする定期的に訪問し、暮らし全体を見わたす
体への負担身体介護で腰・体に負担がかかりやすい身体的な負担は比較的軽い
事務作業記録が中心ケアプラン・書類作成の比重が大きい
夜勤施設によってはあり日勤中心を選びやすい

大切なのは、「どちらが上」ということではないという点です。利用者に直接触れ、日々のお世話でその人を支える現場の仕事には、ケアマネにはできない尊さがあります。ケアマネは、その現場を「別の角度から支える」役割です。体を使う仕事から、頭を使い人と人をつなぐ仕事へ——役割が変わることは知っておいてください。

なるまでの全体像:実務経験→試験→実務研修→登録の4ステップ

ここからが本題です。ケアマネになるまでの道のりを、4つのステップに分けて見ていきましょう。全体像は、次のとおりです。

ステップ内容ひとことで言うと
1受験資格となる実務経験を積む介護福祉士などで原則5年以上(かつ900日以上)
2実務研修受講試験に合格する年1回、都道府県が行う試験(2024年度の合格率は約32%)
3実務研修を修了する合格後、およそ87時間の研修を受ける
4登録・証の交付を受ける都道府県に登録し、ケアマネとして働ける

この4ステップのうち、多くの人がつまずくのが最初の「受験資格」です。ここが分かりにくいために、そもそも挑戦をあきらめてしまう人も少なくありません。だからこそ、次の章でていねいにほどき、そのあとに「自分は届いているか」を確かめるチェックも用意しました。

受験資格の「実務経験」を、正しく数える

ケアマネの試験を受けるには、決められた資格・業務にもとづいて、原則5年以上(かつ実際に働いた日数が900日以上)の実務経験が必要です。これが基本の条件になります。「決められた資格・業務」とは、大きく次の2つのグループです。

  • ① 決められた国家資格にもとづく業務:介護福祉士、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士などの国家資格を持ち、その資格にもとづく仕事をした期間。介護現場から目指す多くの人は、介護福祉士でこの条件を満たします。
  • ② 決められた相談援助の業務:特別養護老人ホームの生活相談員や、地域包括支援センターの相談員など、法律で定められた「相談援助業務」にたずさわった期間。

ここで、とても大切な注意点が3つあります。

  1. 「原則」5年、という点。 これは基本の目安です。数え方には細かな条件があり、対象になる職種・施設も定められています。「介護の仕事なら何でも5年でOK」ではありません。
  2. 資格を取る「前」の期間は、原則として数えない。 たとえば無資格で働いた期間は、この5年には含まれないのが一般的です。介護福祉士を取ってからの期間を数えるイメージです。
  3. 900日以上という「日数」の条件もある。 5年という「期間」だけでなく、その間に実際に何日働いたか(従事日数900日以上)も条件になります。

このように、数え方は複雑です。しかも都道府県によって、対象職種の細かな範囲や、提出する書類が異なることがあります。実際、東京都は受験資格を「保健・福祉・医療分野で原則として5年以上かつ900日以上の実務経験を有する者」と案内しており、詳しい対象範囲は受験要項で確認するよう求めています(東京都福祉局・令和8年度の実施案内より)。自分が受験資格を満たしているかどうかは、必ず、お住まいの都道府県が公表している実施要項で確認してください。

なお、以前は、一定の実務経験だけで受験できた時期がありました。しかし制度改正によって、受験資格は見直されてきた経緯があります。受験資格は今後も改正で変わりうるため、「昔はこうだった」という情報をうのみにせず、必ず最新の実施要項にあたってください。

【持ち帰り】受験資格セルフ判定チェックと、逆算スケジュール

複雑な受験資格も、次の5つの問いに置きかえると、自分の現在地が見えてきます。この記事でいちばん持ち帰ってほしい部分です。上から順に、自分に当てはまるかを確かめてみてください(最終的な判定は必ず都道府県の実施要項で)。

  • チェック1:介護福祉士・看護師・社会福祉士など、対象の国家資格を持っている(または法定の相談援助業務に就いている)。
  • チェック2:その資格・業務にもとづく実務が、通算で原則5年以上ある。
  • チェック3:その間、実際に働いた日数が900日以上ある。
  • チェック4:数えているのは「資格を取ったあと」の期間である(無資格の期間は原則含めない)。
  • チェック5:対象になる職種・施設か、実施要項の一覧で確認できている。

5つすべてに「はい」なら、受験資格に届いている可能性が高いと考えられます。「あと少し」の項目があるなら、それが次に埋める課題です。たとえばチェック1がまだなら、まずは介護福祉士の取得が起点になります(介護福祉士になるにはを参照)。チェック2・3が「もう少し」なら、必要な期間・日数に届く時期を逆算しておきましょう。

届いていると分かったら、次は年間スケジュールの逆算です。試験は年1回なので、時期を逃さないことが大切です。東京都の令和8年度を例にすると、次のような流れになります(日程・手数料は都道府県で異なります。必ず自分の実施要項で確認してください)。

  1. 6月ごろ:受験要項の配布・申し込み。 東京都は6月1日から6月30日まで(簡易書留の郵送のみ)。受験手数料は12,548円でした。
  2. 10月ごろ:試験。 東京都の令和8年度は10月11日(日)の予定です。
  3. 合格発表後:実務研修(およそ87時間)を受講。 数か月にわたり、複数日に分けて行われます。
  4. 修了後:登録・証の交付。 ここで、はれてケアマネとして働けるようになります。

このチェックとスケジュールを一枚のメモにして手元に置いておけば、「自分は今どこにいて、次に何をすればいいか」が、いつでも確かめられます。

介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネ試験)のしくみと合格率

受験資格を満たしたら、次は**「介護支援専門員実務研修受講試験」**を受けます。長い名前ですが、要は「ケアマネの研修を受けるための試験」で、一般には「ケアマネ試験」と呼ばれます。おさえておきたいポイントを整理します。

  • 実施するのは、お住まいの都道府県です。 国が一律で行うのではなく、都道府県ごとに実施されます。申し込みや会場も、原則として勤務地や住所のある都道府県になります。
  • 年に1回、例年秋ごろに行われます。 年1回なので、募集の時期を早めに確認しておくことが大切です。
  • 形式は、マークシートの筆記試験です。 「介護支援分野」と「保健医療福祉サービス分野」から出題され、介護保険制度のしくみや、ケアプランの考え方などが問われます。

気になる合格率は、年度によって差が大きいのが特徴です。長く1〜2割台で推移してきましたが、直近では上がりました。厚生労働省の実施状況によると、**2024年度(第27回)は、受験者約5万4千人に対して合格者1万7,228人、合格率は32.1%**でした。決してやさしい試験ではありませんが、受験する人はすでに現場経験が豊富なので、制度の知識を計画的に補えば、十分に合格をねらえます。

ただし、合格率が高めだった年もあれば低かった年もあり、その年の難易度や合格基準は変わります。「去年は3割超えだったから今年もやさしい」とは限りません。試験の日程・受験料・出題範囲・合格基準は、年度や都道府県によって変わるため、必ず、その年の実施要項で確認してください。

合格後の実務研修と、法定研修・更新のこれから

試験に合格しても、その時点ではまだケアマネとして働けません。合格後に、**「実務研修」**を修了する必要があります。

まずは「実務研修」(およそ87時間)

この実務研修は、合計でおよそ87時間にわたる、しっかりした内容の研修です。ケアプランの作り方、利用者への面談の仕方、多くの職種と連携する方法などを、講義・演習・実習を通じて学びます。数か月にわたって複数日に分けて行われるのが一般的で、働きながら受ける人が多いため、勤務先の理解を得て日程を確保することが大切になります。

資格を取ったあとも続く「法定研修」

ケアマネの特徴のひとつが、資格を取ったあとも学び続ける法定研修が続くことです。実務経験を積んだあとに受ける「専門研修」や、これまでは資格を更新するための「更新研修」など、定期的にまとまった時間の研修が求められてきました。この研修の時間的・金銭的な負担は、現役ケアマネから「負担が重い」という声が根強く上がってきた部分でもあります。

更新制は「廃止」の方向へ——ただし施行時期に注意

その負担をめぐって、制度は大きく動いています。これまで介護支援専門員証には5年の有効期間があり、更新には研修の受講が必要でした。しかし、2026年に成立した改正法で、この更新制を廃止する方向が決まりました。人材不足のなかで、更新の負担が離職の一因になっているという指摘に応えたものです。

ここで大切なのは、更新制がなくなっても、学び直しそのものがなくなるわけではないという点です。更新とは切り離したうえで、資質の維持・向上のための法定研修を続けて受ける形になる見通しです。そして施行日は「公布後1年6か月以内に政令で定める日」とされ、2027年4月などに固定されたものではありません。新制度が始まるまでは現在の更新制が続くため、自分の証の有効期限が近い人は、古い解説だけで判断せず、厚生労働省と都道府県の最新の案内を確認して手続きを進めてください(厚生労働省「介護保険制度の概要」ほか)。

働く場は3つ:居宅・施設・地域包括支援センター

ケアマネと一口に言っても、働く場によって、担当する利用者も日々の仕事も変わります。大きく3つのタイプを、表で見比べてみましょう。

働く場主な所属担当する利用者働き方の特徴
居宅ケアマネ居宅介護支援事業所自宅で暮らす利用者訪問して面談し、地域のサービスを組み合わせる。担当件数に目安があり「逓減制」がある
施設ケアマネ特別養護老人ホームなどその施設の入居者同じ建物の多職種と密に連携。ほかの業務を兼ねることもある
地域包括のケアマネ地域包括支援センター地域の高齢者全般介護予防のプランづくりや総合相談、多機関の連携が中心。主任ケアマネが中核を担う

補足すると、**居宅ケアマネの「逓減制(ていげんせい)」**とは、一人が担当できる件数に目安があり、それを超えて多く抱えると、介護報酬が1件あたり減っていく仕組みのことです。多く担当すれば収入が青天井に増えるわけではなく、一人ひとりに向き合う時間を守るための制度、と考えると分かりやすいでしょう。件数の目安や仕組みは改定されることがあるため、詳しくは勤務先や実施要項で確認してください。

地域包括支援センターは、高齢者の暮らしを地域で支える総合相談窓口です。ここで中心的な役割を担うのが、ケアマネの経験を積んだ先にある**主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)**です。ケアマネは、その先にもキャリアが続いていく資格だといえます(くわしくは主任ケアマネジャーとはをご覧ください)。

給料の実際:公的データと「幅」で見る

多くの方が気になるのが、「ケアマネになると給料はどう変わるのか」という点だと思います。ここは、公的な統計をもとに、めやすとしてお伝えします。

厚生労働省の「令和6年度 介護従事者処遇状況等調査」では、介護支援専門員(常勤)の平均給与額は月37万5,410円でした。同じ調査の介護職員(常勤)33万8,200円より高い結果ですが、これは個々の求人の給与差を保証するものではありません。ここでいう「平均給与額」は、介護職員等処遇改善加算を取得している事業所等を対象に、基本給・手当・一時金(賞与等の6分の1)を合計した月額です。求人票に書かれる「月給」や、税金・社会保険料を引いたあとの手取り額とは定義が違います。

そして、ここには大きな注意点があります。金額は、次のような要素で、かなり変わります。

  • ① 勤務先の種類(居宅の事業所か、施設か、地域包括支援センターか)
  • ② 地域(都市部と地方で水準が異なる)
  • ③ 経験や役職(主任ケアマネなど、上位の役割につくと変わる)
  • ④ 事業所の規模や経営状況

つまり、「ケアマネになれば必ず37万5,410円になる」というものではありません。条件のそろった事業所群における統計上の平均であり、実際の給与は求人票や面接で基本給・各種手当・賞与を分けて確認してください。とはいえ、現場の身体介護から相談・調整の専門職へと役割が変わることで、経験や資格が給与に反映されやすくなる傾向はあります。長く介護に関わってきた人にとって、その積み重ねが評価される道のひとつだといえます。額面と手取りの違いが気になる方は、介護職の手取りと給料明細の見方もあわせてご覧ください。

書類・担当件数・「制度の下請け」感——負担の現実も等身大で

ここまで前向きな面を中心に見てきましたが、負担のリアルを伏せておくのは誠実ではありません。ケアマネを実際に続けている人たちからは、いくつかの共通した悩みが聞こえてきます。

ひとつは、書類と担当件数の多さです。ケアプランや記録、給付管理など、正確さを求められる書類が絶えず発生します。前の章でふれた居宅の逓減制もあり、「件数を抱えれば抱えるほど一人ひとりに向き合う時間が削られる」というジレンマを感じる人もいます。もうひとつは、前章でふれた法定研修の負担、そして制度の板ばさみになりやすい立場から生まれる、いわゆる**「制度の下請け」感**です。国の制度と利用者・家族・事業者の間に立ち、板ばさみの調整役を一手に引き受ける——その責任の重さは、身体介護とはまた別種のものです。

こうした負担は、給与とセットで語られることもあります。福祉のしごと16年・ケアマネ11年目という方は、自身の基本給が18万円だとしたうえで、「ひとりが背負う責任も重いし、研修ばかりだし、任せられる仕事の範囲もどんどん増える」「(わずかな手当はあるものの)生活保護レベルだと思います」と、率直な思いをnoteにつづっています(当事者の声・原典より。真偽を保証するものではありません)。

前章の平均37万5,410円は手当や一時金まで含んだ数字、いっぽう先ほどの18万円は基本給そのもの——ものさしは違いますが、同じ「ケアマネ」でも、置かれた条件でこれだけの開きが出るということです。だからこそ、平均の数字だけを見て期待をふくらませるのでも、こうした厳しい声だけを見てあきらめるのでもなく、応募先ごとに条件を具体的に確かめることが何より大切になります。負担があることは、この仕事の価値を否定するものではありません。ただ、知らずに飛び込んで消耗するより、光と影の両方を分かったうえで選ぶほうが、長く続けられます。

こんな人に向いている/向き不向きの考え方

これまでの内容をふまえると、ケアマネには、こんな人が向いている傾向があります。

  • 人の話を、じっくり聞くのが好きな人。 利用者や家族の本音を引き出す姿勢が、よいケアプランの土台になります。
  • 調整役・まとめ役が苦にならない人。 いろいろな立場の人の間に立ち、あいだをつなぐ場面が多い仕事です。
  • 書類作成や、こまかい手続きを、ていねいにこなせる人。 ケアプランや記録など、正確な事務作業が欠かせません。
  • 制度やしくみを学ぶことに、抵抗が少ない人。 介護保険は複雑で、改正も続きます。学び続ける姿勢が力になります。
  • 身体介護の負担を減らして、長く介護に関わりたい人。 体力面の理由から次の働き方を探している人にも合う道です。

もちろん、これに当てはまらないと目指せない、というわけではありません。「話を聞くのは得意じゃないけれど、制度を考えるのは好き」——そんな一部だけの一致でも、十分にきっかけになります。向き不向きは、やってみて分かる部分も大きいものです。大切なのは「向いているか」を完璧に見極めることより、負担も含めて知ったうえで、自分の納得で選べているかだと考えてみてください。

次の一歩:今日できる小さな確認から

最後に、この記事の要点をふり返ります。

  • ケアマネジャー(介護支援専門員)は、利用者に合ったケアプランを作り、サービスと利用者をつなぐ「司令塔」。身体介護からは離れ、相談・調整が中心の仕事です。
  • なるまでの道は、「実務経験→試験→実務研修→登録」の4ステップ。受験資格は、介護福祉士などの国家資格や相談援助業務にもとづく実務を、原則5年以上(かつ900日以上)が基本の目安です。数え方は複雑で改正でも変わるため、必ず都道府県の最新の実施要項で確認してください。
  • 試験は都道府県が年1回実施。2024年度(第27回)の合格率は32.1%でしたが、年度差が大きい試験です。合格後はおよそ87時間の実務研修を修了します。
  • 更新制は廃止の方向ですが、法定研修そのものは続きます。施行時期は未確定なので、有効期限が近い人は最新情報を確認してください。
  • 令和6年度調査の平均給与額は月37万5,410円(介護職員は33万8,200円)。ただし手当と一時金を含む統計上の平均で、書類や責任の負担、事業所による給与差も現実にあります。

最後に、ひとつだけ。ケアマネの受験資格が「原則5年」と長く設定されているのは、意地悪ではありません。ケアプランという設計図は、机の上の知識だけでは描けないからです。この方はお風呂を何より楽しみにしている、この方は人が集まる場が少し苦手——そうした、現場でしか見えない一人ひとりの手ざわりを知っている人だけが、その人に本当に合う一曲を組み立てられます。あなたが現場で聞いてきた声、支えてきた暮らしの一つひとつが、そのままケアマネの「耳」になり、「引き出し」になります。

動き出すなら、まずは事実確認から。この記事のセルフ判定チェックで、自分の現在地を確かめる。「自分の実務経験は、いつ受験資格に届くのか」を、お住まいの都道府県の窓口に聞いてみる。まだ介護福祉士を持っていないなら、そこを起点に据える。どれも、今日のうちにできる小さな確認です。資格の全体像をもう一度たしかめたいときは介護の資格ロードマップを、ケアマネの前提になる国家資格から整えたいときは介護福祉士になるにはを、それぞれのぞいてみてください。指揮台は、あなたが現場で過ごした年月のぶんだけ、もう近くにあります。

よくある質問

ケアマネジャー(介護支援専門員)になるには、何が必要ですか?

大きく3つのステップがあります。まず、介護福祉士などの国家資格にもとづく業務や、法律で定められた相談援助業務で、原則5年以上(かつ実際に働いた日数が900日以上)の実務経験を積みます。次に、お住まいの都道府県が行う「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格します。最後に、合格後の「実務研修」(およそ87時間)を修了して登録・証の交付を受けると、ケアマネジャーとして働けます。受験資格の数え方は複雑で制度改正でも変わるため、必ず都道府県の最新の実施要項で確認してください。

受験資格の「原則5年以上」は、どう数えるのですか?

介護福祉士・看護師・社会福祉士などの国家資格にもとづく業務や、生活相談員などの相談援助業務に、通算して原則5年以上、かつ実際に働いた日数が900日以上たずさわった期間を指します。ポイントは3つで、資格を取る前の期間(無資格の期間など)は原則として数えない、対象になる職種・施設が決められている、期間と日数の両方を満たす必要がある、ということです。数え方は都道府県によって細部が異なるので、正確な要件は実施要項で確認してください。

ケアマネ試験の合格率は、どのくらいですか?難しいですか?

介護支援専門員実務研修受講試験の合格率は年度差が大きく、長く1〜2割台で推移してきましたが、2024年度(第27回)は約32%まで上がりました(受験者約5万4千人・合格者1万7,228人。厚生労働省の実施状況より)。やさしい試験ではありませんが、受験する人はすでに現場経験が豊富なので、制度の知識を計画的に補えば十分にねらえます。合格基準や出題範囲は年度で変わるため、その年の実施要項で確認してください。

ケアマネの給料は、どのくらいですか?現場の介護職より上がりますか?

厚生労働省の令和6年度調査では、介護支援専門員(常勤)の平均給与額は月37万5,410円で、同じ調査の介護職員(常勤)33万8,200円より高い結果でした。ただしこれは処遇改善加算を取得している事業所等を対象に、基本給・手当・一時金(賞与等の6分の1)を合計した統計上の平均で、求人票の月給や手取り額ではありません。勤務先の種類・地域・経験・役職で変わるため、応募先の基本給・手当・賞与を分けて確認してください。

居宅・施設・地域包括支援センターのケアマネは、何が違うのですか?

担当する利用者と働き方が違います。居宅ケアマネは自宅で暮らす利用者を担当し、訪問して面談しながら地域のサービスを組み合わせます(担当件数に目安があり、多く抱えすぎると報酬が減る「逓減制」があります)。施設ケアマネは特別養護老人ホームなどの入居者を担当し、同じ建物の多職種と密に連携します。地域包括支援センターのケアマネは、地域の高齢者の総合相談や介護予防のプランづくりを担い、主任ケアマネが中心的な役割を果たします。

ケアマネの更新研修や資格の更新制は、これからどうなりますか?

2026年に成立した改正法で、介護支援専門員証の更新制を廃止する方向が決まりました。ただし学び直しがなくなるわけではなく、更新とは切り離した法定研修を続けて受ける形になります。施行日は「公布後1年6か月以内に政令で定める日」で、2027年4月などに固定されたものではありません。新制度が始まるまでは現在の更新制が続くため、有効期限が近い人は、厚生労働省と都道府県の最新の案内を確認して手続きを進めてください。

出典


本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、正確性・最新性を保証するものではありません。 制度や施設の状況は変わることがあります。実際のご判断の前には、各施設・公式情報や公的機関でご確認ください。

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