資格・キャリア
介護福祉士になるには|3つの取得ルートと受験資格・国家試験・給料への効き方
現場で数年働いてきた人なら、「介護福祉士」という言葉に、少しだけ複雑な気持ちを持っているかもしれません。同じフロアの先輩が資格を取って、手当が少し増えたと聞いた。求人票を見ると、仕事内容はほとんど同じなのに、「介護福祉士」の欄だけ給料のめやすが一段上に書いてある。頭ではわかっている。でも「実務経験が何年もいるらしい」「国家試験に受からないといけない」と聞くと、自分にはまだ遠い話に思えて、つい後回しにしてしまう——。
先に、これだけはお伝えします。**介護福祉士が「遠い」と感じるのは、あなたの努力や覚悟が足りないからではありません。**制度の入り口が、少し分かりにくいだけです。というのも、実務経験ルートで求められる「3年の実務経験」は、いま現場で働いている、その時間そのものだからです。学校に通い直す必要も、仕事を辞めて勉強に専念する必要もありません。日々のシフトが、そのまま受験資格に積み上がっていきます。
この記事では、介護福祉士とは何ができる資格かから始めて、なるための3つのルート、国家試験の中身、給料やキャリアへの効き方、そして働きながら合格までたどり着く進め方まで、公的なデータをもとにやさしくお伝えします。あわせて、「自分はどのルートで、いつ受験資格を満たすのか」を自分で確かめられる受験資格セルフ判定もお渡しします。資格を取ることだけが正解ではありません。でも、地図が見えれば、取るか取らないかも、落ち着いて選べるようになります。
まず結論:介護福祉士は「今の延長線上」で目指せる国家資格

細かい話に入る前に、この記事のいちばん大切な要点を、先に3つお伝えします。
- 働きながら目指せる資格です。 多くの人が通うのは「実務経験ルート」。原則3年以上の実務経験と、このルートの受験要件である実務者研修の修了を積み上げ、年1回の国家試験に合格する道です。日々の勤務が、そのまま受験資格になります。
- 国家試験は今、筆記だけです。 第37回(2024年度)から実技試験は廃止され、現在はマークシートの筆記試験のみ。合格率は近年おおむね7〜8割で、国家資格のなかでは高めです(第38回は70.1%・厚生労働省)。ただし全科目群で得点する必要があり、油断は禁物です。
- 取ると、給料・仕事の幅・キャリアの土台が広がります。 令和6年度の国の調査では、月給・常勤の平均給与額は無資格290,620円に対し介護福祉士350,050円と、月およそ6万円の差がありました(定義や集団の違いに注意・後述)。国家資格なので、引っ越しても転職しても全国で通用します。
つまり介護福祉士は、まったく新しい世界に飛び込む資格ではなく、「今いる場所から一段のぼる」ための資格です。では、その一段をどうのぼるのか。地図を広げていきましょう。
介護福祉士とは? 介護で唯一の「国家資格」で何ができるか

はじめに、介護福祉士がどんな資格で、何ができるのかを整理します。
介護福祉士は、**介護の分野で唯一の「国家資格」です。国家資格とは、国が法律にもとづいて「この人はその分野の専門的な知識と技術を持っている」と認める資格のこと。介護福祉士は「社会福祉士及び介護福祉士法」という法律にもとづく資格で、資格を持たない人が「介護福祉士」と名乗ることはできません。これを名称独占(めいしょうどくせん)**といいます(厚生労働省「介護福祉士の概要について」)。
「名称独占」というのは、裏を返せば、介護の仕事そのものは資格がなくてもできるということでもあります。実際、無資格で働いている介護職員はたくさんいます。では介護福祉士を持つと何が変わるのか。ポイントは3つあります。
1つ目は、専門職としての位置づけです。 初任者研修や実務者研修も大切な資格ですが、これらは国が定めた「研修(決められた講座を修了するもの)」です。それに対して介護福祉士は、国家試験に合格して得る「国家資格」であり、位置づけが一段違います。だからこそ、多くの現場で一つの目標にされています。介護福祉士の登録者数は、**2,004,027人(令和7年3月末現在・厚生労働省)**にのぼり、現場の主力を担う資格になっています。
2つ目は、任される仕事の幅です。 介護福祉士になると、ただ介助ができるだけでなく、チームのまとめ役や後輩の指導を任される機会が増えます。ケアの計画づくりに関わったり、利用者や家族への説明を担ったりする場面も広がります。「介助をする人」から「現場を動かす人」へと、役割が広がっていくイメージです。
3つ目は、できる医療的ケアの範囲です。 介護福祉士は、一定の研修を修めるなどの条件のもとで、たんの吸引や経管栄養といった「喀痰吸引等(かくたんきゅういんとう)」を、医師の指示の下で行うことができます(社会福祉士及び介護福祉士法)。無資格の介護職員が同じ行為を行うには別途「喀痰吸引等研修」の修了などが必要で、こうした医療的ケアが資格のなかに位置づけられていることは、専門職としての信頼につながる部分です。
まとめると、介護福祉士は「名乗れる肩書き」であると同時に、現場で任される仕事の質と幅を一段引き上げる資格だといえます。
介護福祉士になるための、3つのルート

では、どうすれば介護福祉士になれるのでしょうか。取得ルートは大きく分けて次の3つです。厚生労働省と社会福祉振興・試験センターの案内をもとに、まず全体像を並べておきます。
| ルート | どんな人向けか | かんたんな流れ |
|---|---|---|
| 実務経験ルート | 働きながら目指す人(最も一般的) | 原則3年以上の実務経験+実務者研修 → 国家試験に合格 |
| 養成施設ルート | 学校で学んでから目指す人 | 介護福祉士養成施設(2年以上)を卒業 → 国家試験に合格(経過措置あり・後述) |
| 福祉系高校ルート | 福祉系の高校で学ぶ人 | 指定の福祉系高校で必要な科目を修めて卒業 → 国家試験に合格 |
いずれのルートも、最後は国家試験の合格でゴールする点は共通です。このうち、すでに現場で働いている人・これから働きながら目指す人の多くが選ぶのが、いちばん上の実務経験ルートです。この記事は実務経験ルートを中心にお伝えし、次の章で「自分がどのルートに当てはまるか」を判定できるようにします。まずは、それぞれのルートの中身を簡単に見ておきましょう。
実務経験ルート:働きながら目指す、王道の道
働きながら介護福祉士を目指す人が、いちばん多く通るのがこのルートです。受験資格は、大きく次の2つを満たすことです。
- 原則3年以上の実務経験(従業期間が1,095日以上、かつ従事日数が540日以上)
- 実務者研修の修了
無資格からでもこのルートは始められます。今日から現場で働き始めた人も、その勤務が実務経験として積み上がっていきます。ただし2024年4月から、無資格で介護に直接携わる職員には認知症介護基礎研修の受講が義務づけられました(身体介護に限らず対象。新規採用者はおおむね1年の猶予・eラーニング受講可)。無資格スタートの人は、この基礎研修を入り口に、実務経験を積みながら実務者研修へと進んでいく形になります。
実務経験の「3年」の数え方には、見落としやすい落とし穴があります。ここは持ち帰り資産に直結するので、次の章でくわしく扱います。ここでは「原則3年=在籍1,095日以上かつ従事540日以上」という2本立ての条件だと、頭の隅に置いてください。
2つ目の実務者研修は、実務経験ルートで受験するために必要な研修です。無資格からでも受講でき、初任者研修をすでに持っていれば一部の科目が免除されます(実務者研修そのものは第29回・平成28年度の試験から受験の必須要件になりました)。働きながらでおよそ6か月ほどが目安で、通信学習を中心に通学(スクーリング)を組み合わせる形が一般的です。取り方の詳細は実務者研修とは(取り方・介護福祉士への道)のページにまとめています。
養成施設ルート:学校で学んでから目指す道
もう一つが、**介護福祉士養成施設(専門学校・短大など)**で2年以上かけて介護を体系的に学び、国家試験の合格を目指す道です。実務経験がなくても目指せるのが特徴で、これから介護の道に入る学生や、じっくり学び直したい人に向いています。
注意したいのは、養成施設卒業者の国家試験をめぐる経過措置です。もともと養成施設を卒業すれば無試験で資格を得られた時代がありましたが、制度改正により、平成29年度以降は国家試験の合格が原則になりました。ただし当面のあいだ、卒業しても国家試験に合格していない人には、卒業後5年間の「暫定的な資格」が認められる経過措置が設けられています(この5年のあいだに国家試験に合格するか、5年間続けて介護等の業務に従事すれば、資格を続けられる仕組み)。
この経過措置の対象となる卒業年度や扱いは、法改正によって延長・変更が重ねられており、年度によって条件が異なります。ここで細かい年度を断定すると、かえって誤解のもとになります。養成施設ルートを検討する人は、進学前に必ず、その養成施設と社会福祉振興・試験センターの最新案内で、自分の卒業年度がどう扱われるかを確認してください。「学校を出れば自動で資格が取れる」と思い込まないことが、いちばん大切な注意点です。
福祉系高校ルート:高校で学んで目指す道
3つ目は、指定された福祉系高校で介護に必要な科目を学んで卒業し、国家試験の合格を目指すルートです。高校での学びが、そのまま受験資格につながります。こちらは高校進学の段階からコースが分かれるため、中学生やその保護者が進路を考えるときに関わってくるルートです。入学した年度によって扱いが変わる部分があるので、詳細は在籍校と試験センターで確認するのが確実です。
3つのルートを見比べると、今すでに働いている人にとっては、仕事を続けられる実務経験ルートが最も現実的だとわかります。次の章では、この実務経験ルートを軸に、「自分はいつ受験資格を満たすのか」を自分で判定していきます。
【持ち帰り資産】受験資格セルフ判定+準備チェック

ここが、この記事でいちばん持ち帰ってほしい部分です。介護福祉士を目指すとき、最初にすべきことは、勉強でも申し込みでもありません。「自分はどのルートで、いつ受験資格を満たすのか」を数えて確かめることです。ここがあいまいなまま走り出すと、「受けられると思っていた年に、条件がわずかに足りなかった」という、いちばん避けたいつまずきにつながります。次の4ステップを、手元のメモやスマホで実際にたどってみてください。
ステップ1:自分のルートを見分ける
まず、自分がどのルートに当てはまるかを確認します。次のように考えると整理できます。
- すでに介護の仕事をしている/これから働きながら目指すなら、実務経験ルートです(この記事の中心)。
- これから専門学校・短大などで学ぶ予定なら、養成施設ルートです。
- **福祉系の高校で学んだ(学ぶ予定の)**なら、福祉系高校ルートです。
多くの読者は、いちばん上の実務経験ルートに当てはまるはずです。以下は、その実務経験ルートの人に向けたステップです。
ステップ2:「在籍1,095日」と「働いた540日」を、別々に数える
実務経験ルートの受験資格でいちばん間違えやすいのが、この「3年」の数え方です。正確には、次の2つの条件を両方満たす必要があります。
- 従業期間が1,095日以上:対象の施設・事業所に「在籍」していた期間(=カレンダー上の日数)。産休・育休・病気などで休職していても、籍があれば含まれます。
- 従事日数が540日以上:その施設・事業所で、実際に介護等の業務に「従事した」日数。短時間勤務でも1日は1日として数えます。
なぜ2つあるのか。たとえば週3日ペースで働いている人は、在籍して丸3年(1,095日)が過ぎても、実際に出勤した日数を数えると540日にわずかに届かない、ということが起こり得ます。逆にフルタイムに近い働き方なら、在籍3年を迎えるころには540日はとうに超えています。「在籍3年」と「働いた540日」は、必ずしも同時にゴールしない——だから両方を別々に数える必要があるのです。複数の職場で働いた経験は合算できますが、同じ日に2か所で働いた場合は1日として数えます。
自分の勤務が実務経験の対象になるか、あと何日で条件を満たすかは、社会福祉振興・試験センターの案内(従業期間計算表など)と、勤務先で必ず確認してください。制度は年度で変わることがあります。
ステップ3:実務者研修を「試験日から逆算」して押さえる
実務経験の日数と並んで欠かせないのが、実務者研修の修了です。そして国家試験は年に1回。だから、実務者研修は受けたい試験日から逆算して、早めに片づけておくのが鉄則です。「実務経験の日数は満たしたのに、実務者研修の修了が間に合わず来年に持ち越し」——これも順番を誤ると起きがちなつまずきです。研修はおよそ6か月が目安なので、受験したい年から逆算して、遅くとも半年以上前には受講を始められるよう計画します。受講料は職場の支援制度で補助してもらえることも少なくないので、申し込む前に「使える制度はありますか」と一言確認しておくと負担が変わります。
ステップ4:「実務経験見込み」で申し込めるかを確認する
もう一つ知っておくと安心なのが、「見込み」での受験申し込みです。受験する年の3月31日までに実務経験の要件を満たす見込みがあれば、その時点で条件を満たしきっていなくても「実務経験見込み」として申し込める仕組みがあります。つまり、条件達成の直前でも、その年の試験を受けられる可能性があるということ。申込時期・必要書類(勤務先に書いてもらう実務経験証明書など)は年度で決まっているので、受験を決めたら早めに試験センターの案内で確認しましょう。
この4ステップを一度たどっておけば、「自分は◯年◯月ごろに受験資格が整い、それに間に合わせるには実務者研修を△月までに始めればいい」という、自分だけのスケジュールが見えてきます。ゴールの日付が定まれば、あとはそこから逆算するだけです。
国家試験の中身:筆記だけになった試験と、合格のめやす

受験資格の見通しが立ったら、次は「試験そのもの」を知っておきましょう。中身が分かっていると、準備の計画が立てやすくなります。
現在の介護福祉士国家試験は、マークシート方式の筆記試験のみです。前にも触れたとおり、実技試験は第37回(2024年度)から廃止されました。実技の対象になる受験者が著しく減ったことが背景で、実務経験ルートでは実務者研修の修了が受験資格に含まれているため、当日に介護技術を実演する試験はありません。準備は筆記対策に集中できます。
出題は、介護の幅広い分野から行われます。試験は4つの領域(人間と社会/こころとからだのしくみ/医療的ケア/介護)とそれらを横断する総合問題で構成され、その下にいくつもの試験科目群が置かれています(社会福祉振興・試験センター「出題基準」)。人間の尊厳と自立、社会の理解、介護の基本、コミュニケーション技術、生活支援技術、介護過程、発達と老化の理解、認知症の理解、障害の理解、こころとからだのしくみ、医療的ケア——といった分野から、近年は全125問前後が出題されます。
合格の基準は、大きく2つあります。総得点が基準以上であること(総得点のおおむね6割程度を目安に、その年の問題の難易度で補正した点数以上。たとえば第37回は125点満点で70点が基準でした)と、すべての科目群で得点していることです。後者が意外な落とし穴で、総得点が足りていても、どれか一つの科目群で0点があると不合格になります。得意分野で稼ぐより、苦手分野をゼロにしない準備が大切、というのが介護福祉士試験の特徴です。
合格率は、近年おおむね7〜8割で推移しています。直近では**第37回(2025年1月)が78.3%、第38回(2026年1月)が70.1%**でした。第38回は受験者78,469人に対し合格者54,987人です(厚生労働省「第38回介護福祉士国家試験合格発表について」)。国家資格のなかでは高めの合格率で、現場経験のある人が計画的に準備すれば十分に手が届く水準です。ただし年によって基準点や難易度は変わるため、「受かって当たり前」と気を抜かず、科目の取りこぼしをなくす準備を積むことが大切です。具体的な勉強の進め方は、介護福祉士 国家試験の勉強法(働きながら合格するスケジュール)のページにまとめています。
なお、2025年度の第38回試験から、筆記試験を**3つのパートに分けて評価する「パート合格」**の仕組みが始まりました。試験全体では不合格でも、パートごとの基準を満たしたパートは、翌年・翌々年の試験でそのパートの受験が免除されます。第39回(2026年度)からは、免除の対象者は「全パートを受けるか、不合格のパートだけを受けるか」を選べます。初めて受験する人は全パートを受験します。適用条件を含む最新の制度は、受験前に社会福祉振興・試験センターの案内で必ず確認してください。
給料・キャリアへの効き方:資格別の給与データで見る

「がんばって取るからには、それに見合うものが欲しい」——そう思うのは当然です。介護福祉士を取ると、給料やキャリアにどう効くのか。ここは公的なデータを軸に、正直に見ていきましょう。
まず給料です。厚生労働省の令和6年度「介護従事者処遇状況等調査」では、保有資格別の平均給与額が次のように公表されています。
| 保有資格 | 平均給与額(月給・常勤) |
|---|---|
| 保有資格なし | 290,620円 |
| 介護職員初任者研修 | 324,830円 |
| 介護福祉士 | 350,050円 |
無資格と介護福祉士の差は、月およそ6万円。年に直せば小さくない差です。ただし、この数字はいくつかの前提つきで読む必要があります。
この平均給与額は、処遇改善加算を取得した事業所の月給・常勤の介護職員について、基本給・手当に一時金(4〜9月支給額の6分の1)を加えた統計上の平均です(令和6年9月時点)。特養だけの数字ではなく、求人票の「月給」とも定義が異なります。また、各資格群は経験年数・役職・夜勤回数などが異なる集団なので、資格を取れば誰でも差額どおり上がる、という意味ではありません。それでも、介護福祉士の群が無資格の群より一貫して高い平均だったことは、資格を活かす働き方を考える手がかりになります。
同じ調査では、勤続年数による差も出ています。勤続2年未満は298,760円、10年以上は359,040円。資格と経験を積み重ねるほど、平均は段階的に上がっていく傾向が読み取れます。また施設の種類による幅も大きく、特別養護老人ホーム361,860円・介護老人保健施設352,900円に対し、通所介護(デイサービス)294,440円と、同じ介護職員でも働く場によって差があります(いずれも同調査・平均給与額)。裏を返せば、同じ介護福祉士でも「どのタイプの施設で、どう働くか」で手取りは変わるということ。だからこそ、資格を取ったら、その資格を活かせる働き方・職場を選ぶことが大切になります。実際の金額は、必ず求人票や労働条件通知書で確認してください。給料の全体像は介護職の給料の実際(平均・手取り・上げる方法)でくわしく扱っています。
給料以外の「効き方」も見ておきましょう。介護福祉士は、次のキャリアへの土台になります。たとえば、利用者一人ひとりに合った介護の計画書(ケアプラン)を作る専門職、ケアマネジャー(介護支援専門員)。ケアマネを目指すには、介護福祉士などの国家資格を持ったうえで、さらに一定の実務経験を積むことが求められます。つまり介護福祉士は、ケアマネへの入り口でもあるのです(ケアマネジャーになるには)。そのほか、サービス提供責任者や施設の管理者といった道にもつながります。
そして、国家資格は全国で通用するという強みも忘れられません。結婚・引っ越し・家庭の事情で職場や地域を変えることになっても、介護福祉士の資格はそのまま持ち運べます。介護の職場は人手不足が続いており、介護労働安定センターの令和6年度調査でも介護職員の離職率は12.8%で、全産業と比べて突出して高いわけではありません。「全国で、長く働ける専門職」の土台として、資格が支えになってくれます。
働きながら合格まで:焦らず進めるための考え方

最後に、働きながら合格までたどり着くための考え方を、無理のない順番で整理します。ポイントは、「一気に頑張る」ではなく「早めに段取りして、細く長く続ける」ことです。
まず、日数を数える。 持ち帰り資産のステップ2でお伝えしたとおり、最初の一手は「自分の実務経験が、いつ受験資格を満たすのか」を確かめることです。在籍1,095日と従事540日を別々に数え、到達時期をはっきりさせる。すべての計画は、ここから逆算して立てます。
次に、実務者研修を先に片づける。 試験は年1回なので、実務者研修は受けたい試験日から逆算して早めに。職場に受講費用の支援制度がないか、先に聞いておきましょう。
そして、筆記対策は細く長く。 日数と研修の見通しが立てば、あとは筆記の勉強です。まとまった時間を待つより、通勤の合間や休憩中に問題集を少しずつ進めるほうが、追い込みで一気に詰め込むより結果的に近道になります。介護福祉士は現場経験が豊富な人が受ける試験なので、制度や用語の知識を計画的に補えば、十分に手が届きます。可能なら一人で抱え込まず、同じ年に受験する同僚と過去問を出し合ったり、進み具合を報告し合ったりすると、心細さがずいぶん和らぎます。
無理は禁物です。夜勤や家庭の事情で、思うように勉強が進まない時期もあるでしょう。そんなときは、今年の合格に固執せず、「来年の試験に照準を合わせ直す」という選択も十分にありです。介護福祉士は、一度きりのチャンスではありません。自分の生活とペースを守りながら、いちばん受かりやすいタイミングを選ぶ——それも立派な戦略です。
まとめ:今の仕事が、そのままゴールへの道になる

最後に、この記事の要点を振り返ります。
- 介護福祉士は、介護で唯一の国家資格(名称独占)。登録者は200万人を超え、現場の主力を担う資格です。多くの人が、働きながら「実務経験ルート」で目指します。
- 実務経験ルートの受験資格は、原則3年以上の実務経験(在籍1,095日以上かつ従事540日以上)+実務者研修の修了。「在籍3年」と「働いた540日」は別々に数えるため、働き方によっては片方が先に届きます。正確な要件は社会福祉振興・試験センターの最新案内で確認を。
- 国家試験は年1回の筆記のみ(第37回から実技廃止)。全科目群で得点する必要があり、合格率は近年7〜8割(第38回70.1%)。
- 資格別の平均給与額(令和6年度調査)は、無資格290,620円・初任者研修324,830円・介護福祉士350,050円。定義や集団の違いを含む統計上の平均で、求人票の月給とは別物です。資格はケアマネなど次のキャリアの土台にもなります。
冒頭でお伝えした「遠そうに見える」という感覚を、もう一度思い出してみてください。介護福祉士が遠く感じるのは、通い直しや専念が必要な資格だと思い込んでいるからかもしれません。でも実際には、あなたが今日出勤したその一日も、受験資格の540日のうちの1日として、確かに数えられていきます。ゴールは新しい場所にあるのではなく、今歩いている道の、その先にあります。
だから、最初の一歩は「勉強を始める」ことではなく、**「自分の実務経験が、あと何日で条件を満たすのか、数えてみる」**ことです。到達時期がわかれば、実務者研修も筆記の勉強も、そこから逆算するだけ。今の職場に支援制度があるか聞いてみるのも、同じくらい小さな一歩です。資格の全体像をつかみたくなったら介護の資格ロードマップを、受験に必要な研修を知りたくなったら実務者研修とはを、あわせて眺めてみてくださいね。取るか取らないかを決めるのは、地図を広げてからで大丈夫です。
よくある質問
介護福祉士になるには、実務経験は何年必要ですか?
働きながら目指す「実務経験ルート」では、原則3年以上の実務経験に加えて実務者研修の修了が受験資格になります。この「3年」は、在籍期間(従業期間)が1,095日以上あることと、実際に介護等の業務に従事した日数が540日以上あることの、両方を満たす必要があります。在籍と出勤日数は別々に数えるため、勤務日数が少ない働き方だと在籍3年が過ぎても540日に届かないことがあります。対象になる施設・職種にも条件があるので、正確な要件は試験を実施する社会福祉振興・試験センターの最新案内で確認してください。
介護福祉士の国家試験に、実技試験はありますか?
実技試験は第37回(2024年度)から廃止され、現在の国家試験は筆記試験(マークシート)のみです。実務経験ルートで実務者研修の修了が必要なのは、実技試験を免除するためではなく、受験資格そのものに含まれているためです。したがって試験当日に介護技術を実演する場面はなく、準備は筆記対策に集中できます。受験年度の試験科目・日程は社会福祉振興・試験センターの案内で確認してください。
働きながらでも介護福祉士を目指せますか?
目指せます。実務経験ルートはむしろ「働きながら取る」ことが前提の仕組みで、日々の勤務そのものが受験資格(実務経験)に積み上がっていきます。受験に必要な実務者研修も、通信学習を中心に仕事と両立しやすいように作られています。残る課題は筆記試験の勉強時間をどう作るかで、通勤や休憩の合間に少しずつ進める形が現実的です。勤め先が実務者研修の受講費用を補助する制度を持っていることもあるので、まず職場に確認してみてください。
介護福祉士を取ると、給料はどのくらい上がりますか?
厚生労働省の令和6年度調査では、処遇改善加算を取得した事業所の月給・常勤の介護職員の平均給与額は、保有資格なし290,620円、介護職員初任者研修324,830円、介護福祉士350,050円でした。無資格と介護福祉士の差は月およそ6万円です。ただしこれは基本給・手当に一時金の一部を加えた統計上の平均で、求人票の月給とは定義が異なります。経験年数や夜勤回数が違う集団どうしの比較でもあるため、資格を取れば誰でも差額どおり上がると約束するデータではありません。実際の金額は求人票・労働条件通知書で確認してください。
未経験・無資格からでも介護福祉士を目指せますか?
目指せます。実務経験ルートは無資格からでも始められ、働きながら実務経験を積み、途中で実務者研修を修了して国家試験に進みます。なお2024年4月から、無資格で介護に直接携わる職員は「認知症介護基礎研修」の受講が義務づけられました(身体介護に限らず対象。新規採用者はおおむね1年の猶予・eラーニング可)。学校でじっくり学びたい場合は養成施設ルートもあります。今すでに働いているなら、仕事を続けられる実務経験ルートが選ばれることが多いです。
養成施設ルートと実務経験ルートは、どちらを選べばいいですか?
状況によります。今すでに介護の現場で働いているなら、仕事を続けながら日々の勤務が受験資格になる実務経験ルートが無理のない選び方です。一方、これから介護の道に入る人や、体系的に学び直したい人には、実務経験がなくても目指せる養成施設ルート(専門学校・短大などで2年以上)が向いています。養成施設ルートは学費と通学時間が必要で、卒業者の国家試験をめぐる経過措置は年度によって扱いが変わるため、進学前に養成施設と試験センターの最新案内で確認してください。
出典
- 厚生労働省「介護福祉士の概要について」(定義・名称独占・資格取得ルート・登録者数) (2025年閲覧)
- 公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「受験資格(介護福祉士国家試験)」 (2026年度(令和8年度))
- 公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「パート合格(合格パートの受験免除)について」 (2026年度(令和8年度))
- 厚生労働省「第38回介護福祉士国家試験合格発表について」(受験者数・合格者数・合格率) (2026年(令和8年))
- 厚生労働省「令和6年度 介護従事者処遇状況等調査結果」(保有資格別・サービス種別の平均給与額) (2024年度(令和6年度))
- 公益財団法人 介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査」(離職率・不足感) (2024年度(令和6年度))
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、正確性・最新性を保証するものではありません。 制度や施設の状況は変わることがあります。実際のご判断の前には、各施設・公式情報や公的機関でご確認ください。
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