給料・待遇

介護職の給料が上がらないと感じたら|昇給の仕組みと、上げるための現実的な方法

公開: 2026年7月21日 / 編集: 介護のしるべ編集部

「もう何年もここで働いているのに、給料の数字が、あのころとほとんど変わっていない」——給与明細を見て、そんな静かな失望を感じたことはありませんか。最初のうちは「経験を積めば、そのうち上がるだろう」と思っていた。けれど1年たっても、2年たっても、上がるのはほんのわずか。同期はもう辞めてしまったし、後輩に仕事を教える立場になったのに、手取りは新人のころとそう変わらない。そんな毎日のなかで、「自分はこの仕事で、ちゃんと認められているんだろうか」と、ふと不安になる夜があるかもしれません。

まず、いちばん先にお伝えしたいことがあります。あなたの給料が上がらないのは、あなたの働きが足りないからではありません。 毎日、腰をかがめて介助をして、認知症の方に何度も同じ説明をして、夜勤で眠気と戦って——その一つひとつは、確かに価値のある労働です。それでも数字が動きにくいのには、介護という仕事のお金の流れにまつわる、はっきりした「仕組みの理由」があります。

そして、この記事だけの視点を、ここでひとつお約束します。それは、「上がらない」の多くは仕組みの問題であって、その仕組みが見えれば、打ち手も見えてくる、ということです。何がどうなって上がりにくいのかが分かれば、「どこを動かせば上がるのか」も分かる。霧が晴れるように、次の一手が見えてきます。この記事は、その霧を晴らすための地図です。

具体的には、まず「昇給」には2つの種類があること(これを混同すると、話が見えなくなります)を整理します。次に、介護で上がりにくいと感じられる仕組みを、制度批判ではなく「お金の流れの説明」としてやさしくお伝えします。そのうえで、国の賃上げの後押し(処遇改善加算)と、今より上げるための現実的な打ち手を、順に見ていきます。読み終わるころには、「上がらない」という漠然とした不安が、「じゃあ、次にこれをやってみよう」という具体的な一歩に変わっているはずです。

この記事で伝えたい、3つのこと

こまかい話に入る前に、この記事の芯になる3つのことを、先にお伝えします。

  • 「昇給」には2種類ある。 毎年少しずつ上がる「定期昇給」と、基本給の水準そのものが底上げされる「ベースアップ」。この2つは別物で、分けて理解すると、自分の給料に何が起きているのかが見えてきます。
  • 上がりにくいのは、多くが「仕組み」の問題。 給料の原資が介護報酬という制度に大きく左右されること、事業所の規模で体力に差が出ること——あなた個人のせいではありません。
  • 仕組みが見えれば、打ち手も見える。 定期昇給の確認、ベースアップの後押しを受けること、資格・役職・夜勤、そして転職。動かせる部分は、ちゃんとあります。

「上がらない=自分の価値が低い」ではなく、「上がらない=仕組みの中にいる」。この視点の切り替えが、この記事の出発点です。それでは、まず「昇給の2種類」から見ていきましょう。

そもそも「昇給」には2つの種類がある

「給料が上がる」と一口に言っても、実は中身が2つあります。ここをごちゃまぜにしていると、「上がった/上がらない」の話がかみ合わなくなります。まずは、この2つをきれいに分けましょう。

定期昇給:毎年、少しずつ上がる仕組み

**定期昇給(ていきしょうきゅう)**とは、勤続年数や経験、評価に応じて、毎年決まった時期に、基本給が少しずつ上がっていく仕組みのことです。多くの職場では、給与規程(給料のルールを定めた社内の決まり)のなかに「毎年◯月に昇給」「昇給額は年◯円〜」といった形で定められています。

イメージとしては、階段を一段ずつのぼるようなものです。1年で上がる額はそれほど大きくなくても、5年、10年と積み重なれば、それなりの差になります。逆に言えば、この階段そのものが用意されていない職場では、何年いても基本給が動きません。「上がらない」と感じているとき、そもそも自分の職場に定期昇給の仕組みがあるのかどうかは、まっ先に確認したいポイントです。

なお、国の「令和6年度 介護従事者処遇状況等調査(かいごじゅうじしゃしょぐうじょうきょうとうちょうさ)」——介護で働く人の給料の状況を国が毎年しらべている調査——でも、賃金改善の方法として「定期昇給を実施した」事業所が一定の割合を占めています。つまり、定期昇給は介護の現場でも広く行われている一方で、すべての職場が同じように運用しているわけではない、ということです。

ベースアップ:基本給の「水準そのもの」を底上げする

もう一つがベースアップです。これは、個人の勤続や評価とは関係なく、職場で働く人全体の基本給の水準そのものを、まとめて引き上げることをいいます。「ベア」と略されることもあります。

定期昇給が「一人ひとりが階段を一段のぼる」ことだとすれば、ベースアップは「階段全体を、下から持ち上げる」ようなイメージです。たとえば「全員の基本給を一律で◯%上げる」といった形で行われます。だから、勤続年数が浅い人も、ベテランも、そろって水準が上がります。

介護の世界でこのベースアップが近年注目されているのは、国の制度がそれを後押ししているからです(くわしくは後の章でお伝えします)。実際、先ほどの令和6年度の調査でも、賃金改善の方法として「ベースアップ等により対応した」事業所が、定期昇給を上回る割合となっています。

2つを分けて考えると、何が見えるか

この2つを分けて考えると、「上がらない」の正体が見えやすくなります。

  • 定期昇給がない、または小さいなら——それは、あなたの職場の「毎年の階段」が用意されていない、または段差が低い、ということ。
  • ベースアップの恩恵が届いていないなら——それは、国の後押しが、職員一人ひとりまで十分に回っていない可能性がある、ということ。

「なんとなく上がらない」を、この2つの視点で分解してみてください。自分の職場に足りないのは階段なのか、底上げなのか——それが見えると、次に確認すべきことがはっきりします。

なぜ介護は「上がりにくい」と感じられるのか

昇給の2種類が分かったところで、次に大事なのが「そもそも、なぜ介護は上がりにくいのか」という仕組みの理解です。ここが腑に落ちると、「自分のせいではない」と肩の力が抜けますし、対策の的も絞れます。制度への批判ではなく、あくまで「お金がどこから来ているか」の説明として読んでください。

給料の原資が、介護報酬という制度に左右されるから

介護施設や事業所の収入の多くは、介護報酬(かいごほうしゅう)——利用者さんが介護サービスを使ったときに、介護保険から事業所に支払われるお金——でできています。そして、この介護報酬の単価は、国が制度で決めています。

これがポイントです。一般の会社なら、良い商品やサービスを開発して高く売れば、増えた利益を給料に回せます。でも介護は、収入のもとになる単価の多くが制度で決まっているため、現場がどれだけがんばって質を上げても、その分だけ収入が青天井に増えるわけではないのです。事業所が自由に「うちは賃上げしよう」と決めにくい、大きな理由がここにあります。

もちろん、介護報酬は国の見直し(介護報酬改定)で定期的に調整されますが、その改定でどれだけ賃上げに回せるかも、制度の枠組みしだいです。つまり、あなたの給料の天井は、あなたや職場の努力だけでなく、この制度の設計に大きく左右されている——これは、努力不足の話ではまったくない、ということです。

事業所の規模によって、体力に差が出るから

もう一つの背景が、事業所の規模による体力の差です。介護の事業所には、いくつもの施設を運営する大きな法人もあれば、地域で1〜2か所を営む小さな事業所もあります。

規模の大きい法人は、経営に余力があり、昇給の仕組みや手当を整えやすい傾向があります。一方、規模の小さい事業所は、利用者数の少しの増減が経営に響きやすく、賃上げの余力を確保するのが難しい場面もあります。同じ「介護職」でも、どんな規模の職場で働くかによって、昇給の見通しが変わってくる——これも、個人の頑張りとは別の次元の話です。

「隣の施設の友だちは昇給したのに、うちは……」という差が生まれるのは、こうした経営の体力差が理由であることが少なくありません。あなたの働きぶりが劣っているから、ではないのです。

「上がらない」は、あなたのせいではない

ここまでを、いったんまとめます。介護が上がりにくいと感じられる背景には、

  • 給料の原資が、国が単価を決める介護報酬に大きく左右されること
  • 事業所の規模によって、賃上げの体力に差が出ること

という、あなた個人ではどうにもしにくい「仕組み」の要因があります。だから、「こんなに働いているのに上がらないのは、自分の力不足なのでは」と、自分を責める必要はまったくありません。ここは、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

そして——仕組みの話だからこそ、「仕組みのどこを動かせば上がるのか」を知れば、打ち手が見えてきます。次の章から、その打ち手を一つずつ見ていきましょう。まずは、近年の追い風になっている「国の後押し」からです。

追い風:国の「処遇改善加算」による底上げ

上がりにくい仕組みがある一方で、近年は国による賃上げの後押しが、はっきりと強まっています。その中心にあるのが、**処遇改善加算(しょぐうかいぜんかさん)**という制度です。

処遇改善加算とは、ひとことで言うと

処遇改善加算とは、ひとことで言えば、国が「介護で働く人の給料を上げるため」に、事業所へお金を上乗せする仕組みです。介護報酬に上乗せする形で事業所へお金が入り、そのお金を、職員の賃金改善(基本給や手当の引き上げなど)に使うことがルールになっています。

前の章で「給料の原資は介護報酬で決まっていて、上がりにくい」とお伝えしました。処遇改善加算は、まさにその原資の一部を、国が意図的に「賃上げ用」として上乗せしてくれる仕組み、と考えると分かりやすいです。上がりにくい構造に対する、国からの「てこ入れ」というわけです。

2024年の一本化と、2026年6月の対象拡大

この処遇改善のしくみは、これまで複数の加算に分かれていて、少し複雑でした。それが、2024年(令和6年)6月に「介護職員等処遇改善加算」へ一本化されました。さらに2026年6月からは、職員間の配分ルールを弾力化しつつ、居宅介護支援などにも対象を広げる見直しが行われています。加算による額と同等以上の賃金改善が必要ですが、あなた個人への金額や支給方法は全国一律ではありません。

一本化にあわせて、加算率(上乗せされる割合)の引き上げも行われました。国は、この見直しによって、介護で働く人の基本給などが段階的に底上げされることをめざしています。前の章でお伝えした「ベースアップ」を、制度として後押しする仕組みと理解してください。

この加算が、あなたの昇給の追い風になる

大切なのは、この加算が、あなた自身の賃上げの追い風になりうる、ということです。実際、国の令和6年度の調査でも、賃金改善の方法として「ベースアップ等」で対応した事業所が多く、基本給や平均給与は前年より増加した、という結果が示されています。制度の後押しが、少しずつ数字に表れてきているのです。

ただし、注意したい点もあります。加算をどう職員に配るか(毎月の手当か、賞与にまとめてか、基本給に組み込むか)は、事業所ごとに違うということです。だから、「加算があるはずなのに、上がった実感がない」という場合は、配り方が自分に見えにくい形になっているのかもしれません。

自分の職場が加算を取得しているか、どの区分か、どう支給されているかは、国の公表システム(介護サービス情報公表システム)で確認できますし、上司や事業所に「処遇改善加算は、どういう形で支給されていますか」と尋ねてみるのも、まったく失礼なことではありません。むしろ、自分の待遇をきちんと確認する、まじめな姿勢です。この加算のしくみをもう少しくわしく知りたい方は、処遇改善の仕組みをもっとくわしくのページもあわせてご覧ください。

今より給料を上げる、現実的な打ち手

仕組みと追い風が分かったところで、いよいよ本題です。「では、今より上げるには、具体的に何をすればいいのか」。ここでは、あなたの側から動かせる現実的な打ち手を、順に整理します。一度に全部やる必要はありません。今の自分にできそうなものから、一つずつでかまいません。

打ち手1:まず「昇給の仕組み」を確認する

意外と見落とされがちですが、最初の一歩は、自分の職場の昇給の仕組みを、正確に知ることです。「なんとなく上がらない」で終わらせず、次の点を確認してみてください。

  • 給与規程に「昇給あり」と定められているか。 あるなら、時期や金額(年◯円〜、または◯%)はどうか。
  • その規定が、実際に毎年きちんと運用されているか。 規定はあっても、運用されていない職場もあります。
  • 処遇改善加算が、どう支給されているか。 手当か、賞与か、基本給か。

これらは、就業規則や給与規程を見せてもらう、または上司や事務の担当者に尋ねることで確認できます。「自分の給料がどういうルールで決まっているのか」を把握するのは、働く人として当然の権利です。まずは足元の仕組みを知る——ここから、次の打ち手が選びやすくなります。

打ち手2:資格を取る(一段まとめて上がるきっかけ)

介護の給料を上げる、もっとも確実で王道の方法が資格の取得です。介護には、段階的にステップアップできる資格があります。

  • 介護職員初任者研修(しょにんしゃけんしゅう):介護の基礎を学ぶ入り口の資格。無資格からまず目指すのが一般的です。
  • 介護福祉士実務者研修(じつむしゃけんしゅう):初任者研修の次のステップ。介護福祉士の受験に必要です。
  • 介護福祉士(かいごふくしし):介護の唯一の国家資格。取得すると資格手当がついたり、基本給のめやすが上がったりする職場が多くあります。

定期昇給が「毎年の小さな階段」だとすれば、資格取得は「一段まとめてのぼる」きっかけになりやすい打ち手です。「無資格→初任者研修→実務者研修→介護福祉士」と進むにつれて、給料のめやすは段階的に上がっていきます。多くの職場が働きながらの資格取得を支援(受講費用の補助など)しているので、上司との面談や面接で、支援制度の有無を確認してみてください。どの資格から、どんな順で目指せばよいかは、資格のロードマップのページに、順を追ってまとめています。

打ち手3:役職・リーダーへの道を考える

もう一つの道が、役職につくことです。ユニットリーダー、フロアリーダー、主任、施設長——介護の現場には、経験を積んでステップアップしていく役職の道があり、その節目で役職手当がつくのが一般的です。

「まだ現場の一員だから、自分には関係ない」と思うかもしれません。でも、後輩に仕事を教えたり、シフトの調整を任されたりしているなら、あなたはすでにリーダーの入り口に立っています。上司に「将来的にリーダーを目指したい」と伝えておくだけでも、次の機会につながることがあります。責任は増えますが、そのぶん、給料を伸ばす確かな道の一つです。

打ち手4:夜勤を活かす(体と相談しながら)

入居して暮らす施設(特別養護老人ホームなど)の多くには夜勤があり、夜勤には夜勤手当がつきます。この手当は、月収の大きな柱の一つになりえます。月に数回入ることで、月の収入に上乗せされることも多くあります。

ただし、夜勤は生活リズムが乱れやすく、体力面の負担も大きい働き方です。「上がるから」と無理を重ねると、体を壊しかねません。収入と体の負担のバランスを見ながら、自分に合った回数を選んでください。体力に余裕のある時期に少し増やす、という付き合い方もできます。夜勤手当は昇給(基本給が上がること)とは別のしくみですが、「今の月収を増やす」という意味では、すぐに効く打ち手です。

打ち手5:転職という選択肢

ここまでの打ち手を確認しても、「昇給の規定がそもそもない」「何年いても基本給がほとんど動かない」「加算が職員に回っている実感がない」——そんな状態が続くなら、転職は、まっとうで正当な選択肢です。

介護は全国的に人手が不足していて、経験を積んだ人ほど、他の職場から必要とされます。昇給の仕組みが整った職場、資格手当がしっかりつく職場、給与水準が高めの施設タイプへ移ることで、年収が大きく変わることもあります。ただし、給料の高さだけで飛びつくのは禁物です。給料が高くても、人手が極端に少なく負担が重い職場もあります。求人票の「月給」だけでなく、昇給の有無、賞与や手当の内訳、夜勤の回数、職員の配置まで含めて確認しましょう。転職の進め方や、後悔しない見極め方は、介護職の年収を上げる、具体的な道すじのページで、順を追って整理しています。

打ち手を、あらためて表に整理しておきます。

打ち手どんな効き方をするかひとこと
昇給の仕組みを確認現状を正確に知るすべての出発点。まずここから
資格を取る一段まとめて上がりやすいもっとも確実な王道
役職につく役職手当で伸ばす責任は増えるが確かな道
夜勤を活かす今の月収に上乗せ体と相談しながら
転職する職場ごと変える仕組みが整った職場へ

「今の職場で上がらない」=「自分の価値が低い」ではない

最後に、いちばん大切な視点を、もう一度だけお伝えさせてください。それは、「今の職場で給料が上がらないこと」と、「あなたの価値が低いこと」は、まったく別の話だ、ということです。

ここまで見てきたとおり、あなたの給料が上がりにくいのは、多くの場合、勤め先の昇給の仕組みや経営の体力、そして介護報酬という制度の構造によるものでした。同じ働き方・同じ資格でも、職場が変われば受け取る額は変わります。 つまり、「今の職場で提示されている金額」は、「あなたが労働市場で持っている価値」とイコールではないのです。

国の「賃金構造基本統計調査(ちんぎんこうぞうきほんとうけいちょうさ)」——働く人の賃金の実態を国がしらべている調査——を見ても、多くの職種で、勤続年数を重ねた人ほど賃金が高くなる傾向(賃金カーブと呼ばれます)が示されています。あなたが積み重ねてきた経験は、本来、評価されるべきものなのです。もし今いる場所で、その積み重ねが数字に反映されていないなら、それは「あなたに値打ちがない」のではなく、「今の場所が、あなたの積み重ねをうまく評価できていない」だけかもしれません。

だから、給与明細の数字で、自分を値踏みしないでください。あなたが毎日している仕事——人の暮らしを支え、尊厳を守り、家族の不安に寄り添う仕事——の価値は、その職場が今つけている金額より、ずっと大きいはずです。もし、その価値と数字のあいだに開きを感じ続けるなら、その気持ちは、あなたが次の一歩を考えてよい、まっとうなサインです。自分の気持ちが限界に近いと感じるときは、「介護を辞めたい」と思ったときのページも、そっと横に置いておいてください。

この記事のまとめ

最後に、要点を振り返ります。

  • 「昇給」には2種類ある。毎年少しずつ上がる定期昇給と、基本給の水準を底上げするベースアップ。分けて考えると、自分の給料に何が起きているかが見える。
  • 介護が上がりにくいのは、給料の原資が介護報酬に左右されること、事業所の規模で体力に差が出ることなど、仕組みの要因が大きい。あなたのせいではない。
  • 近年は、**2024年6月に一本化され、2026年6月に対象等が見直された「介護職員等処遇改善加算」**が、賃上げの追い風になっている。ただし配り方は職場ごとに違うので、確認が大切。
  • 上げる打ち手は、昇給の仕組みの確認・資格・役職・夜勤・転職。今の自分にできるものから、一つずつでよい。
  • 「今の職場で上がらない」=「自分の価値が低い」ではない。 職場が変われば、受け取る額も変わる。

冒頭でお約束した一点に、ここで立ち返ります。「上がらない」の多くは仕組みの問題で、その仕組みが見えれば、打ち手も見えてきます。 何がどうなって上がりにくいのかが分かった今、あなたの手元には、動かせる打ち手のリストが残っているはずです。

まずは、いちばん小さな一歩から。手元の給与規程を確認してみる。上司に「昇給や資格の支援について教えてください」と聞いてみる。あるいは、介護職の給料の実際を読んで、全体像をもう一度つかんでみる。どれも、今日から始められます。あなたの積み重ねてきた日々が、ちゃんと数字にも報われていきますように。

よくある質問

どうして介護は昇給しにくいと言われるのですか?

いちばん大きな理由は、給料の原資(もとになるお金)の多くが「介護報酬」という制度で決まっているからです。介護報酬は、利用者さんがサービスを使ったときに介護保険から事業所へ支払われるお金で、国が単価を決めています。一般の会社のように「良い商品を高く売って、その分を給料に回す」という仕組みになりにくいため、事業所が自由に賃上げしにくい構造があります。加えて、規模の小さい事業所ほど経営の体力に差が出やすく、昇給の余力も職場によって開きます。これはあなたや現場の努力不足ではなく、仕組みの話です。ただし近年は、国の処遇改善加算による底上げが賃上げを後押ししています。

介護では、何年働けば給料が上がりますか?

「何年で必ずいくら上がる」という全国共通のルールはなく、昇給のペースは職場ごとに大きく変わります。多くの職場には、毎年少しずつ基本給が上がる「定期昇給」の仕組みがあり、国の調査でも、賃金改善の方法として定期昇給を実施した事業所が一定の割合を占めています。一方で、昇給の規定が整っていない、または昇給幅がごくわずかな職場もあります。まず確認したいのは、勤め先の給与規程に「昇給あり(年◯円〜、または◯%)」と定められているか、そして毎年きちんと運用されているかです。年数よりも、その職場の昇給の仕組みそのものを見ることが大切です。

資格を取れば、給料は上がりますか?

上がりやすくなります。介護は「無資格→初任者研修→実務者研修→介護福祉士」と資格を段階的に取っていくことで、給料のめやすが段階的に上がる仕組みです。とくに国家資格である介護福祉士を取ると、資格手当がついたり基本給の設定が上がったりする職場が多くあります。定期昇給が「毎年の小さな積み上げ」だとすれば、資格取得は「一段まとめて上がる」きっかけになりやすい打ち手です。多くの職場が働きながらの資格取得を支援(受講費用の補助など)しているので、面接や上司との面談で支援制度の有無を確認してみてください。

昇給しないなら、転職したほうがいいですか?

転職は正当な選択肢の一つですが、いきなり飛びつく前に、今の職場でできることも確認する価値があります。具体的には、昇給規程の有無を確認する、資格取得や役職への道を上司に相談する、処遇改善加算がどう支給されているかを確認する、などです。そのうえで「昇給の規定がない」「何年いても基本給がほとんど動かない」「加算が職員に十分回っている実感がない」といった状態が続くなら、昇給の仕組みが整った職場や、給与水準の高めな施設タイプへの転職を考えてよい段階です。焦って決めず、まず情報を集めるところから始めてください。

昇給が少ないのは、自分の価値が低いということですか?

いいえ、そうではありません。あなたの給料が上がりにくいのは、多くの場合、勤め先の昇給の仕組みや経営の体力、そして介護報酬という制度の構造によるものです。同じ働き方・同じ資格でも、職場が変われば受け取る額は変わります。つまり「今の職場での金額」は「あなたの市場での価値」とイコールではありません。介護は全国的に人手が不足していて、経験を積んだ人ほど、他の職場から必要とされます。今の数字で自分を値踏みしないでください。

処遇改善加算の分が、自分の給料に反映されているか確認できますか?

確認できます。処遇改善加算は事業所へ支払われ、職員への配分方法(毎月の手当か、賞与にまとめてか、基本給に組み込むか)は事業所ごとに決まります。そのため、まずは給与明細で「処遇改善手当」などの項目を探してみてください。見当たらないときは、基本給や賞与に溶け込んでいる可能性があります。加算を受け取る事業所には職員への賃金改善の周知が求められているため、事務担当や上司に「処遇改善加算は、どの項目でいくら支給されていますか」と確認することは、まったく問題ありません。自分の職場が加算を取得しているか(区分)は、国の介護サービス情報公表システムでも調べられます。仕組みの詳細は処遇改善加算の解説ページにまとめています。

出典


本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、正確性・最新性を保証するものではありません。 制度や施設の状況は変わることがあります。実際のご判断の前には、各施設・公式情報や公的機関でご確認ください。

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