働き方
清拭とは|通知が示す手順に組み込まれた観察と、医行為の線引き
内容確認: 2026年7月28日 ・ 次回確認期限: 2027年4月30日 ・ 編集部確認済み
清拭の途中で、背中に赤みを見つけた。仙骨のあたりが、いつもより赤い気がする。そこで手が止まった経験は、きっとあると思います。看護師に言うほどでもない気がする。でも黙っていていいのかも分からない。
迷うのは、判断力が足りないからではありません。清拭は「体を拭くこと」だと教わることが多いのに、国の通知が示す清拭の手順には「皮膚等の観察」という工程がはっきり組み込まれています。見ることまでが仕事に入っているのに、見つけたあとの線は別の文書に書かれている。分かれているものを、現場では一人で背負うことになります。
先にお伝えすると、その線は3本の通知で引かれています。最初の通知の出発点は「介護職はここまでやってはいけない」ではなく、逆でした。「医行為」の範囲が不必要に拡大解釈されている、という是正から始まっています。
読み終えたとき、清拭で何かを見つけたときに、それが自分の手の内なのか、確認が要るのか、記録と報告に何を書けばよいのかを、順番に切り分けられるようになっているはずです。
まず結論:清拭は「体を拭くこと」ではない

国の通知が示す清拭の手順には、観察が組み込まれています。 訪問介護の行為区分を示した老計第10号は、全身清拭の一連の流れを例示しています。そこには「上半身の皮膚等の観察」「下肢の皮膚等の観察」「身体状況の点検・確認」が並んでいました。拭く工程のあいだに、見る工程が3回はさまっている構造です。
見つけたものにどこまで手を出せるかは、3本の通知が線を引いています。 2005年・2022年・2025年の医政局長通知が、介護現場で判断に迷う行為を「原則として医行為ではないと考えられるもの」として列挙しました。2022年の通知では、陰部洗浄が条件つきで名指しされています。
ただし「医行為でない」は「何をしてもいい」ではありません。 3本すべてに同じ注記が置かれています。今回の整理は医師法などの解釈にすぎず、事故が起きた場合の刑事上・民事上の責任は別途判断される、という一文です。
清拭は、介護職が利用者の体をいちばん広く見る場面のひとつです。この記事で扱うのは拭き方の手技ではなく、見つけたときの切り分けと、記録での残し方のほうになります。湯温や拭く順序といった手技は職場のマニュアルに譲り、ここでは通知が引いている線だけを追います。
国の通知が示す清拭の手順

清拭のやり方は、職場ごとのマニュアルや先輩の教え方で覚えることが多いはずです。ただ、国の側にも手順を示した文書があります。訪問介護の行為区分を定めた通知です。
清拭は「身体介護」のどこに置かれているか
厚生省老人保健福祉局老人福祉計画課長「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」(老計第10号・平成12年3月17日、最終改正 平成17年6月29日)は、訪問介護の行為を身体介護と生活援助に分け、それぞれの一連の流れを例示しています。
通知は、従来の取扱いを示した既存の通知に触れたうえで、こう続けています。
…今般、別紙の通り、訪問介護におけるサービス行為ごとの区分及び個々のサービス行為の一連の流れを例示したので、訪問介護計画及び居宅サービス計画(ケアプラン)を作成する際の参考として活用されたい。
清拭が置かれているのは、身体介護の「1-2 清拭・入浴、身体整容」です。この区分には6つの項目が並びます。
| 区分 | 中身 |
|---|---|
| 1-2-1 清拭 | 全身清拭 |
| 1-2-2 部分浴 | 手浴及び足浴/洗髪 |
| 1-2-3 全身浴 | 浴槽での入浴 |
| 1-2-4 洗面等 | 洗面、歯磨き、うがい |
| 1-2-5 身体整容 | 手足の爪きり、耳そうじ、髭の手入れ、髪の手入れ、簡単な化粧 |
| 1-2-6 更衣介助 | 着替えの介助 |
清拭は入浴の代わりに置かれた簡易版ではなく、部分浴や全身浴と並ぶ独立した区分として扱われています。訪問介護の身体介護・生活援助の区分については訪問介護で働く実際でも整理しました。
言葉の整理もしておきます。全身を拭くものを全身清拭、背部や陰部など範囲を限って拭くものを部分清拭と呼びます。通知が流れを例示しているのは全身清拭のほうですが、部分清拭でも脱がせた範囲の皮膚を見ることになる点は変わりません。また清拭・部分浴・全身浴をまとめて保清と呼ぶこともあり、1-2はその保清に身体整容と更衣介助を加えた区分にあたります。
なお1-2-5の「手足の爪きり、耳そうじ」は、あとで見る医行為の通知にも出てきます。同じ行為に、報酬の区分と医師法の解釈という2つの角度から線が引かれている形です。
全身清拭の一連の流れ
では、通知が例示している清拭の流れを見ます。原文はこうです。
ヘルパー自身の身支度→物品準備(湯・タオル・着替えなど)→声かけ・説明→顔・首の清拭→上半身脱衣→上半身の皮膚等の観察→上肢の清拭→胸・腹の清拭→背の清拭→上半身着衣→下肢脱衣→下肢の皮膚等の観察→下肢の清拭→陰部・臀部の清拭→下着着衣→身体状況の点検・確認→水分補給→使用物品の後始末→汚れた衣服の処理→ヘルパー自身の清潔動作
太字にした3か所に注目してください。次の章で詳しく見ます。
もうひとつ気づくのは、始まりと終わりです。「ヘルパー自身の身支度」で始まり、「ヘルパー自身の清潔動作」で終わっています。自分の身を守る工程が、手順の両端に置かれているという設計でした。
陰部・臀部の清拭と、おむつ交換のときの陰部洗浄
清拭の流れでは「陰部・臀部の清拭」が下肢の清拭のあとに来ます。なぜその順番なのかを、通知は書いていません。
陰部洗浄は、別の区分にも出てきます。おむつ交換(1-1-1-3)の流れです。
声かけ・説明→物品準備(湯・タオル・ティッシュペーパー等)→新しいおむつの準備→脱衣(おむつを開く→尿パットをとる)→陰部・臀部洗浄(皮膚の状態などの観察、パッティング、乾燥)→おむつの装着→おむつの具合の確認→着衣→…
ここでも括弧の中に「皮膚の状態などの観察」が入っています。陰部洗浄は、洗う行為であると同時に見る行為として書かれているということです。
陰部は本人にとって、いちばん見られたくない場所でもあります。羞恥心への配慮と観察を両立させる難しさは、介護保険法の目的規定に「尊厳を保持し」が加えられた経緯を扱った尊厳とはともつながります。
「あくまで例示」と通知自身が書いている
ここで大事な留保を挟んでおきましょう。通知は、示した流れの性格をこう説明していました。
また、今回示した個々のサービス行為の一連の流れは、あくまで例示であり、実際に利用者にサービスを提供する際には、当然、利用者個々人の身体状況や生活実態等に即した取扱いが求められることを念のため申し添える。
この通りにやらないと違反、という文書ではありません。順番を入れ替えたら間違いというものでもない。
それでも読む価値があるのは、国がこの行為をどういうものとして捉えているかが読み取れるからです。そこに観察が3回入っていることには、意味があります。
清拭の手順に3回入っている「観察」

前の章で見た流れから、観察の工程だけを抜き出して並べ直しましょう。すると、清拭という行為の性格が見えてきます。
脱衣のたびに「皮膚等の観察」が入る
清拭の流れで観察が入るのは、脱衣の直後でした。
| 順番 | 通知の工程 | 何を見る場面か |
|---|---|---|
| 上半身 | 上半身脱衣 →「上半身の皮膚等の観察」→ 上肢の清拭 | 背中・肩甲骨・腋窩など、ふだん服で隠れている部分 |
| 下半身 | 下肢脱衣 →「下肢の皮膚等の観察」→ 下肢の清拭 | 踵・下腿・膝の裏など、靴下や寝具で隠れている部分 |
| 締めくくり | 下着着衣 →「身体状況の点検・確認」→ 水分補給 | 全体を通しての様子。表情や疲れ方も含む |
**拭く前に見る、という順序になっています。**拭きながらついでに見るのではなく、脱いだ直後に観察の工程が独立して置かれている。手順の書き方として、そこは意図的だと読めます。
考えてみれば、当然でもあります。服を着ている人の背中を見る機会は、日常の介護にそう多くありません。清拭と入浴は、その数少ない機会にあたります。
締めくくりの「身体状況の点検・確認」
3つ目は、着衣を終えたあとに置かれています。皮膚だけを見る工程ではなく、「身体状況」という広い言い方になっているのが特徴です。
清拭のあいだに体力を使って、疲れが出ることもあります。長く同じ姿勢でいて、めまいが出ることもある。拭き終えた時点の様子を確かめる工程が、最後に1つ置かれているということになります。
手浴・足浴・洗髪・全身浴にも、同じ構造がある
この作りは清拭だけのものではありません。同じ「1-2」の他の区分にも、同じ工程が入っています。
| 区分 | 「皮膚等の観察」 | 「身体状況の点検・確認」 |
|---|---|---|
| 1-2-1 清拭(全身清拭) | あり(上半身・下肢の2回) | あり |
| 1-2-2-1 手浴及び足浴 | あり(脱衣の直後) | あり |
| 1-2-2-2 洗髪 | — | あり |
| 1-2-3 全身浴 | あり(脱衣の直後) | あり |
洗髪だけ「皮膚等の観察」がありません。脱衣をともなわないからだと読めます。
ただし「脱げば観察が付く」という単純な話でもありません。前の章の表で見た1-2-6 更衣介助は、上半身・下半身とも脱衣を含むのに、観察の工程が置かれていないからです。着替えだけを手伝う場面と、湯とタオルで体に直接ふれる場面とで、通知は書き分けています。
つまり観察が組み込まれているのは、清拭・部分浴・全身浴という保清の区分でした。足浴で靴下を脱がせたとき、踵の状態を見る。これも通知の手順に沿った動きだということになります。
だから清拭は「見る機会」として設計されている
ここまでをまとめます。清拭は、体を清潔にする行為であると同時に、利用者の体をいちばん広く見られる機会として手順が組まれていました。
そう考えると、冒頭の迷いの正体もはっきりします。「背中の赤みを見つけてしまった」のではありません。見つけるところまでが、手順に入っている。
問題はその次です。見つけたものに、どこまで手を出せるのか。そこは老計第10号には書かれていません。別の系統の文書、医師法の解釈を示した通知のほうに書かれています。
清拭で見つけたものに、どこまで手を出せるか

ここからが本題です。清拭で皮膚の異常を見つけたとき、介護職は何をしてよくて、何をしてはいけないのか。この線は、厚生労働省医政局長の通知が示してきました。
2005年の通知は「拡大解釈の是正」から始まった
最初の通知は2005年です。厚生労働省医政局長「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)」(医政発第0726005号・平成17年7月26日)。
読み始めて意外に思うのは、通知の動機のほうです。通知は個別具体的な判断が必要だと述べたあと、こう続けます。
…近年の疾病構造の変化、国民の間の医療に関する知識の向上、医学・医療機器の進歩、医療・介護サービスの提供の在り方の変化などを背景に、高齢者介護や障害者介護の現場等において、医師、看護師等の免許を有さない者が業として行うことを禁止されている**「医行為」の範囲が不必要に拡大解釈されているとの声も聞かれる**ところである。
**「不必要に拡大解釈されている」。**この通知は、介護職の手を縛るために出されたものではありませんでした。現場が実際より広く自主規制していることへの、是正として出ています。
体温を測ってはいけない、血圧を測ってはいけない、爪を切ってはいけない。そういう運用が広がっていた時期があった、ということです。
そもそも「医行為」とは何か
通知は、前提となる言葉の意味も定義しています。
ここにいう「医業」とは、当該行為を行うに当たり、**医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為(医行為)**を、反復継続する意思をもって行うことであると解している。
2つの要素が入っています。医師の判断と技術が要ること、そして危害を及ぼすおそれがあること。この2つを満たすものが医行為で、それを反復継続する意思で行うと「医業」になります。
そのうえで通知は、こう続けました。
ある行為が医行為であるか否かについては、個々の行為の態様に応じ個別具体的に判断する必要がある。
行為の名前だけで決まるものではない、ということです。同じ「爪を切る」でも、状況によって答えが変わります。
通知が挙げた行為
別紙に列挙されたもののうち、清拭の場面に関わるものを抜き出しましょう。なお条件欄の「—」は個別の条件がないという意味で、別紙全体には後述の注記がかかります。
| 行為 | 付いている条件 |
|---|---|
| 腋下での体温測定、耳式電子体温計での外耳道の測定 | — |
| 自動血圧測定器による血圧測定 | — |
| 軽微な切り傷、擦り傷、やけど等の処置(汚物で汚れたガーゼの交換を含む) | 専門的な判断や技術を必要としないもの |
| 皮膚への軟膏の塗布 | 褥瘡の処置を除く。加えて患者の状態が3条件を満たすことを医師等が確認し、本人・家族に伝えている場合 |
| 爪を爪切りで切ること、爪ヤスリでやすりがけすること | 爪そのものに異常がなく、爪の周囲の皮膚にも化膿や炎症がなく、糖尿病等の疾患に伴う専門的な管理が必要でない場合 |
| 日常的な口腔内の刷掃・清拭 | 重度の歯周病等がない場合 |
| 耳垢を除去すること | 耳垢塞栓の除去を除く |
軟膏の塗布に付いている3条件は、次のとおりです。
| # | 条件(原文) |
|---|---|
| ① | 患者が入院・入所して治療する必要がなく容態が安定していること |
| ② | 副作用の危険性や投薬量の調整等のため、医師又は看護職員による連続的な容態の経過観察が必要である場合ではないこと |
| ③ | 内用薬については誤嚥の可能性、坐薬については肛門からの出血の可能性など、当該医薬品の使用の方法そのものについて専門的な配慮が必要な場合ではないこと |
**条件のほとんどが「異常がないこと」で構成されています。**爪切りなら、爪に異常がなく、周りの皮膚に化膿や炎症がなく、糖尿病等の管理も要らない。裏返せば、異常があるときは介護職の手の内から外れるという設計です。
「口腔内の刷掃・清拭」に清拭の語が出てくるのも、この通知でした。口腔ケアとしての清拭は、条件つきで医行為ではないと整理されています。
褥瘡の処置は、通知から一貫して除かれている
清拭との関係でいちばん重要なのが、この一点です。
軟膏の塗布は「原則として医行為ではない」側に入りました。ただし括弧書きが付いています。
皮膚への軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く。)
そして、この除外は2005年の通知だけのものではありません。2022年の通知でも、水虫や爪白癬にり患した爪への軟膏・外用液の塗布が挙げられた際に、同じく「(褥瘡の処置を除く。)」と書かれています。
**17年をまたいで、同じ括弧が残っている。**褥瘡への対応は、介護職が判断して手を出す領域ではないという線が、通知の側で一貫しているということです。
その赤みが褥瘡かどうかを見分けるのは、介護職の役割ではありません。だから「褥瘡でないという確認が取れているか」が分からない段階では、手元に軟膏があっても塗らずに報告する。それは慎重すぎる態度ではなく、通知が示す順番に沿った動きになります。
その代わりに何をするか。**見たことを記録し、看護職員や医師に報告する。**この記事の後半で扱う話は、ここにつながっていきます。
陰部洗浄が加わった2022年と2025年の通知

2005年の通知は、いまも生きているものです。ただし、それだけを見ていると現在の線を見誤ります。あとから2本の通知が加わりました。
2022年、陰部洗浄が名指しで入った
2本目は、厚生労働省医政局長「医師法第17条…の解釈について(その2)」(医政発1201第4号・令和4年12月1日)です。
この通知には、清拭・排泄ケアに直結する項目が入りました。
14 専門的管理が必要無いことを医師又は看護職員が確認した場合のみ、膀胱留置カテーテルを挿入している患者の陰部洗浄を行うこと。
陰部洗浄そのものが医行為だという話ではありません。ここで整理されたのは、膀胱留置カテーテルが入っている人の陰部洗浄という限定された場面です。
そして条件の書き方に注目してください。「〜した場合のみ」。2005年の通知の条件が「〜でない場合」という形だったのに対し、ここは確認を取ることが前提になっています。
同じ通知には、日々の介護に関わる項目がほかにも並びました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 11 | 膀胱留置カテーテルの蓄尿バックからの尿廃棄(DIBキャップの開閉を含む) |
| 12 | 蓄尿バックの尿量及び尿の色の確認 |
| 13 | 膀胱留置カテーテル等に接続されているチューブを留めているテープが外れた場合の、あらかじめ明示された貼付位置への再貼付 |
| 18 | 食事(とろみ食を含む)の介助 |
| 19 | 有床義歯(入れ歯)の着脱及び洗浄 |
とろみ食の介助や入れ歯の洗浄まで書かれているのは、逆にいえばそこに迷いがあったからだと読めます。
入れ歯を誰が外して洗うかで申し送りが止まる。とろみをつけた食事の介助を前にして「これは医療の領域では」と手が止まる。通知に並んだ項目は、そういう止まり方をしてきた行為の一覧でもあります。
「事前に合意するプロセス」という新しい要素
2022年の通知には、2005年になかった考え方が入りました。背景の説明部分です。
今般、規制改革実施計画(令和2年7月 17 日閣議決定)において、平成 17 年通知に記載のない行為のうち、介護現場で実施されることが多いと考えられる行為を中心に、医行為ではないと考えられる行為を整理し、周知した上で、介護職員がそれらの行為を安心して行えるよう、ケアの提供体制について本人、家族、介護職員、看護職員、主治医等が事前に合意するプロセスを明らかにすることとされた。
**「介護職員がそれらの行為を安心して行えるよう」。**目的がそう書かれています。
そして手段として挙がったのが、本人・家族・介護職員・看護職員・主治医が事前に合意するプロセスでした。一人で判断させない設計にする、という方向です。
2025年12月、3本目の通知が出た
3本目は、ごく最近のものです。厚生労働省医政局長「医師法第17条…の解釈について(その3)」(医政発1226第12号・令和7年12月26日)。
こちらも規制改革実施計画(令和6年6月21日閣議決定)を受けたもので、2つの領域が整理されました。
1つ目は「服薬準備等関係」で、具体的な行為として3つが挙げられました。いずれも、医師の処方・薬剤師の服薬指導・本人や家族等の事前の依頼を前提とした「医薬品の使用の介助」の一部として書かれているものです。
| # | 具体的な行為(原文) |
|---|---|
| ① | お薬カレンダーへ一包化された等の医薬品をセットすること |
| ② | 服薬の直前に PTP シートから薬剤を取り出すこと |
| ③ | 専門的な管理が必要無いことを医師若しくは看護職員が確認した皮膚に、いわゆる湿布を貼付すること |
2つ目は「蓄尿バッグ交換等関係」です。
(蓄尿バッグ交換等関係) 2 医師又は看護職員の立会いの下で安全に行えることを事前に確認された実施者が、蓄尿バッグの破損等尿漏れを確認した際や、蓄尿バッグが膀胱留置カテーテルから外れた際に、膀胱留置カテーテルと未開封・未使用の蓄尿バッグを接続すること。
湿布を貼ることが3本目でようやく明示された、という事実に驚く人もいるでしょう。ここにも「専門的な管理が必要無いことを医師若しくは看護職員が確認した皮膚に」という条件が付いています。
PTPシートについても、細かい注意がありました。ハサミなどで1つずつに切り離さないよう留意すること、というものです。
3本の通知の系譜
3本を並べると、動きの方向が見えます。
| 通知 | 発出 | きっかけ | 主に加わったもの |
|---|---|---|---|
| 医政発第0726005号 | 2005年7月26日 | 「医行為の範囲が不必要に拡大解釈されている」 | 体温・血圧・パルスオキシメータ/軽微な傷の処置/軟膏塗布/爪切り・口腔清拭・耳垢除去 |
| 医政発1201第4号(その2) | 2022年12月1日 | 規制改革実施計画(2020年閣議決定) | インスリン投与の準備・片付け/血糖測定/経管栄養の準備・片付け/吸引器の汚水廃棄・水の補充/膀胱留置カテーテル使用者の陰部洗浄(医師・看護職員の確認が条件)/とろみ食の介助/入れ歯の着脱・洗浄 |
| 医政発1226第12号(その3) | 2025年12月26日 | 規制改革実施計画(2024年閣議決定) | 湿布の貼付/お薬カレンダーへのセット/PTPシートから取り出し/蓄尿バッグの接続 |
20年かけて、線は少しずつ介護職の側へ寄ってきました。ただしどの通知にも、条件と留保が必ず付いています。
なお、医行為そのものを介護職が行える例外の制度は別にあります。喀痰吸引と経管栄養についての研修制度で、こちらは喀痰吸引等研修とはにまとめました。「原則として医行為ではない」と「研修を受けて医行為を行う」は、別の仕組みである点に注意が要ります。
「医行為でない」は「何をしてもいい」ではない

ここまでを読んで、手を出せる範囲が思ったより広いと感じた人もいるでしょう。ただ、通知には必ず注記が付いています。列挙された行為より、この注記のほうが実務では効くはずです。
専門的な管理が必要なら、医行為になる場合もあり得る
3本の通知すべてに、ほぼ同じ一文が置かれています。2005年の通知から引きましょう。
上記1から5まで及び注1に掲げる行為は、原則として医行為又は医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の規制の対象とする必要があるものでないと考えられるものであるが、病状が不安定であること等により専門的な管理が必要な場合には、医行為であるとされる場合もあり得る。
「原則として」の中身が、ここにあります。行為の名前で決まるのではなく、その人の状態で変わる。同じ爪切りでも、糖尿病の管理下にある人では答えが違ってきます。
では誰が判断するのか。通知は確認の道筋も書いていました。
このため、介護サービス事業者等はサービス担当者会議の開催時等に、必要に応じて、医師、歯科医師又は看護職員に対して、そうした専門的な管理が必要な状態であるかどうか確認することが考えられる。
**確認の場として、サービス担当者会議が名指しされています。**個人が現場で判断する話ではなく、会議で確認しておくものだという整理です。会議の種類と法令上の位置づけはカンファレンスとはで扱いました。
さらに続きます。
さらに、病状の急変が生じた場合その他必要な場合は、医師、歯科医師又は看護職員に連絡を行う等の必要な措置を速やかに講じる必要がある。
数値から医学的な判断をすることは医行為
もうひとつ、線がはっきり引かれている箇所があります。
…上記1から3までに掲げる行為によって測定された数値を基に投薬の要否など医学的な判断を行うことは医行為であり、事前に示された数値の範囲外の異常値が測定された場合には医師、歯科医師又は看護職員に報告するべきものである。
測ることと、測った数値から判断することは別だという整理です。体温を測るのは介護職の手の内。その37.8度をどう扱うかは、そうではない。
清拭の場面に置き換えると、こうなります。赤みを見ることは手順に入っている。その赤みが褥瘡かどうかを見立てて対応を決めることは、介護職の役割ではありません。
**見ることと、見立てることは違う。**この線は、記録の書き方にそのまま効いてきます。
研修と、事業者の監督
3つ目の注記は、実施者と事業者に向けたものです。
…業として行う場合には実施者に対して一定の研修や訓練が行われることが望ましいことは当然であり、介護サービス等の場で就労する者の研修の必要性を否定するものではない。 また、介護サービスの事業者等は、事業遂行上、安全にこれらの行為が行われるよう監督することが求められる。
「医行為ではない」=「誰でも無条件にやってよい」ではない、ということです。研修は望ましく、事業者には監督が求められる。
裏返せば、教わっていない行為をいきなり任される状況は、通知の想定とずれています。「習ってないので教えてください」と言うのは、わがままではありません。
刑事上・民事上の責任は、別途判断される
そして最後の注記です。3本の通知すべてに、ほぼ同じ文言で置かれています。
今回の整理はあくまでも医師法、歯科医師法、保健師助産師看護師法等の解釈に関するものであり、事故が起きた場合の刑法、民法等の法律の規定による刑事上・民事上の責任は別途判断されるべきものである。
これらの通知が答えているのは、「無資格で医業をした」ことにあたるかどうかの一点だけです。けがをさせてしまった場合の責任は、この整理とは別の枠組みで判断されます。
爪切りが医行為ではないとしても、深爪で出血させてよいわけではない。当たり前のことですが、通知はそこをわざわざ書いています。
だから「通知に載っているからやっていい」で止めず、手を出すことと、安全にやれることは別だと考えておく必要があります。自信がないなら、やらずに報告するほうが筋の通った判断でしょう。
清拭の記録に何を残すか

最後に、ここまでの話を記録に落としましょう。老計第10号は、身体介護の準備の区分に「1-0-4 サービス提供後の記録等」を置いていました。記録は手順の一部です。
観察したことを、見たまま書く
前の章で見たとおり、見ることと見立てることは別でした。記録もそこで分かれます。
| 書き方 | あとから読んだ人が受け取るもの |
|---|---|
| 仙骨部に褥瘡あり | 介護職が診断的な判断をしたように読める |
| 清拭時、仙骨部に約3cmの発赤あり。押しても白くならず。本人の痛みの訴えなし | 見たままの事実。判断は読む人に開かれている |
| 皮膚状態変わりなし | 見たのかどうかが分からない |
| 上半身・下肢とも観察。前回記録の右踵の発赤は消失 | 観察した範囲と、前回との差が分かる |
上の2行が「見立てと事実」、下の2行が「観察の範囲」の書き分けです。
とくに**「押しても白くならない」のような、見たままの所見**には価値があります。褥瘡かどうかを判定する言葉ではありませんが、次に見る人の材料になるからです。
これは判定ではなく、見えたこと・触れて分かったことの描写にすぎません。何をどこまで確かめるべきかは、看護職員に先に聞いておくと迷わずに済みます。
手を出したことと、出さずに報告したことを分ける
もうひとつが、自分が何をしたかの記録です。
- 手を出したこと(例: 爪を切った、汚れたガーゼを交換した)
- 手を出さずに報告したこと(例: 発赤を見つけ、看護師に報告した)
この2つを混ぜて「対応済み」と書くと、あとから何が起きたのかが追えません。
手を出した場合は、なぜ手を出してよいと判断したかまで残せると強くなります。「爪に異常なく、周囲の皮膚に化膿・炎症なし。担当者会議で確認済みの範囲」のように、通知の条件に対応させた書き方です。
報告した場合は、誰に・いつ・何を伝えたかを書きます。「17時、訪問看護◯◯に電話で報告。明日の訪問時に確認する旨の返答」まで書ければ、次の勤務者が動けます。
清拭で見つけたときの、3つの切り分け
明日から使える形にまとめましょう。清拭で何かを見つけたとき、順番に3つを確かめてみてください。
- ① 通知に挙がっている行為か(軟膏塗布・爪切り・軽微な傷の処置などに当たるか)
- ② 条件を満たしているか(異常がないこと・専門的な管理が不要なことを、医師や看護職員が確認しているか)
- ③ 記録と報告に何を残すか(見たままの事実/手を出したかどうか/誰にいつ伝えたか)
3つとも、この記事で見てきた一次資料の構造をそのまま借りています。①は3本の通知の別紙、②は各項目に付いた条件と注記、③は老計第10号の「サービス提供後の記録等」に対応します。
どこかで止まったら、そこが報告のタイミングです。①で見当たらなければ報告。②の確認が取れていなければ報告。①②を通っても自信がなければ、やはり報告する。止まることは失敗ではありません。
迷ったとき、確認の場は通知が指定している
「その都度、看護師に聞くのも気が引ける」。そう感じる場面もあるでしょう。
ただ通知は、確認の場をあらかじめ指定していました。サービス担当者会議の開催時等に、専門的な管理が必要な状態かどうかを確認することが考えられる、という書き方です。急に聞くのではなく、会議の議題として先に確認しておく道が用意されています。
2022年の通知が掲げた「介護職員がそれらの行為を安心して行えるよう」という目的も、ここに重なります。本人・家族・介護職員・看護職員・主治医が事前に合意しておくプロセスを整えることが、そのための手段として示されました。
**個人の度胸で線を引かない。**それが3本の通知に共通する設計です。清拭で見つけたものを記録に残し、会議の材料にする。そこまでが、手順の続きにあたります。
まとめ|清拭の手順に、観察が置かれている

老計第10号が例示する清拭の流れには、「上半身の皮膚等の観察」「下肢の皮膚等の観察」「身体状況の点検・確認」が組み込まれていました。清拭は体を拭く作業であると同時に、利用者の体をいちばん広く見る機会として手順が組まれています。
見つけたものにどこまで手を出せるかは、2005年・2022年・2025年の3本の通知が線を引いてきました。出発点は「医行為の範囲が不必要に拡大解釈されている」という是正で、20年かけて範囲は少しずつ広がっています。ただし条件と留保は必ず付いていて、褥瘡の処置は一貫して除かれたままです。そして3本すべてに、刑事上・民事上の責任は別途判断されると書かれていました。
次の一歩は、いくつかの選び方があります。直近の清拭の記録を1件開いて、見たままの事実が書かれているか、それとも見立てが書かれているかを確かめてみる。職場のマニュアルに、爪切りや軟膏の扱いがどう書かれているか読み返してみるのもいいでしょう。あるいは、次のサービス担当者会議で「この方の爪切りは私たちがやってよい状態ですか」と1つだけ確認してみる。
どれか1つで構いません。線を個人の度胸で引かずに済む仕組みは、通知の側にもう用意されています。
よくある質問
清拭とは何ですか?
入浴が難しい方の体を、蒸しタオルなどで拭いて清潔を保つ介助のことです。ただし国の通知では、単に体を拭く行為としては書かれていません。厚生省老人保健福祉局老人福祉計画課長「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」(老計第10号・平成12年3月17日)は、身体介護の「1-2 清拭・入浴、身体整容」に清拭を置き、全身清拭の一連の流れを「ヘルパー自身の身支度→物品準備→声かけ・説明→顔・首の清拭→上半身脱衣→上半身の皮膚等の観察→上肢の清拭→…→下肢脱衣→下肢の皮膚等の観察→…→陰部・臀部の清拭→下着着衣→身体状況の点検・確認→水分補給→…」と例示しています。拭く工程のあいだに「皮膚等の観察」が2回、締めくくりに「身体状況の点検・確認」が1回入っており、観察が手順の一部として組み込まれている点が特徴です。なお同通知は、この流れについて「あくまで例示であり、実際に利用者にサービスを提供する際には、当然、利用者個々人の身体状況や生活実態等に即した取扱いが求められる」とも述べています。
清拭は身体介護と生活援助のどちらですか?
身体介護です。老計第10号は訪問介護の行為を身体介護と生活援助に区分しており、清拭は身体介護の「1-2 清拭・入浴、身体整容」に置かれています。この区分には、1-2-1 清拭(全身清拭)、1-2-2 部分浴(手浴及び足浴/洗髪)、1-2-3 全身浴、1-2-4 洗面等、1-2-5 身体整容、1-2-6 更衣介助の6つが並びます。清拭は入浴の簡易版としてではなく、部分浴や全身浴と並ぶ独立した項目として扱われている点が特徴です。なお1-2-5の身体整容には「手足の爪きり、耳そうじ、髭の手入れ、髪の手入れ、簡単な化粧」が挙げられており、このうち爪切りと耳垢の除去は、別に医師法の解釈を示した通知でも条件つきで「原則として医行為ではない」と整理されています。同じ行為に、介護報酬の区分と医師法の解釈という2つの角度から線が引かれている形です。
清拭で皮膚の異常を見つけたらどうしますか?
見たままの事実を記録し、看護職員や医師に報告するのが基本です。厚生労働省医政局長通知(平成17年7月26日・医政発第0726005号)は、体温や血圧の測定などを「原則として医行為ではない」と整理する一方で、「測定された数値を基に投薬の要否など医学的な判断を行うことは医行為」であり、異常値が測定された場合には医師、歯科医師又は看護職員に報告すべきものだとしています。見ることと、見立てて対応を決めることは別という整理です。記録では「仙骨部に褥瘡あり」のような判断ではなく、「清拭時、仙骨部に約3cmの発赤あり。押しても白くならず。本人の痛みの訴えなし」のように、観察した事実をそのまま書いておくと、次に読む人の判断材料になります。あわせて、誰にいつ何を伝えたかも残しておくと、次の勤務者が動けます。
介護職が軟膏を塗ってもよいですか?
条件を満たす場合に限り、原則として医行為ではないと整理されました。平成17年7月26日の厚生労働省医政局長通知は、患者の状態が3条件(入院・入所して治療する必要がなく容態が安定していること/副作用の危険性や投薬量の調整等のため医師又は看護職員による連続的な容態の経過観察が必要である場合ではないこと/当該医薬品の使用の方法そのものについて専門的な配慮が必要な場合ではないこと)を満たすことを医師、歯科医師又は看護職員が確認し、本人又は家族に伝えている場合に、事前の具体的な依頼に基づく「皮膚への軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く。)」を挙げています。褥瘡の処置は括弧書きで除かれており、この除外は令和4年12月1日の通知(その2)でも同じ形で繰り返されました。清拭で褥瘡が疑われる部位を見つけても、介護職の判断で軟膏を塗る場面ではありません。また同通知は、専門的な管理が必要な場合には医行為とされる場合もあり得るとしており、確認の場としてサービス担当者会議の開催時等を挙げています。
陰部洗浄は介護職が行ってよいですか?
通常の陰部洗浄は身体介護として行われる行為で、老計第10号ではおむつ交換の流れに「陰部・臀部洗浄(皮膚の状態などの観察、パッティング、乾燥)」として、全身清拭の流れに「陰部・臀部の清拭」として位置づけられています。一方、膀胱留置カテーテルを挿入している方の陰部洗浄については、令和4年12月1日の厚生労働省医政局長通知(その2)が「専門的管理が必要無いことを医師又は看護職員が確認した場合のみ」原則として医行為ではないと整理しました。条件が「〜した場合のみ」という形になっている点が要です。カテーテルが入っている方の場合は、確認が取れているかを先に押さえてください。なお同通知は、こうした整理はあくまで医師法等の解釈に関するものであり、事故が起きた場合の刑事上・民事上の責任は別途判断されるとも述べています。
出典
- 厚生省老人保健福祉局老人福祉計画課長「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」(老計第10号・清拭/部分浴/身体整容の一連の流れ) (2000年(平成12年)3月17日・最終改正 2005年(平成17年)6月29日)
- 厚生労働省医政局長「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)」(医政発第0726005号・原則として医行為ではない行為) (2005年(平成17年)7月26日)
- 厚生労働省医政局長「同(その2)」(医政発1201第4号・膀胱留置カテーテル挿入患者の陰部洗浄ほか) (2022年(令和4年)12月1日)
- 厚生労働省医政局長「同(その3)」(医政発1226第12号・湿布の貼付、蓄尿バッグの接続ほか) (2025年(令和7年)12月26日)
- 厚生労働省「原則として医行為ではない行為について」(3通知の集約ページ) (2026年(令和8年)閲覧)
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