働き方
老健(介護老人保健施設)で働くとは|特養との違い・給料・夜勤の実際と向き不向き
内容確認: 2026年7月17日 ・ 次回確認期限: 2027年1月17日 ・ 編集部確認済み
求人票の「在宅復帰を支える施設です」「リハ職と連携して働けます」という言葉に少し心が動く。その一方で、現場の知り合いからは「老健は回転が速くて大変」「記録と会議が多い」とも聞く。特養の重介護で体がきつくなってきて、次は老健か、それとも別の種別か——夜勤明けの帰り道、求人サイトを眺めながらそんなふうに迷っている人は少なくないはずです。
最初にお伝えしたいことがあります。**老健が合うかどうかは、あなたの介護の腕や頑張りの問題ではなく、施設の「構造」との相性の問題です。**老健は制度上、在宅復帰を目的に据えた施設です。入退所の回転も、多職種との調整も、記録の量も、働く人の要領ではなく施設の設計で決まっています。いま「ついていけない」と感じている人も、「自分に務まるだろうか」と不安な人も、その感覚の正体はほとんどが構造の側にあります。
この記事では、厚生労働省の調査・資料をもとに、老健で働く実像を数字で整理します。特養との違い(医療・リハ・回転・看取り)、給料の相場、夜勤の体制を出典付きで確認したうえで、「老健が自分に合うか」を確かめる10項目のセルフチェックと、求人票・見学での確認ポイントをお渡しします。イメージや転職サイトの煽り文句ではなく、数字と実在の当事者の声で判断できるようになる——それがこの記事のゴールです。
まず結論:老健で働くかどうかは「回転・医療との距離・給料」の3点で見る

細かい話に入る前に、要点を3つに絞ってお伝えします。
**1つ目。老健は「在宅復帰」を目的とする施設で、忙しさの質は入退所の回転で決まります。**運営基準では、入所を続けるかどうかの検討を少なくとも3か月ごとに行うと定められ、調査対象施設の在宅復帰率の平均は約40%(令和5年度・速報値)。回転の速い「超強化型」の老健は全体の3割近くまで増えています。同じ老健でも、類型によって仕事のペースはまったく違います。
**2つ目。給料は介護保険3施設のなかで特養に次ぐ水準です。**月給・常勤で働く介護職員の平均給与額は352,900円(令和6年9月・処遇改善加算を取得する事業所・手当と一時金を含む額面)。特養との差は月9,000円ほどで、大きな差ではありません。ただしこれは全国平均で、地域・法人・夜勤回数による幅がかなりあります。
3つ目。夜勤の人員基準は「看護職員又は介護職員」であり、夜間に看護職員がいるかは施設によって違います。「老健だから夜も看護師がいて安心」と思い込むのは危険です。夜間の体制は、求人・見学で個別に確かめる必要があります。
この3点を、ここから一つずつ、数字の根拠と一緒に見ていきます。
老健という職場の基本|「在宅復帰」がすべての業務を決める

老健は、介護保険法第8条第28項で「心身の機能の維持回復を図り、居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者」に対し、看護・医学的管理の下における介護、機能訓練その他必要な医療と日常生活上の世話を行う施設と定義されています。運営基準の基本方針にも「居宅における生活への復帰を目指すものでなければならない」と明記されています(厚生労働省・社会保障審議会介護給付費分科会第231回資料2より)。
この「帰すための施設」という性格は、建前ではなく日々の業務に直結しています。運営基準の解釈通知では、入所を続けるかどうかの検討を「少なくとも三月ごと」に行うこととされており、3か月ごとの判定会議・入退所前後の指導・退所後の居宅訪問といった業務が、報酬の仕組みごと組み込まれています。特養が「暮らしの場」なら、老健は制度上「通過点」としてつくられているわけです。
人員の配置基準にも、この性格がはっきり表れています。
| 職種 | 老健の配置基準 |
|---|---|
| 医師 | 常勤1人以上(入所者100対1以上) |
| 看護・介護職員 | 入所者3対1以上(うち看護職員は総数の7分の2程度) |
| 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士 | 入所者100対1以上 |
| 支援相談員 | 1人以上(入所者100対1以上) |
| ケアマネジャー(介護支援専門員) | 1人以上(入所者100対1を標準) |
※出典:厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会(第231回・令和5年11月)資料2
実際の平均像も見ておきましょう。1施設あたりの平均配置人数は、医師1.07人、看護師5.97人・准看護師3.98人、介護職員27.38人(うち介護福祉士18.61人)、理学療法士2.42人・作業療法士1.56人・言語聴覚士0.37人、支援相談員2.21人(令和3年介護サービス施設・事業所調査/同資料より)。つまり老健の介護職は施設内の最大勢力でありながら、常に医師・看護職・リハ職・相談員の目と手が入る構造の中で働くことになります。
もう一つ、職場の空気を左右する数字があります。老健の開設主体は医療法人が75.5%(特養は社会福祉法人が95.7%)です(令和6年介護サービス施設・事業所調査の概況)。母体が医療機関系であることが多いため、申し送りや記録の書き方、リスク管理の考え方が医療寄りの文化になりやすい——これは実際に働く人の肌感覚とも一致するところでしょう。全国の施設数は4,214施設、1施設あたりの定員は平均87.0人です(同調査)。
判断基準としてはこうなります。「利用者の生活を支えたい」だけでなく、「家に帰すために支える」という目的設定に納得できるかどうか。ここが老健で働く満足度の土台になります。
特養との違い|医療・リハ・回転・看取りを数字で見る

「特養は生活の場、老健は在宅復帰の中間施設」という教科書的な整理は、介護職の働き方に翻訳すると「利用者との付き合いの長さ」と「多職種との距離」の違いになります。数字で並べてみます。
| 視点 | 老健 | 特養 |
|---|---|---|
| 施設の目的 | 在宅復帰・在宅療養支援の地域拠点 | 常時介護が必要な人の生活の場(入所は原則要介護3以上) |
| 入所期間 | 少なくとも3か月ごとに入所継続を検討 | 期限なし。看取りまで暮らす人も多い |
| 医療・リハ | 医師が常勤。リハ職を100対1以上で配置 | リハ職の配置義務はない |
| ベッドの利用率 | 88.2%(回転により空きが生じる) | 94.5% |
| 介護職員の平均給与額(月給・常勤) | 352,900円 | 361,860円 |
※利用率・給与の出典:厚生労働省「令和6年介護サービス施設・事業所調査の概況」「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」(給与は令和6年9月・処遇改善加算取得事業所)
働き方への影響を補足します。**特養では、数年単位で同じ利用者と関わり、その人の人生の最終盤までを支えます。**関係を深められる一方、身体介護の重さは基本的に増えていく方向です。**老健では、回復して家に帰る場面に立ち会える代わりに、関係を深めた利用者が数か月で退所していきます。**入所のたびに介助方法・注意点を覚え直し、退所のたびに情報をまとめて送り出す。この繰り返しが業務の背骨です。
看取りについても違いがあります。特養は看取りの場になることが多い一方、老健は「看取りがない施設」ではありません。老健にもターミナルケア加算が設けられており、医師・看護師・リハ職を含む多職種で看取りに対応する施設があります(社会保障審議会介護給付費分科会第231回資料2)。「老健なら看取りを避けられる」という理由だけで選ぶと、想定と違ったということになりかねません。
なお、大変さの単純な優劣はつけられません。回転の速さを「刺激があって飽きない」と感じる人もいれば「消耗する」と感じる人もいます。どちらの感覚も間違いではなく、後半のセルフチェックで確かめるのはまさにこの相性です。特養側の働き方を詳しく知りたい方は、特養で働くとは(仕事内容・夜勤・人員体制)もあわせてどうぞ。
老健の給料|介護保険3施設では特養に次ぐ水準

給料の話は、はっきり数字で見ておきましょう。厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査」によると、処遇改善加算を取得している事業所で月給・常勤で働く介護職員の平均給与額(令和6年9月)は次のとおりです。
| サービス種別 | 平均給与額(月給・常勤) | 前年同月からの増減 |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設) | 361,860円 | +14,890円 |
| 介護老人保健施設(老健) | 352,900円 | +14,390円 |
| 介護医療院 | 330,030円 | +15,710円 |
| グループホーム | 302,010円 | +11,820円 |
| 通所介護 | 294,440円 | +10,870円 |
| 全サービス平均 | 338,200円 | +13,960円 |
この数字を読むときの注意が3つあります。**第一に、これは「額面」であり手取りではありません。**平均給与額は基本給に手当と一時金(賞与等の6分の1)を足した月換算値です。手取りに直すとおおよそ75〜85%になります(詳しくは介護職の手取りと給料明細の見方へ)。**第二に、平均であって相場の保証ではありません。**地域・法人規模・経験年数・夜勤回数で大きく上下します。第三に、施設タイプ間の差より、同じタイプ内の施設差のほうが大きいことがよくあります。
実感ベースの分布も見ておきます。株式会社マイナビが運営する「マイナビ介護職」の『介護職白書 2024年度版』(調査時期:2024年11月7日〜12月3日・介護職976人が回答)では、介護職の年収は「300〜324万円」が最多の12.1%で、200万円台と300万円台がそれぞれ約3割を占め、大きく分散していました。転職サービスの登録会員への調査のため、転職を意識する層寄りのサンプルではありますが、「平均いくら」より「ばらつきが大きい」ことこそが実態だと分かります。
判断基準はこうです。**「老健だから給料が高い・安い」で決めず、応募先ごとに基本給・固定手当・夜勤手当・処遇改善分の載り方を分解して比べる。**処遇改善のお金は職場ごとに配分方法が違うため、面接で「処遇改善分は毎月ですか、一時金ですか」と確認して構いません(仕組みは処遇改善加算とはで解説しています)。給料の上げ方の全体像は介護職の給料の実際にまとめています。
老健の夜勤|「夜も看護師がいる」とは限らない

老健の夜勤について、まず基準の事実から押さえます。厚生労働省の告示(平成12年厚生省告示第29号)では、老健の夜勤を行う職員は「看護職員又は介護職員」とされ、施設全体で2人以上(短期入所の利用者を含めた入所者が40人以下で、常時の緊急連絡体制があれば1人以上)と定められています。ユニット型では、夜間・深夜は2ユニットごとに1人以上の介護職員又は看護職員の配置です。
ここで大事なのは、基準上、夜間に看護職員を必ず置く義務まではないということです。日中は医師が常勤し看護職員も手厚い老健ですが、夜勤帯は「看護職員が常駐する施設」と「介護職員のみで回し、看護職員はオンコールの施設」に分かれます。「老健=夜も医療職がいて安心」という思い込みで入職すると、夜間の判断の重さが想定と違った、ということが起こります。
参考までに、特養の夜勤基準(同告示)は入所者26〜60人で2人以上、61〜80人で3人以上、81〜100人で4人以上と規模で刻まれています。基準の設計そのものが違うため、「何人夜勤か」は施設名ではなく求人ごとに確かめるのが正解です。
夜勤の実感データも見ておきましょう。前出の『介護職白書 2024年度版』(株式会社マイナビ/マイナビ介護職・調査時期:2024年11月7日〜12月3日)では、2交替夜勤の手当は「5,000〜5,999円」が最多の21.8%で、5,000円未満が19.8%、10,000円以上も21.5%と施設差が大きく出ています。また、夜勤中の不安の1位は「トラブルが起きたときの対応」(36.2%)でした。介護職全体の数字であり老健だけのものではありませんが、夜勤の負担感の中心が「一人で判断を抱えること」にあるのは、老健でも同じです。
だからこそ、老健の夜勤で確認すべきことは次の4点に絞れます。
- 夜勤帯の職員数と職種の内訳(看護職員は常駐かオンコールか)
- 自分が担当するフロア・人数の範囲と、応援を呼ぶ順番
- 仮眠・休憩の場所と、その間の交代要員
- 夜勤手当の額と月の想定回数(求人の月給例に含まれているか)
夜勤全般の仕組み(深夜割増・2交替の流れ・夜勤なしの働き方)は介護の夜勤の実際で詳しく解説しています。
老健ならではのきつさ4つと、それぞれの軽くし方

検索すると「老健はきつい」という記事が並びますが、大事なのは「何が・なぜきついのか」を構造で理解することです。老健特有の負担は、次の4つに整理できます。
**1つ目は、入退所の回転です。**在宅復帰率やベッド回転率(10%以上で上位類型の指標)は施設の評価・報酬に直結しており、回転の速い超強化型は令和5年2月時点で28.6%まで増えています(社会保障審議会介護給付費分科会資料)。入所が来れば情報収集と居室準備、退所が来れば書類と申し送り。利用者を覚えては送り出す、を数か月周期で繰り返すこと自体が業務負荷です。軽くするには、応募前に類型(超強化型〜その他型)と月の入退所件数を聞くこと。同じ老健でも基本型なら回転はずっと緩やかです。
**2つ目は、記録・会議と多職種の板挟みです。**リハ職の方針、看護の管理、家族の希望、現場の実情——間に立つのは介護職とケアマネです。老健で施設ケアマネを11年続けてきた方は、自身のnote記事で「気づけば、記録に追われていることがあります」「自分はこの仕事に向いていないのではないか。そう感じたことも、正直何度もありました」とつづっています(当事者の声・2026年4月)。職種は違っても、多職種の間で調整し記録に追われる感覚は、老健の介護職の多くが共有するものでしょう。見学では、記録の時間が勤務内に確保されているか、記録端末の数はフロアに足りているかを見てください。
**3つ目は、医療との距離の近さゆえの緊張感です。**観察と報告の質を求められ、申し送りでは医療用語も飛び交います。ただしこれは裏返せば、判断を一人で抱えなくていい構造でもあります。「これくらいで報告していいのか」と迷う新人期を、報告先がある環境で過ごせるのは老健の利点です。確認すべきは、報告をためらったときに「それくらいで呼ばないで」と返す文化か、「迷ったら呼んで」と言える文化か。面接での質問への反応にも表れます。
4つ目は、身体介助の重さと事故リスクです。「在宅復帰を目指す施設だから軽度の人が多い」は誤解で、調査対象の老健では要介護4・5の入所者割合が平均43.7%を占めます(令和5年度調査速報値・同分科会資料)。リハビリ目的の見守り歩行や立ち上がり練習の場面は、転倒を支える場面でもあります。老健勤務の経験がある方がX(旧Twitter)に投稿しTogetterまとめ(2018年3月)で広く読まれた事例では、移乗の際に転倒しかけた大柄な男性入所者を支えようとした同僚が肋骨を骨折し、現場を離れざるをえなくなったといいます(当事者の声・真偽未検証の個別事例です)。ここから持ち帰るべきは恐怖ではなく確認項目です。二人介助の基準が明文化されているか、リフトやスライディングボードが実際に使われているかを見学で確かめてください。体の守り方は介護職の腰痛を防ぐにまとめています。
最後に一つ。ここまで「きつさ」を並べましたが、当事者の実感では、きつさとやりがいは別人の感想ではなく同じ人の中に同居します。歩けなかった人が杖で歩いて退所していく日は、記録と会議に追われた3か月の答え合わせでもあります。その瞬間に「報われた」と感じるタイプか、「また覚え直しか」と疲れが勝つタイプか——次の章で確かめましょう。
老健が自分に合うか|10項目セルフチェック

ここまでの構造を、自分との相性に落とし込むチェックリストです。当てはまるものを数えてください。
- 利用者が回復していく過程を見ることに、強いやりがいを感じる
- 数か月で利用者が入れ替わる環境を「刺激」と受け取れる
- リハ職が示した介助方法を生活場面で再現するのが苦にならない
- 気づいたことを言葉にして看護職員・医師へ報告するのが苦にならない
- 記録や会議も「ケアの一部」と割り切れる
- 新しい利用者の介助方法・注意点を短期間で覚えるのが得意なほうだ
- 看取りを支えることより「家に帰す」支援に、より関心がある
- 医療用語やリハビリの知識をこれから学ぶことに前向きだ
- 体力・腰に大きな不安がない(または対策を続けられる)
- 一人で判断するより、多職種に相談できる環境で働きたい
読み方の目安です。7個以上当てはまるなら、老健はあなたの性質に合う可能性が高い職場です。次の章の確認ポイントを持って、類型の違う複数の老健を比べてみてください。4〜6個なら、老健そのものより「どの老健か」で満足度が変わるタイプです。類型・夜勤体制・教育で個別に判断しましょう。3個以下なら、無理に老健に寄せる必要はありません。長い関わりを重視するなら特養やグループホーム、生活支援中心ならサ高住など、構造の違う職場のほうが力を発揮できる可能性があります(施設タイプ別の働き方比較が地図になります)。
念のため繰り返しますが、チェックが少なくても「介護に向いていない」わけではありません。測っているのはあなたの能力ではなく、老健という構造との相性です。
求人票・見学ではここを確認する

セルフチェックを通過したら、次は職場の側を見極める番です。老健向けの確認ポイントを4グループに絞りました。
回転の実態
- 施設の類型(超強化型・在宅強化型・加算型・基本型・その他型)
- 月あたりのおおよその入所・退所件数
- 入退所が重なった日の応援体制と、通常業務の調整方法
夜勤の体制
- 夜勤帯の人数・職種(看護職員は常駐かオンコールか)
- 担当範囲、応援を呼ぶ順番、仮眠・休憩の交代
- 夜勤手当の額と、月給例に含まれる夜勤回数
お金の内訳
- 基本給と手当の内訳(月給の合計額だけで比べない)
- 処遇改善分の支給方法(毎月か一時金か、どの項目に載るか)
- 昇給・賞与の実績
教育と情報共有
- 入職後の研修・同行期間と、夜勤に一人で入るまでの流れ
- 介助方法の変更を休みだった職員へ伝える仕組み
- 記録の時間が勤務時間内に確保されているか
見学前の下調べには、厚生労働省の介護サービス情報公表システムが使えます。老健ごとに在宅復帰の状況や従業者数などの公表項目を確認できるので、「入退所はどのくらいありますか」「夜間の看護体制はどうなっていますか」と、見学で聞く質問を先につくってから行くのがおすすめです。数字を職場の優劣のランキングにするのではなく、質問の材料として使うのがコツです。
次の一歩は、この3つから選ぶ

最後に、この記事を閉じたあとの動き方を、状況別に3つ用意しました。どれか一つを選ぶ必要はなく、並行しても構いません。
**いまの職場(老健を含む)で消耗している人は、まず「きつさの正体」を切り分けてください。**回転がきついのか、夜勤体制なのか、人間関係なのかで、打ち手はまったく違います。切り分けの手順は介護の仕事がきつい・つらいの整理法にまとめています。老健の構造が合わないだけなのに「自分が介護に向いていない」と結論づけるのは、いちばんもったいない間違いです。
**老健に興味が湧いた人は、類型の違う複数の老健を見比べてください。**超強化型と基本型では、同じ「老健」の求人でも日々のペースが別物です。前の章の確認ポイントを同じ質問リストとして使い回すと、施設ごとの違いがはっきり見えてきます。
**構造ごと変えたくなった人は、他の施設種別も視野に入れてください。**実際、特養と老健の重介護を経験したうえでサ高住に移った介護職の方は、note記事(2026年3月)で「これ私がやらなきゃいけないの?っていう業務の曖昧さが少ない気がする」「体力的にも、精神的にも、今のところ一番続けやすい職場だと正直思う」と書いています(当事者の声・個人の体験です)。同じ人でも、職場の構造が変われば働きやすさの実感は変わります。医療との距離をさらに縮めたいなら介護医療院、種別全体を見渡すなら施設タイプ別の働き方が参考になります。
老健は、回復と退所を繰り返す構造の上に成り立つ職場です。その構造を面白いと感じる人にとっては、リハ職や看護職から学びながら「帰る」を支えられる、得がたい環境になります。消耗すると感じるなら、それはあなたの適性の欠如ではなく、別の構造を選んでいいというサインです。数字と確認ポイントを手に、あなたのペースで確かめていってください。
よくある質問
老健と特養では、介護職にとってどちらがきついですか?
きつさの質が違うため、一概にどちらとは言えません。老健は在宅復帰を目的とするため入退所の回転が速く、記録・会議・多職種との調整の負担が大きくなりやすい職場です。特養は生活の場として、重度の身体介護を長く続ける体力面の負担が大きくなりやすい職場です。給与は、厚生労働省の令和6年度調査(月給・常勤の介護職員の平均給与額・令和6年9月)で特養361,860円・老健352,900円と大きな差はありません。「回転の速さ」と「重介護の継続」のどちらを自分が消耗と感じるかで判断するのが現実的です。
老健で働く介護職員の給料はどのくらいですか?
厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査」によると、介護老人保健施設で月給・常勤で働く介護職員の平均給与額は352,900円です(令和6年9月・介護職員等処遇改善加算を取得する事業所・基本給+手当+一時金の月換算)。額面ベースの平均で手取りではなく、地域・法人・経験年数・夜勤回数によって大きく変わります。求人を比べるときは、月給の合計ではなく基本給・固定手当・夜勤手当の内訳で確認してください。
老健の夜勤には看護師がいますか?
施設によって違います。老健の夜勤の人員基準は「看護職員又は介護職員」とされており、夜間に看護職員を必ず配置する義務まではありません。夜間も看護職員が常駐する老健もあれば、介護職員のみで夜勤を回し、看護職員はオンコール(電話で呼び出す体制)という老健もあります。応募前に、夜勤の職員数・職種の内訳・看護職員への連絡方法を必ず確認してください。
医療の知識がなくても老健で働けますか?
働けます。老健の介護職に求められるのは医療行為ではなく、日常生活の支援と、利用者の変化に気づいて看護職員・医師へつなぐ観察・報告です。医療用語やリハビリの視点は入職後に学んでいけますが、教え方の丁寧さは施設差が大きい部分です。面接で、研修や同行勤務の期間、分からないことを聞ける相手が決まっているかを確認しておくと安心です。
老健の利用者は本当に3か月で退所するのですか?
全員が3か月で退所するわけではありません。老健の運営基準では、入所を続けるかどうかの検討を少なくとも3か月ごとに行うと定められていますが、実際の入所期間は心身の状態や家庭の事情によって人それぞれです。厚生労働省の調査(令和5年度・速報値)では在宅復帰率の平均は約40%で、施設の類型(超強化型〜その他型)によって入退所の回転の速さは大きく異なります。
未経験から介護の仕事を始める場合、老健は向いていますか?
選択肢になります。老健は医師が常勤し、看護職員やリハビリ専門職が日中に配置されているため、判断を介護職一人で抱え込みにくい構造の職場です。一方で、入退所が多く、利用者ごとの介助方法を短い期間で覚え直す場面が多い職場でもあります。未経験で選ぶ場合は、教育体制(研修・同行の期間、夜勤に一人で入るまでの流れ)を面接で確認してから決めてください。
出典
- 厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」 (2025年)
- 厚生労働省「令和6(2024)年介護サービス施設・事業所調査の概況」 (2025年)
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会(第231回)資料2「介護老人保健施設(改定の方向性)」 (2023年)
- 厚生労働省「厚生労働大臣が定める夜勤を行う職員の勤務条件に関する基準」(平成12年厚生省告示第29号) (2026年7月確認)
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「介護老人保健施設(老健)」 (2026年7月確認)
- 株式会社マイナビ/マイナビ介護職「介護職白書 2024年度版」(調査時期:2024年11月7日〜12月3日) (2025年)
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、正確性・最新性を保証するものではありません。 制度や施設の状況は変わることがあります。実際のご判断の前には、各施設・公式情報や公的機関でご確認ください。
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